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導入事例

  アイコン 導入事例 流通経済大学 http://www.rku.ac.jp/

 いつの間にかITが身につく理想的な実学教育 前へ|次へ|トップへ次へトップへ
伊藤征男氏「うちの学生が卒業して企業に入ると当然、その企業のネットワークシステムなり、グループウエアなりを使うことになりますよね。その時に、『ああ何だ。これは学生時代にゼミとかで使ってたシステムと同じものじゃないか!』と、ごく自然に気がついて欲しいんですよ。自分では何も意識しなくても、実社会で使われているITが自然に身についている。これがまさに理想的な実学教育ではないでしょうか」
こう話すのは、流通経済大学の総合情報センターで、サイボウズ導入のための企画とシステム運営を推進してきた伊藤征男氏(情報システム課長/写真)である。

2001年4月から、約6000人の学生と約130人の専任教員の間の情報共有ツールとして本格的に導入されたサイボウズは、流通経済大学の学内ではRing(Rku Interchange for Groups)という名で総称されるキャンパス情報システムのメニューの中にある。Ringのトップページは「個人用e-desk」と「ゼミ用e-desk」に大きく分かれているが、そのうち「ゼミ用e-desk」からログインできるサービスが、実はサイボウズなのだ。

流通経済大学では、昭和40年の建学以来、1年から4年まですべての学生がゼミに参加しているから、「ゼミ用e-desk」のサービスもすべての学生に提供されている。学生たちは、Ringの中の便利なサービスの1つとして「回覧板」や「文書管理」「バーチャル・ゼミ」(サイボウズの「電子会議室」をカスタマイズしたもの)といった機能を、ごく自然に使いこなしていく。ちなみに、「個人用e-desk」には、「E-Mail」「Internet」「マイドキュメント」「授業履修」「呼出案内」「教員HP」「携帯電話」「学術情報」「講座案内」といったサービスのボタンが並んでいる。電子メールやインターネットを駆使した連絡と情報収集が、クリック中心に簡単に実践できるシステムだ。ひと昔前の大学から見ると、うらやましくなるほど便利なパソコン環境が整備されているのである。
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 各方面からの要望を総合してグループウエア導入を発案 前へ|次へ|トップへ次へトップへ前へ
篠敬一郎氏もちろん、Ringのサービスがスタートする以前から、学内のゼミや授業の一部では、パソコンを活用する試みも進んでいた。伊藤課長と共に、Ringの企画導入を担ってきた情報システム課スタッフの1人、篠敬一郎氏はこう説明する。
「ホームページを使ったゼミや授業の展開などは、チラホラ始まってはいたんです。でも、それは一部のコンピュータに詳しい先生と、コンピュータを使える学生のためだけのものでした。コンピュータ教室の機器の更新が大きなきっかけになって、そういう一部の教員、学生だけではなくて、すべての教員、学生が利用できるパソコン環境ができないものかという要望が強くなってきました」
例えば、学生を指導する教員の側からは、授業で使う資料は事前にファイルで配布したいという要望が強かった。資料を作って、それを人数分刷り出したり、コピーしたりする手間が軽減されるし、事前に資料を配布しておけば、ゼミや授業の学習効果も高まる。また、ゼミの合宿のスケジュール作りなどでは、個々の学生のスケジュールを参照したり、連絡事項を間違いなく全員に告知したりするパソコン環境があると便利だ。さらに、社会人や留学生のための遠隔授業を将来的に実現できないだろうかという要望もあった。

一方、大学の教務・学生生活指導の部署からは、学生の自己学習やキャンパスライフ全体をよりきめ細かくサポートしたいという声があがっていた。就職関連の部署からは、学生にインターネット情報を十二分に活用させたいという要望が何より強かった。自分の進みたい業種、企業の採用情報をインターネットで常に検索し、メールを使って資料請求したり、就職希望の登録をしたり、説明会などに応募したりできなければ、希望の就職もおぼつかない時代なのである。さらに、大学の受験生(高校生)からは、「良き先生・友人・先輩に出会いたい」「社会に出て役立つ勉強をしたい」という要望もあがっていた。

