導入製品 サイボウズ ガルーン 2 | ガルーンシリーズ
大田区役所
経営管理部情報システム課 情報システム担当係長 長沢和彦氏
情報システム課 大越勝広氏
情報システム課 茂木和弘氏
全庁的なシステム統合化の中心としてガルーン 2 の基盤を活用
限られた財政状況の中でいかに業務効率を上げてサービス向上を図るかは、民間企業だけの話ではない。
財源が限られていて人口のコントロールもできない国や地方自治体においても同様である。
その対策のひとつとして、全国の自治体に先駆けて情報システムに着目し、EA(Enterprise Architecture)の概念を導入して、業務ステップの見直しとシステム統合をやってのけたのが大田区である。
その大田区では、サイボウズ ガルーン 2 が庁内業務システムのまさしくポータルとして位置づけられ、システム統合と業務効率化に大きな貢献をしている。
導入の背景 ITを戦略的に活用する仕組みを作り上げる
大田区のIT活用の方針は、区の長期基本計画「おおたプラン2015」を実現させるために平成14年(2002年)に策定された「大田区行政情報化ビジョン」に記されている。
・質の高い区民サービスの提供
・区民との協同によるまちづくり
・行政の高度化と効率化
の3つの大方針に従い、情報化ビジョンでは、ネットワーク、区民向けサービス、基幹システム、庁内業務システムのすべてを見直す方向性を打ち出し、検討を行った。
そこで問題となったのは、今まで個別に導入を行ってきたシステム統合の課題である。
基幹システムであるホストコンピュータのほかに、福祉システムや財務会計をはじめとするそれぞれのシステムが動いていたが(ホストがあったが)財務会計や福祉総合システム、学事、保育、などプロトコルも動作環境も違うシステムが大小あわせて80種類あり、それらがばらばらに動いており、「ソフトウェアの条件や文字コードの関係で端末すら統一できず、場所によっては職員数より端末数が多いくらいだった。」(経営管理部情報システム課係長 長沢氏)という。
この問題を解決し、同時に庁内業務の見直しと効率化を進めるため、区では日本総研と共同で最適化プロジェクトをスタートさせた。
その内容は、国が推奨するEAの概念を導入して、最適な行政運営モデルを作り上げるという壮大な計画であり、業務フローとシステムの最適化を階層に分けた上で、同時に練り上げていった。
右:経営管理部情報システム課
情報システム担当係長 長沢和彦氏
中:情報システム課 大越勝広氏
左:情報システム課 茂木和弘氏
その柱となったものは、
・統合を効率的に進めるために、システム統合基盤を策定して、スクラッチで開発する
・業務の見直しを進める中で、日ごろの仕事のあり方をたな卸しする
といった大掛かりなものになり、担当する職員は庁内の調整はもちろんのこと、これを受ける業者やベンダー探しすら苦労したという。
「実際には理想どおりはなかなか行かないし、折り合いを付けるのは大変でした。すべてをスクラッチでやるわけにはいかないのですが、パッケージソフトでは、大田区の標準アーキテクチャに対応していないものも多いですし、やっぱり現場の求めるシステムというのもありますから。最終的には大目標である『住民サービス向上』の原点にさし戻って、業務効率化を目指せる観点から選択してゆきました」。(長沢氏)
導入の決め手(1) 朝出勤してからの業務フローの中心として、ガルーンを採用
システム統合をするとはいえ、目的がコスト削減である以上予算は限られている。
新しいシステムは最小限として統合を進める方法をいろいろ模索した結果、データベースは統一するのではなく、役割分担を決めて既存のシステム間の重複をなくすとか、「汎用端末」を定義して、その端末の環境で動く範囲のシステムで構成しなおすなどの現実的な解決策が決められていった。
そして、職員の業務の効率化の観点で業務ステップの分析を進めてきた中で浮上したのが、業務ポータルの存在であった。
「朝来て、まずは今日の業務の確認とかから始まり、という風に業務のやり方を考えてゆく中で、システムからシステムへのターミナルとして、ポータルを作りたかったのです。職員が仕事をする上で、それぞれのシステムに入るときにID、パスワードの再入力が不要なものにしたい。そしてポータルから何十とあるシステムの中から、本人が必要なものだけ表示させて、スムーズにログインできるようにしたい」。(長沢氏)
そこで重要な要件としてシングルサインオンとアクセス制御のできるポータル、共通の認証が決まった。
「あとは連絡、調整機能。スケジュールの調整や掲示板を見るためにストレスを感じるようなものはダメでしょう。職員のリテラシーも一定ではないので、誰もが使いやすいものが必要です」(長沢氏)
その要件を満たすものを探した結果、採用されたのが、サイボウズ ガルーン であった。
ガルーンの画面上では、ポータル機能を利用して、権限や所属にあわせて使えるシステムが出てくるように設計されている。
ポータルのタブは、職員ポータル、共通業務、電子決定(承認システム)、業務システムの4種類。職員ポータルは全員使えるが、他のものについては、自分が使えるものだけがでるようになっている。
職員ポータルは、ガルーンのグループウェア機能で構成されており、スケジュール、TODO、最新情報通知、リンク集、施設予約のシステムとして活用されているサイボウズデヂエへのポートレットなどが表示されている。
当初目論んでいた「日常業務はストレスなく」という部分については、
「紙のマニュアルは作ったけど、見なくても広がった。職員文化会のお知らせなど業務以外にも積極的に使われていて(ガルーン 2 の)社内メールは一ヶ月に3万8千件も飛び交っています」。(長沢氏)
