退職や担当変更があると、後任にお客様を引き継ぐわけですが、同行訪問と併せて、当時の日報である大学ノートと引き継ぎ先一覧表を前任から後任に渡す、という方法で引き継ぎ業務を行っていました。

ノートにはお客様との商談内容、使用した車両管理情報、ガソリン代などの経費精算明細を記載していましたが、日付順なのでお客様ごとに並んでないんですよね。しかも何冊もある状態…。時系列の活動履歴としては機能しますが、誰に、どういうアプローチをしたか、その案件がどういう経緯で発生したのかなど、活動の歴史をたどれない状態でした。

また、既存のお客様への引き継ぎが上手くいかない例もあり、新規のお客様が増えても取りこぼしてしまっていて、そんな事実に対して、すごくまずいんじゃないかと思っていました。

経費精算した際の経理担当のハンコと、上長承認もタイミングによってはありました。ただ、出張していたりすれば見られないので、タイムリーなアドバイスもできないですし、日報の目的は経理部門が把握したい経費精算をスムーズに行う為の日報だったように思います。

ノートと一覧表だけでは住所の引き継ぎくらいにしかならないし、もはや誰のために日報を書いているんだろう？何のために書いているんだろう？という状態だったんですよ、本当に。

配送部でも大学ノートで日報の運用をしていたのですが、日々約20件の納品先・品名品数を書くために帰宅時間が遅くなっていました。上長は上長で、各部門のリアルタイムな活動を把握できないという、そんな状況にずっと疑問を抱いていましたね。

同業で、食品衛生資材を扱う東京の古くからの友人と話す機会がありまして、その方に一連の課題をなげかけると、「うちはkintone入れているよ」と言われて、調べ始めたのがきっかけですね。

「何なら見に来いよ」と言ってくれたので、東京まで足繁く通って全部さらけ出して見せていただきました。そこで運用されていた日報の在り方を見てみると、自分がイメージしていたものとガチっとハマって。もうこれしかないだろうと思ったんです。

お客様の情報と日報の活動履歴がセットで管理できる理想の活用で、検索性も高くて、行動分析などこれまで出来なかった運用をkintoneなら可能にする成功のイメージが持てました。その後すぐに30日間の無料お試し^※を始めたという流れですね

当時、中堅層の退職が重なる中、引き継ぎがうまくできずに既存のお客様を取りこぼしてしまっているものの、解決方法がないままになっていました。そんな顕在化している問題解決の糸口としてkintoneを導入したい、と経営層には訴えました。

加えて、外出先からでもリアルタイムに活動が見えるようになる点、売上につながる行動分析もできるようになる点、kintone活用を教えてもらった同業種の事例も交えて良いところをどんどん言いましたね（笑）結果、日々の活動の蓄積・集約ができて良いんじゃないか、という話にまとまりました。

最初に、あるべき姿、こうなれたらいいよねという理想を伝えましたね。各々の活動が蓄積されて振り返れるようになったらものすごくいいよね。訪問してきた歴史を引き継げた方が良くない？って。この言葉はとてもわかりやすかったみたいです。

その上で、当たり前になっていた、大学ノートで行う日報の運用と引き継ぎ方法に対して問題提起をして、お客様との継続的なお取引をしていくために、kintoneというシステムを導入したんだよ、と説明しました。

先に導入していた同業種の東京の友人にアプリの作成方法や運用方法、プラグインの活用方法など、1番相談していましたね。ある程度進めてからはサイボウズのサポート^※に問い合わせながら形を作っていきました。

ノーコード^※とは言え、慣れるまではイメージ通りのアプリがなかなかできず「またうまく設定できなかったんですけど…」という感じで何度も相談させてもらいながら作ったり、調整したりしました。

本当にサポートがなかったら絶対出来上がらなかったです。kintoneの良さは、サポート力にもあると思います。助けていただいたサポートの方には、とても感謝していますね。

導入や活用を推進する私のような立場の人間が、旗振り役として運用ルールを作り、定着させるための活動をする必要はあると思います。特に“何のため”のアプリなのか、目的を明確にするように意識しています。

例えば、お客様からお問い合わせを頂いた場合、受けた者がその内容をアプリに登録し、担当者へ通知する運用にしています。この運用の目的は、お問い合わせに対して、担当者が漏れなく対応を完了させることであって、アプリに登録することが目的ではないんですよね。

そこで、受けた者が対応の完了まで関わってもらえるよう、対応が完了したら確認できる設定にして、完了されていない場合には声がけをする、といった目的に沿った仕組みづくりをしていきました。このように、運用していくための仕組みづくりを旗振り役が担っていく必要はあると思います。

