副社長インタビュー

アメリカの成長市場で、
すでに有力プレイヤーであるという
アドバンテージ
――世界と戦うワクワク感を実感してほしい

サイボウズ株式会社代表取締役副社長 兼 kintone corporation代表取締役社長
山田 理

プロフィール:
山田 理(やまだ おさむ)。サイボウズ株式会社代表取締役副社長 兼 kintone corporation代表取締役社長。1992年日本興業銀行入行。2000年にサイボウズへ転職し、責任者として財務、人事および法務部門を担当し、同社の人事制度・教育研修制度の構築を手がける。2014年からグローバルへの事業拡大を企図し、アメリカ事業本部を新設し、本部長に就任。同時にアメリカに赴任し、現在に至る。

「アメリカの競合他社とサイボウズを比較すると、恐竜とねずみのようなもの」、だから全社員で取り組まないと到底勝てない

中江:人事部の中江です。2001年にサイボウズはアメリカに初進出を果たすも撤退。2014年7月から再挑戦していますね。前回と今回のやり方では、どんなところが変わりましたか?

山田:過去の反省を活かして、日本にいるメンバーをとにかく巻き込んで、進めるようになりましたね。前はアメリカに行ったメンバーが孤立してしまったんです。それが大きな敗因でした。

中江:孤立、というのは?

山田:アメリカにいるメンバーと日本にいるメンバーがやりとりするには、どうしても壁ができてしまうんです。わかりやすいのは時差や言葉の壁で、コミュニケーションに時間がかかってしまいます。その2つの壁で意思疎通が遮断されると、心の壁までできてしまう。

結果「時間がかかるし面倒だから」とアメリカのメンバーだけでコンテンツを独自で作ったり、製品を独自でカスタマイズしたりすると、いざそれを売ろうとなったときに、日本のメンバーが協力しづらくなります。アメリカ側で“完結”していたら、日本側もどうアドバイスしていいか、わからないですよね。

中江:たしかに。

山田:巻き込まれる側としては大変かもしれませんが、全社をあげて取り組まないと、ぼくたちみたいな小さな会社が勝てる市場ではないんです。青野さんが「現地の競合他社とサイボウズを比較すると、恐竜とねずみのようなもの」と言っていましたが、これほど的確な表現はないと思いますよ。

たとえ600人全員で進出しても、社員数万人を抱える競合他社と戦いながら、サービスを広めていくのは簡単なことではない。そう考えると現在アメリカにはぼくを含め15人のメンバーがいますが、たった十数人だけで戦っても勝ち目は少ないわけです。

ですから、アメリカに行ったメンバーだけで、独自で進めるのなら、ぼくがあえて現地へ行く意味もないと思いますし、アメリカに進出する理由すらなくなってしまいます。

中江:その方針がうまくいっているのか、kintoneはアメリカ国内でも高い評価を得ています。kintoneは「Magic Quadrant(マジック・クアドラント)」(アメリカのIT分野の調査・助言を行う代表的な企業であるガートナー社のレポート)に、主要なエンタプライズ・ベンダーの一つとして、日本企業で唯一掲載されましたね。現地で知名度が高いとはいえないサイボウズ製品ですが、アメリカの企業はそう有名ではないサービスでも導入するんですね。

山田:各企業の情報システム部門には、ぼくたちの話を聞いてくれる人が多いです。とくにCIO(Chierf Information Officer / 情報システム部門のトップ)など、組織の上位にいる人は「新しいサービスを導入してみよう」とする傾向が、日本よりも強いかもしれません。新しい経験がより良い転職につながるからでしょう。

もちろん、プロダクト自体が優れているんだと思います。プロダクトが良くないと、アメリカで評価されるはずもありません。広告は少額でしか出していませんし、うちと契約してくれる会社は他社製品と比較検討したうえで、選んでくれています。だからやはりバリューがあるのかと。

中江:「いいものはいい」といった考えが根づいているんでしょうか。

山田:自分たちが「これは素晴らしい」と感じるなら、どこの会社が手がけているサービスかということに、あまりこだわらないのだろうと思います。ただ、うちが日本で「グループウェア国内シェアNo.1を獲得している」「日本でうまくいっている」という事実は、アメリカで製品を売りやすくしている、とも感じます。

ちなみに、お客さまは広告を打ったり、展示会に参加して名刺をくださった方にアポをとったり、興味を持ってくださった方から連絡をいただいたりして獲得しています。

2年前はぼくたちの製品について話しても「kintoneって?」「aPaaS(Application Platform as a Service)って何?」といった鈍い反応が多かったですが、今年に入ってからはaPaaSの市場ができてきているので、「aPaaS」とか「ノーコード(プログラミングなしで構築やカスタマイズができる)」といった説明をすると、さっと理解されるようにはなってきました。

「フォーチュン100」の世界的な大企業が評価してくれている、ずっと世界一に近づいている感じしかない

中江:製品が広まる土壌ができてきたんですね。ちなみに、うちの製品と他社との違いはどんなところだと思いますか?

山田:kintoneはaPaaSのなかでも、とりわけハイプロダクティビティというカテゴリで製品に柔軟性があります。かつ「要件定義がいらない」「システムの仕様変更は歓迎する」点が特徴ですから、技術者に限られていた業務システム開発を、現場の人たちが自由に行えるのも大きいですよね。コントロールと管理の機能は決して多くないですが、そのぶん値段が低めに抑えられているのも、魅力的な差分なんじゃないでしょうか。

中江:販売スタイルも違っているんでしょうか?

