ワークスタイル17
宗盛電気サービス株式会社

一人あたりの残業マイナス5時間/月で採用難も克服!秘訣は教育投資と情報共有

「残業を減らしたい」と思っていても、何から手をつければ良いのか分からない。「働くのが大変」な環境だからなのか、人を採用しても定着しない。そんな問題に多くの中小企業が悩んでいます。

一人あたりの月間平均残業時間を5時間削減できたという宗盛電気サービス株式会社。

なぜ残業時間が減ったのに仕事がきちんと回るのか?どうやって労働時間を減らすことができたのか?代表の宗盛文幸さんにお話を伺いました。

採用できない・人が定着しない…「社員が魅力を感じる職場」を目指す旅が始まった

宗盛電気サービス株式会社 代表取締役 宗盛文幸氏。電気関連の技術が会社の強み。創業は1978年、2017年度の社員数は34名。社員の平均年齢は44歳。20~60代の従業員が働いている。

宗盛電気サービスでは、一人あたりの月間平均残業時間を5時間減らした実績をお持ちです。この働き方改革に取り組んだきっかけを教えてください。

きっかけは、「採用できない・人が定着しない」という課題を解決しようとしたことでした。

2007年ごろ、弊社は「技術者の確保と定着」に問題を抱えていました。技術は人につくものです。我々は技術を売りにしている会社ですので、せっかく人を育てても辞めてしまうのは痛手になります。

しかし、当時は辞めてしまう人も多く見られました。社員が辞める理由は介護などを含めて様々でしたが、とはいえ、会社が魅力的であれば、働きやすければ、もっと残ってくれるはずです。

また、当時は技術資格保有者が少なく、技術がある人に仕事が偏っていました。そのため、残業時間も個人によって偏りがありました。

ちょうどワークライフバランスという言葉が出始めたころだったので、これを機に社員の一人ひとりの幸せ、その家族の幸せを大事にすることを基本にした組織づくりをしようと決意しました。

「社員が魅力を感じる職場づくり」のためにとった行動は何でしたか?

選抜した10名の社員と、「会社の将来をどうするべきか」という議論を行いました。半年がかりで議論した結果、「社員の技術力強化」をトコトン行なうことに決めました。

我々は技術の会社です。「一人ひとりが高い技術を持って仕事をしていく」ことは、私たちにとってのビジネスチャンスにつながります。また、誰か1人に負担がかかりすぎなくなるので、「労働時間のバラツキも改善できる」と考えました。

なるほど。

技術を磨くための具体策として始めたのが、「社員のスキルアップを応援するために、技術や資格の取得費用を会社が全額負担すること」でした。

「一人ひとりが重要な仕事をできるようにしよう。そうすれば労働時間の偏りは無くなる。」そんな思いで決めた研修費用の全額負担でした。

スキルアップが労働時間の偏りを是正し、社員満足度を上げた

木村氏

研修費用を会社が全額負担するというのは手厚いですね!社員のみなさんはどう感じているのでしょうか?

お客様からいただく仕事で公的な資格が必要なものは多いです。資格を持っていたほうが活躍の場が広がることを社員は実感しているため、積極的に制度は利用されています。

電気工事関係の業界では、資格を持っていれば採用される場合が多く、何年も働いて資格を1つ取得できれば万々歳の世界です。

そんな中で資格取得や研修に力を入れており、研修中も給料を得られる会社はめずらしいので「ありがたい」という声があります。

会社負担となる資格や研修に基準はありますか?

業務に直接関係のある資格や講習の他に、会社が定める方針に沿ったものは会社負担で受講できます。

例えば当社は、品質の基本方針として「コミュニケーション力を磨き、組織や個々人の魅力をあげることで稼いでいこう」としているので、コミュニケーションに関わる研修なども会社が全額負担します。

技術以外の研修でも会社の方針に沿っていれば全額負担なのですね!このような支援制度は会社にどのような影響を与えましたか?

技術力がアップし、重要な仕事ができる社員が増えた結果、人員の効果的な配置ができるようになりました。残業時間の偏りが改善され、これまでは月に一人あたり平均16時間の残業があったのが、11時間にまで改善されました。

すごいですね!

属人化を劇的に解消できる「社内コミュニケーションのIT化」

「サイボウズ Office」で社内コミュニケーションを効率化していると、木村氏

労働時間が減っているのは技術の偏りがなくなったからだとお伺いしましたが、ほかに御社が業務をうまく回せている秘訣はあるのでしょうか?

情報共有とコミュニケーションですね。

具体的には、その人の状況や明日の予定、1ヶ月後までの予定をみんなが知り合っておけばいいわけです。当社ではこのためにグループウェアのサイボウズ Officeを使い、個人のスケジュールを共有しています。

社員のスケジュールが見える化されていれば、仕事の偏りがあってもすぐに気づいて、人員の最適な配置をすることができます。

また、当社はお客様先で作業をすることが多いので、全員揃う機会がなかなかありません。そこで、グループウェア上の掲示板を使って、お客様からの問い合わせ、事故情報などを常に共有しています。

掲示板

また、プロジェクトに社員をアサインするときには、誰がどんな資格を持っているのかの確認が必要ですが、こういった情報もグループウェアの中で共有しています。

資格保有リスト

グループウェアがあれば、34人全員の行動、受け持っている仕事の量、保有している資格、工具の利用状況がいつでもわかります。結果、「仕事の偏り」があればすぐに分かるので、社員に平等に仕事を配分できるようになりました。

「IT活用によるコミュニケーションの効率化」が脱属人化につながるのですね!

属人化している企業は、どのような一歩を踏み出せば良いか?

残業削減を目指すコツは、まずは「属人化した業務がないか?」を見直すことから始まるのかもしれませんね。脱属人化のポイントを教えてください。

属人化を解消するポイントは2つあります。

1つめは、社員それぞれのレベルを上げることです。当社の場合は「業務に必要な資格」をみんなが取得することでした。そのために、資格取得や講習会の費用を全額会社が負担し、個々人のスキルアップを後押ししています。

2つめは、社内のコミュニケーションを良くすること。具体的にはその人がどれだけ仕事を抱えているか、皆が分かるようにすることです。例えば、Aさんに余裕があり、Bさんに仕事が偏りすぎていると明らかにロスですよね。スケジュールを全員が知っていれば、仕事の割り振りを効果的に行えます。

「社内コミュニケーションを活性化し、社員が抱えている仕事を把握できる仕組み」をどう作るかは、自社にあったものにする必要があります。私たちは20年前からITツールが良いと考えており、グループウェアでスケジュール共有を行っています。

社員教育と社内コミュニケーションが属人化の解消につながり、働きやすい環境を生み出していくのですね。

「社員が魅力を感じる組織にすること」が何よりも大切

これから「働き方改革」に取り組む方にメッセージをお願いします。

社外の事例をいくつも学びに行くと良いと思います。小さな組織だから、社内に専門家はいませんが、外で勉強することはできます。

学んでみると、同じ事例は1つもありません。たくさん勉強していると、その中に自社にあったものを見つけることができます。そしてやってみて、うまくいかなければまた要望から聞き直します。

人材を確保することも大事ですが、基本になるのは「今働いている人に魅力を感じてもらえるような会社」にしようとすることです。

ありがとうございました!