こうした多種多彩な要望に十分に応えるには、どうしたらいいのか。どんなシステムを作ればいいのか。もちろん、一般のメールソフトやブラウザーを使ったシステムを作ればそれなりのことはできるが、もっと斬新で、できれば全国の受験生にも強くアピールできるようなシステムやアプリケーションはないだろうか。そう頭を悩ましていた時に、コロンブスの卵的に思いついたのは、教育目的のグループウエア導入だった。
「実は、総合情報センターができた3年ほど前から、教職員の業務用にグループウエアを導入する計画があって、さまざまなグループウエアを検討していたんです。でもよくよく考えてみると、グループウエアは仕事以外の目的にも使えるんですね。先生と学生との間の情報共有のためのツールとして、ゼミ単位で導入したら、面白いことができるんじゃないか? 新しい授業展開ができるんじゃないか? そこに目をつけたのが、グループウエア導入の始まりだったんです」(伊藤課長)
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 グループウエアの双方向性がゼミの要望にぴったりフィット 前へ|次へ|トップへ次へトップへ前へ
グループウエアというビジネスツールを、仕事の業務効率をあげるためではなく、教育効果をあげるために使ってみよう。情報社会で学生が自ら学べるように、学習者中心型の環境を目指してゼミ内のグループ学習をサポートするために使ってみよう。こうしたアイデアが浮上したのは2000年の9月頃だった。

早速、総合情報センターから大学側に企画を出し、その企画が通るとすぐに同センターが中心になって、開発の作業に取りかかった。グループウエアの検討、テスト等は、各学部のコンピュータに詳しい教員12人前後で構成されるシステム専門部会に諮り、実際にグループウエアを使ってもらって、その使い勝手などを細かく詰めていった。当初の段階では、いくつかのグループウエアが候補にのぼったが、最終的に採用が決まったのがサイボウズOffice4だったという。

「全学生が使うわけですから、操作が簡単で、コンピュータの知識がさほどなくても使えるというのが大前提ですね。でも、最大の決め手になったのは、やはりコストの問題です。6000人が使うわけですから、それまで教職員の業務用に検討していたアプリケーションでは、予算的にまったく無理でした。その点、サイボウズはユーザー無制限版が数十万円の買いきりですから、非常に低コストで導入できます」(篠氏)

こうした検討、開発には約半年の時間がかかった。サイボウズの中でも、どのアプリケーションをどのように使えば良いのかが、主要な検討課題だった。2001年1〜2月には最終テストが行われ、ゴーが出た。これを受けて、2月末から3月にかけては、教職員向けに「Ring操作説明会」が開かれた。そして、4月からいよいよ本格導入を開始したのである。

サイボウズ Office 4 の中で、Ringの「ゼミ用e-desk」のトップページに残された主なアプリケーションは「スケジュール」「共有アドレス帳」「Todoリスト」「文書管理」「回覧板」「電子会議室」(流通経済大学ではこれを「バーチャル・ゼミ」と名付けている)、「便利帳」(「ビジネス情報」)だった。この中で、最も頻繁に使われているアプリケーションは、「文書管理」「回覧板」「バーチャル・ゼミ」である。
「最初にシステム専門部会にサイボウズの使い方を提案した時には、多くの教員が『こんなこともできるのか』と驚いていましたね。例えば『文書管理』では、単純に文書を保存するだけではなくて、教材のやり取りをしたり、課題のテーマを与えてレポートを提出させたりすることができます。また、『回覧板』にはチェック機能がありますから、必要な連絡事項が全員に伝わったかどうかを確実にチェックできる。『電子会議室』では、時間と場所に拘束されずに、あるテーマに関する質疑応答やディスカッションが可能になる。それまで少しずつ活用が進んでいたホームページだと、ホームページで全員にレポートのテーマと締切などを告知するといった一方向の利用でしかなかった。それ以上の機能が、1つのアプリケーションの中で、しかも双方向で実現するということに皆さん、驚いたようです」(篠氏)
伊藤課長も「ゼミの授業というのは、サイボウズの機能に非常によくフィットしていたんですね」と言う。
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 レポートとその添削の内容を共有し、グループ学習をレベルアップ 前へ|次へ|トップへ次へトップへ前へ
4月からRing内の「ゼミ用e‐desk」という名でサイボウズが導入されると、「文書管理」は、レポートや教材、さらに学生の発表資料等のやり取りのために、多くのゼミで活用されるようになった。教員は、課題レポートのテーマと簡単な解説を付けたホルダーを作る。それを見た学生は、そのホルダーに課題レポートを保存していけばいい。学生側の発表のためのレジュメ資料も、事前に「文書管理」に保存しておいて、全員が好きな時にダウンロードすればいいのだ。こうした活用法は、レポート提出などの作業を効率化するばかりでなく、ゼミのグループ学習効果を高めることにもつながっている。従来のように紙でレポートを提出する形だと、レポートの提出と教員からの添削は、その学生と教員の間だけで完結していた。「ゼミ用e‐desk」では、学生が相互に、すべてのゼミ生のレポートの内容や教員からの添削を自由に参照することができる。