導入の決め手(2) 強固なセキュリティと使いやすさの両立でカード認証を採用
業務ポータルとしてガルーン 2 が採用された理由のひとつに多彩な認証に対応していることがある。
大田区では、職員全員のIDカードにICチップの組み込まれたカードを使用しているが、このカードを端末のカードリーダーに差し込むことで、認証はもちろん、ガルーン 2 をはじめとするほとんどの社内システムへ自動的にシングルサインオンされるようになっているのだ。
もちろんパスワードの入力も必要はなく、カードを挿すだけで大田区内のどの汎用端末からでも認証が完了する。
このシステムは、マイクロソフトの認証を使ってIDカードの認証を行い、独自に開発したシングルサインオンシステムを組み合わせて、Windows以外のシステムへもシングルサインオンで入れるように工夫されている。
ガルーンのポータル自体は、大きく4種類がガルーンで設定されたアクセス権でその職員の権限に必要なものだけが出てくるようになっているが、さらにポータルごとの他システムへのボタンは、今度はマイクロソフトのアクセス権による制御を受けて、さらに必要なものだけが絞り込まれて表示されるというきめ細かさだ。
もちろんどのシステムのボタンを押しても認証は済んでいるため、すぐに業務に取り掛かることができるようになっている。
このシステム基盤は、大田区の全ての内部系システムに適用されており、職員は本庁だけではなく、学校や出張所など区内のどの機関においても同じサービスを受けることが可能になっている。
導入効果 住民サービスの向上へと確実につながっている
システム構築時には、エンドユーザーの立場で他の部署で勤務していた情報システム課の茂木氏と大越氏は、導入の効果を実感としてこう語っている。
「今までは紙で印刷して回覧だったのですが、それでは時間がかかるということのほかに誤配の心配など、重要な情報が送りにくい状況があった。だからまるで職員の暮らしが変わったかのように思える。導入当初は正直、管理されているようでいやだという思いもあったようだが、ガルーンを文書交換箱と位置づけて紙をなくすように働きかけたおかげで早く広まったと思う」(茂木氏)
「窓口業務の方は、汎用端末に接する機会が少なかったので普及が遅れましたが、私は管理系だったのでよく使っていました。聞きたいことがあるときなど、業務後でもメッセージ(社内メール機能)を送付しておくと、相手のタイミングもあるが、翌日にでも回答が返ってきます。時間差で仕事ができるようになったのもいいところですね。また、共通基盤との連携のおかげで、職員カードを持参すれば汎用端末が設置されている部署ではどこでも利用可能で、仕事をする場所を選びません。」(大越氏)
現在ガルーンに登録されているユーザー数は3500ユーザー、社内メールは延べ34万件にも上る。
ポータルはもちろんのこと、グループウェア機能もすっかり庁内に溶け込んでいるようだ。
「官庁の場合は、金銭的評価というよりも、限られた予算の中で、サービスの向上につながったかどうかがポイント。業務プロセスが削減されることで、事務手続きの時間短縮が計れ、稟議する時間や書類作成の時間も減りました。共通基盤のおかげで、出張先で、どの端末からでもIDカードを使ってシングルサインオンで仕事をすることが可能ですから、住民サービスのスピードアップにずいぶん寄与できたと思います。」(長沢氏)
サイボウズ ガルーン 2 の掲示板。
流行のインフルエンザ対策の周知にも有効に活用し、対策のスピードアップに効果をあげているという。
今後の展望 共通基盤と自由な運用でシステムも業務も急速に改革
ガルーン 2 を導入したのは平成17年(2005年)、使いやすさでまず職員ポータルの活用が進み、勤怠入力や起案承認もある時期から電子だけにとしたこともあり、活用は急速に進んだ。
また、各システムの親和性に優れ、汎用性をも持たせた共通基盤に従って、活用とともに各システムのリニューアルも急速に進んでいる。
「まず、福祉総合システムのリプレースを行いました。同時に財務会計システムも更新して、グループウェアと同時に、文書管理システムも稼動させています。最近は学事システム、介護認定のシステム、保育、後期高齢対応のシステム、戸籍システムも次々に稼働中で、やるべきことが目白押しです」
この急速な浸透と改革も、しっかりとした基盤と、全員に使ってもらえる環境があるからこそ、混乱なく行えるというもの。
全国で初めて本格的なEAの概念でのシステムリプレースを行った大田区の情報システムは、これからも自治体のシステム活用の先例であり続けるに違いない。
システム概要
動作環境
APサーバー | 6台 | サーバーOS | RHEL4(32bit) |
---|---|---|---|
CPU | Xeon X5460 3.16GHz | ||
メモリ | 4GB | ||
DISK | 約140GB [72GB×4((RAID5)×3 + HS×1)] | ||
DBサーバー | 3台(A-A-S) | サーバーOS | RHEL4(64bit) |
CPU | Xeon X5460 3.16GHz | ||
メモリ | 8GB | ||
DISK | 約140GB [72GB×4((RAID5)×3 + HS×1)] | ||
ストレージ | 1台 | DISK | 約530GB [146GB×6((RAID5)×5 + HS×1)] |
※DBサーバー1台はホットスタンバイ機
※HDDについてはすべてホットスペアを採用
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