山田:アメリカの企業は人的コストを極力抑えて、ネット上でシンプルに販売する傾向があります。なので、説明やサポートもできるだけシステムなどで簡素にしようとします。ぼくたちはフリートライアルの場合でも一社一社電話で説明し、導入後も個別にフォローするくらい、人が手間をかけて販売していて、初期のコストはかかってるんです。でも、そこで製品をきちんと理解した上で導入してもらい、導入後も満足して長く利用してもらったほうが、お客さまにとってはもちろん、長期的にはぼくたちのビジネスの拡大にもつながると信じてやっています。

もう一つ「エコシステム」という考え方も意識しています。kintoneをプラットフォームとして、さまざまなサービスと連携させるんです。ディベロッパーネットワークやAPIとの連携は大事ですよね。ぼくたち単独で売りにいくのではなく、周囲の方たちにも売ってもらう。それが理想的な状態だと考えています。

中江:「フォーチュン100」に名前を連ねるような世界的な大企業がkintoneを「すごく便利だ」と評価してくれていますよね。それによって販売も促進されているのでは。端的な質問ですが、アメリカ進出から2年経ち、手応えはどう感じていますか?

山田:(一呼吸おいて)ある。

中江:ひとこと……。カッコいい(笑)!

山田:うん(笑)。手応えはあるけど、それを表現するのが難しいですね。16年前にぼくがサイボウズに入社したときも、「世界一になる」と目標を掲げていました。社員15人の会社が、ですよ。周囲の誰も日本一になるとさえ思っていなかった。でも、そのプロセスには苦労がありながらも、組織も製品も成長して国内で一番になった。当時からずっと、世界一に近づいている感じしかないんですよ。だからなおさら手応えはある! と思うのかも。

中江:機も熟していますしね。

山田:一度目のアメリカ進出時の製品は、市場がすでに成熟していたんです。それでも日本ではマイクロソフトやIBMの製品を抜いて一番になったんですが、アメリカではライバルが多すぎたし、文化の違いもあってうまくいかなかった。そして今、偶然ではありますが、アメリカでこれから市場が拡大していくサービスを、うちがすでに持っているという大きなアドバンテージがありますよね。しかも、kintoneは企業ごとに個別にシステムをつくるので文化の違いも関係ない。

これまでの歴史からしても、ソフトウェアやIT関連サービスはアメリカで盛り上がったあと、成熟して日本に入ってくると相場は決まっています。kintoneの例でいうと、アメリカでaPaaSの市場が盛り上がって成熟し、数年後に日本で「サイボウズが何年も前に出していたaPaaSってこれね」「kintoneってそういうことね」といった盛り上がりがやってくる。

だからアメリカのマーケットを見ておくことはとても重要なんです。成熟していないマーケットで勝負しようとしても、製品がガラパゴス化してしまいます。ぼくらの競合のいくつかは必ず成長し、それらは日本に進出してくるでしょう。そのときに備えておくのは大事です。

何も整っていないところでゼロからの現地立ち上げには、いい意味で鈍感、楽しいことに目を向けられる人に加わってほしい

中江:現地の人材について伺いたいです。どういうメンバーで構成されていますか?

山田:全15人のうち、ビザをとって渡米したのはぼくともう2人。残り12人は現地採用で、3人がバイリンガル、9人はネイティブで日本語がほとんど話せません。国籍はさまざまなので、コミュニケーションは英語です。

中江:現地採用の12名はアメリカではまったく無名のサイボウズにどうして入社したんでしょうか?

山田:それはぼくじゃなく、みんなに直接聞いてほしいけど(笑)。ぼくが把握している範囲でいうと、彼らは「ベンチャー企業で新しいサービスに携わりたいというのもあるけど、kintoneという製品も面白いと思った」と言っています。

面談を経てより深い話を聞くうちに、サイボウズは日本ではそこそこ大きな組織であること、それでいてベンチャー思考で動きが早い、さらにチームワークを重んじる風土があることを知って、より惹かれるんだそうです。

中江:彼らが働くうえで気にしていることはありますか?

山田:面接では「どれだけ裁量がありますか?」と聞いてくる人は多いです。それに対しては「サイボウズはアメリカで大きな挑戦をする覚悟があるから、副社長であるぼくがこうして責任者として現地にいるわけです。だからあなたたちにも任せた業務に対して必要な裁量を与えます」と背中を押すようにしています。こういったサイボウズのカルチャーや考え方は彼らにとってプラスに感じられるようですね。

中江:日本での採用ではサイボウズの多様な働き方に惹かれてやってくる方が多いです。タイプが違いますね。

山田:彼らはプロダクトの新しさや魅力、さらに入社して自分たちに何ができるか、を最重要視しています。その次に日本がまぁまぁ好きだとか、会社の雰囲気が好きだとか、そういった要素がくるようです。

中江:今後、現地で働く人として求める人物像はどんなものでしょうか?

山田:現地法人を立ち上げるのに必要な業務の素養やノウハウを持っているか、はもちろん条件になりますね。何も整っていないところへ行って、ゼロから進めていくわけですから。また、日本とは安全面など環境の大きな違いもあります。そういった場所で暮らすことに対し、いい意味で鈍感というか、気をつけて生活しつつも、楽しいことのほうに目がいく人が向いていると思います。

2017年からはぼくが「チーフグローバルオフィサー」となり、アメリカに加え、オーストラリアと上海の拠点も見るようになります。役割としては、現地の状況の把握、そして問題を発見し課題を設定していくような感じです。サイボウズの全社員がグローバル市場を目指して、各拠点の活動をよりサポートできるような体制にしたいという狙いがあるんです。まさにグローバルでのチームワークづくりです。これから入社する方にもぜひ一緒に世界を目指すワクワク感を実感してほしいと思います。