「あのレポートはこういう添削を受けたという結果を、お互いに見せあうことができるわけですね。過去のレポートはすべて保存されていますから、一種のナレッジマネジメントのような形で、レポートの内容をレベルアップしていくことができます。現在は参照できるのは1つのゼミの中だけですが、活用に熱心な先生ほど、複数のゼミにまたがって参照できるようにしたいとおっしゃっています。近接領域のゼミのレポートをお互いに参照できるようになれば、さらに幅広いナレッジが共有できますし、ゼミ同士で刺激しあう効果もでてくると思います。最近注目の学習専用のE−ラーニング・システムでも珍しいグループウエアならではの学習環境だと思います。」(篠氏)

「文書管理」の活用法が成熟してくれば、年度の始めに、学生が新しい年度のゼミを選ぶ時にも有用なツールとして活用できそうだ。該当のゼミを希望する学生が、許可を得て過去の課題レポートの内容を参照できるようになれば、自分の希望にぴったりのゼミがどこなのかを、より的確に選べるようになるだろう。

ゼミ内の連絡事項の伝達のために、頻繁に使われているのが「回覧板」である。
ゼミ生各人が連絡内容を見たかどうかを、確実にチェックできるところが重宝されている。ゼミの出席率が低い学生がいたりすると、「彼はどこで、何をしてるんだ!誰か見かけたら、私(教員)に知らせて下さい!」という熱血の回覧が回ったりもする。指導教員の人柄と熱意は、こうしたところからも学生に伝わっていくし、教務の要望だった日々の学生生活のフォローという意味でも、「回覧板」は機能しているのである。

また、実際に使ってみると、たとえ「文書管理」を使わなくても、「回覧板」だけで「文書管理」の機能も代用できるという意見も出てきた。「回覧板」をうまく工夫して使えば、質疑応答、教材の配布、課題の提出といった授業に最低限必要な要素はまかなえる。使い勝手もシンプルになるし、授業をサポートするツールとしてなら「回覧板」オンリーでも実は十分ではないかという意見である。
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 アメリカ研修中の教員も「バーチャル・ゼミ」に遠隔参加 前へ|次へ|トップへ次へトップへ前へ
熱心に活用しているのはまだ少数のようだが、「バーチャル・ゼミ」も面白い使い方が可能だ。
例えば、経済学部のあるゼミでは、担当教員が、約1年間、アメリカにある大学の大学院に留学中である。3年生でそのゼミを取り、引き続き4年生でも同じゼミを取ることになっている学生には、ちょっと気の毒な事態である。日常のゼミそのものは、同学部の別の先生が担当してくれることになったが、3年次からの指導の継続性はやはり薄れてしまう。そこで、ゼミでは「バーチャル・ゼミ」をフルに活用して、留学中の先生にも、アメリカから参加してもらうことにしたのである。

「バーチャル・ゼミ」は「電子会議室」を応用したアプリケーションで、まずは教員が1つのテーマを作成する。例えば「日本の少子化の現状について」というテーマが出されると、それに対して、ゼミ生が自由に意見を書き込んでいく。議論が進めば、特定の発言者に向けた意見を書き込むことで、細かい各論に関する議論を深めていくこともできる。こうしたやり取りが、テーマごとに一覧表示されて、誰でもいつでも参照できるので、学生は自分の好きな時に自分の意見を書き込めばいい。こうした議論の途中で、アメリカにいる先生からの書き込みが入るために、学生の学習意欲も自然に高まる。例えば「こちら、アメリカでは……」という書きだしで、少子化に関するアメリカ現地の実感的なレポートが入ってくるのだ。まだまだトライアルの段階とはいえ、遠隔授業の可能性を開く第一歩になりそうな使い方である。