自身の行動の振り返りに使える日報だから日々の入力が大事だよね、ということを常に皆に言えるようになりました。活動の履歴が簡単に見られるようになった点も良かったですし、上長からのアドバイスも時差なく入るようになりました。

皆に求めていたのは、単純な活動の記録だけではなくて、お客様に訪問する時の意識そのものを変えてほしいということでした。実際、導入前から比べたら1人ひとりの活動の質がものすごく上がっていると思いますね。

現状認識が可能になって、それを元に行動計画を立てて活動し、見える化できたことで成果を実感できたことでしょうか。

ある日、営業部全体の行動分析してみると、なぜか納品作業が1番多かったんです。営業なのにね…（笑）。そこで、まずは正しい現状認識が必要と考えて、担当者毎の行動分析を行いました。部内で分析結果を共有し、そこから具体的な行動計画へと落とし込んでいきましたね。

総体的な訪問件数を上げようという目標に対しては、「訪問を3ヶ月で200軒増やすなら、1人当たり月10件！つまり週に2件増やそう！」と、日々のスケジュールまで落とし込んで、行動計画を立てました。

そうすると、訪問件数も上がり有効訪問も増えていったんです。部内のミーティングではこの変化を共有しながら進めたので、営業部のメンバーは活動と成果のつながりをこの「見える化」によって、より実感できたと思いますね。

配送部は、営業部が行っている訪問件数を上げる取り組みに対して、配送エリアの広域化に取り組む事でバックアップしようと考えてくれました。営業が行っている納品エリアを配送部で補って、営業には営業に専念してもらおうって。

kintoneの導入で配送部自体の機動力が上がっていましたので、時間に余裕が出てきていた事と、部門としての役割を見つめ直した時に、営業部のバックアップも役割の一つであると考えてくれたようです。

他の業務を含めて、管理部がいないと本当にうちは回らないです。

その中でも、一般家庭向けに商品をお届けする業務があるのですが、この訪問スケジュールの管理を管理部で行うようにしました。実務担当者は出てきたスケジュール通りに回るだけで良くなり、結果的に週5日間の稼働のうち約2日間削減する事ができましたね。

今までは部門の中で、これは営業の仕事、これは管理部の仕事、となりがちだったんです。そうじゃなくて、各部門がそれぞれの業務でお客様と関わっていくからこそ信頼関係が生まれるわけで、kintoneによって会社一体となってお客様と関わることができるようになりました。

なので、今はお客様と個人としてではなく、会社としてのお付き合いが成り立つようになってきたと思うんですよね。

営業の日報は、営業活動の質を向上できるよう設計し、日報を書けば行動分析ができるよう訪問目的を細かく設定しています。最初は訪問目的の項目が少なかったのですが、後で分析してみると“その他”がすごくいっぱいで（笑）

だからこそ細かく分けているんですよね。例えば、納品だけで訪問するのではなく、せっかく伺うのだから納品だけで終わらないようにしようね、という活動の振り返りから「納品+ワンモア活動」のような項目が足されていきました。訪問目的を明確にする事で、果たすべき役割を認識しやすくなったのかもしれません。

訪問予定表のアプリを、日付・担当者に絞り込んで関連レコード^※で表示する設定にして、配送が終わった時点で、日報アプリを開いて、保存すれば日報が出来上がっている状態にしました。

今は帰宅が随分早くなりましたよ。また、日報に割いていた時間を有効活用できるようになったことで、倉庫管理などに充てられるようになり、整理整頓された倉庫環境に変わりました。

取引先台帳アプリですね。Aというお客様に対して、日報以外にも各部署の対応履歴を関連レコードで表示させています。そのお客様に対して、ケミカル産業としてどういう関わりをしたのかが、そのレコードを見れば全部わかる状態になっています。

一般家庭向けに商品をお届けする業務では集金を伴うのですが、1人の担当者で回していたんです。集金先リストはもちろん、スケジュール管理も担当者が自身で行っていて、不在だったり距離があっても1人でなんとかするしかないので、帰ってくる時間も遅くなってしまう状態でした。

そこでルートスケジュール管理を事務方の管理部に任せることにしたんです。再訪問が必要な場面では近くにいる誰かを向かわせるなど、管理部が他部門との連携をコントロールする仕組みにしました。

管理部は事務所からタイムリーに納品履歴を確認しながら、次の日のスケジュールを組んでくれるので、担当者は効率的なルートとスケジュールで業務に集中できる状態になりましたね。