篠氏「バーチャル・ゼミ」は、学生の能力を多角的に評価するという意味でも、利用価値が高いという。
「実際に対面して、ディスカッションで自分の意見を言うのは苦手というタイプがいるじゃないですか。そういう学生でも、1人でじっくり考えて、文書の形で自分の意見を書き込むと、的確で個性的な意見が出てくるというケースがけっこう多いんです。それをどういう形で評価するかは教員に任されていますが、いろんな学生のいろんな面を評価する選択肢が広がったのは確かですね」(篠氏)

こうした意義を考えて、「バーチャル・ゼミ」を授業中に使っているゼミもある。学生が自分の意見を文章にまとめて公表することで、対面形式のディスカッションでは見られなかったような多彩な意見が出てくるし、議論もより深まる傾向があるという。従来は、全員のディスカッションといっても、対面での発言が得意な少数の学生に発言が集中してしまい、それが授業のマンネリ化を招くという面もあった。「バーチャル・ゼミ」は、授業の活性化を促すスパイスになって、マンネリ化を防ぐ効果も大きいのである。
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 大学の独自性PRの面でも大きなインパクトが 前へ|次へ|トップへトップへ前へ
2001年7月には、大学の前期授業がほぼ終わった時点で、Ring利用に関する教員の間での意見交換会が開かれた。Ringは全学体制で取り組んでいる、FDP(Faculty Development Program)の一環でもあり、全国の大学でも類例のない試みだけに、多少は戸惑いの声も聞かれたが、おおむねはより積極的な活用のためには何が必要かという前向きな提案の声だった。ここで主な意見を紹介すると――。

「1年生の使用頻度が高いが、これは入学と同時にRing(サイボウズ)が使用できる環境にあり、それを使うことが、授業のスタイルやキャンパスライフのスタイルとして自然に受け止められている結果だと思う。反対に、2年生以上は『新たなスタイル』を習慣化『させねばならない』という点で、難しさがある」
「教員にとっても初めてのことであり、もっともっと具体的な利用の仕方や教育的効果について、ノウハウを共有し合う必要がある」
「これまでコンピュータを使わなかった教員、情報関連授業を担当されていない教員が、Ringをきっかけにコンピュータに触り始めたのは確か。ノウハウ・バンクのようなものがきちんと整備されていると、もっと関心が高まる」
「ゼミだけでなく、一般の授業でも使いたいという声もある」
「複数ゼミを担当する教員にとっては、例えばスケジュールなどがコピーできる機能があると便利。ログインログアウトが煩わしいと感じる時もある」
「卒業生のグループなどがあると、大学としてのコミュニティエリアがグッと広がる感じがする」
「学年を超えて使用できる環境があれば、先輩・後輩の間での教育的効果も期待できる」

わずか3カ月の利用による感想だが、今後の可能性に関しては、手応え十分というところだろうか。こうした現場からの要望を踏まえて、総合情報センターでは、Ringの具体的な利用法をできるだけ数多く収集、整理して、いつでも誰でも利用できる簡便なデータベースを作っていく方針だ。さらに、同センターでは、受験生(高校生)対策の面でも大きな手応えを感じている。

伊藤課長「新しいパソコンを入れてネットワークを組むのは、いまや全国どこの大学でもやっている当たり前のことです。サイボウズを活用したRingの導入は、そうしたパソコンのハード環境を超えた目玉的なインパクトがありましたね。受験希望の高校生を集めて何度か説明会をやったんですが、そこでRingに触ってもらうと、設定した時間を過ぎても高校生が帰ってくれないんですよ。『回覧板』などを使うのが面白くて、もうキャーキャー言っているんですね(笑)。少子化の時代を迎えて、大学の経営も非常に厳しい環境になってきています。より多くの学生に関心を抱いてもらうには、何より大学の独自性をPRしていかなければなりませんが、そうしたPRの面でも、今回のサイボウズ導入は大きな意義があったと思っています」(伊藤課長)
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