企業情報
■会社名:
株式会社 大都
■ホームページ:
http://www.orosi-daito.com/
■利用製品:
- サイボウズ Office 9
■利用人数:
24名
■業種
卸・販売業
■創業
昭和12年3月
■概要
電動工具、建設機械、測量機械、作業工具、道路標識、各種接着剤、家庭塗料、樹脂製品等の卸・販売。
日本最大級のDIY&ガーデニングツールのオンラインショップ「DIYツールドットコム」の運営
- 廃業の危機にさらされながら、模索を続けた日々
- 業界の「常識」を打ち破り、背水の陣で取り組んだ新ビジネス
- 会社の成長をサポートする「サイボウズ Office」導入による効果
- チームワークを加速し、スタッフの意識を変えていく「サイボウズ Office」
- 日本の「ものづくり」にかける想い
「優れた日本の技術を世界へ」三代目の想いを支えるスタッフの間に「一体感」を醸成
代表取締役 山田 岳人氏
DIY工具&ガーデニング用品のオンラインショップ「DIY-TOOL.com」(ディー・アイ・ワイ・ツール ドットコム)。取扱メーカーは300社以上、取扱アイテム数は40万点という、日本最大級を誇る当サイトを運営しているのが株式会社大都だ。
廃業の危機にさらされた時期もあったが、起死回生の策として業界でも先駆けて工具のネット販売をスタート。すぐには結果が出なかったものの徐々に業績を伸ばし、現在は売上高約15億円を上げるまでに成長した。
この躍進を業務の効率化およびスタッフのチームワーク強化という面から、力強くサポートしているのが「サイボウズ Office」だという山田岳人代表にお話をうかがった。
廃業の危機にさらされながら、模索を続けた日々
創業76年を数える株式会社大都の歴史は、町の金物店やホームセンターに工具類を卸す問屋から始まった。山田岳人氏は、義父から家業を引き継いだ三代目の代表である。
「僕は大学卒業後リクルートに入社し、学生時代からつきあっていた彼女と結婚を決めたのですが、彼女は一人っ子。そこで義父に『娘はやるから、会社を継いでくれ』と言われて引き受けたんです。いずれは起業するつもりでしたし、求めてくれる人がいるならやってみようと承諾しました」
いざ仕事を始めてみると、メーカーから買い入れた商品をトラックに積み、100円単位の品物まで金物店やホームセンターへ運ぶ毎日。前職では採用を担当し、求人広告などを取り扱っていた山田氏は、初めて経験するアナログな仕事の進め方に驚きを隠せなかった。 そんな中で懸命に仕事をするうちに、山田氏は業界独特のある「常識」に疑問を感じ始める。ホームセンターとの手形取引だ。

「普通で3ヶ月先、長い時には半年先の支払いということもありました。ホームセンター自体は現金商売なのに、なぜ僕たちは手形取引を要求されるのか、と」
さらに、ホームセンターへの卸は数こそ大量にさばけるものの、価格競争が非常に厳しく、利益が出にくいことに山田氏は気づいていた。商品の納入に加え、商品に店ごとに違う値札を貼るなどの細かい作業まで請け負わされることも納得できなかった。実は山田氏が入社した当初から経営はかなり厳しい状態だった。そこへ不景気が追い打ちをかけ、不渡り手形を受けることもあり、経営はいっそう苦しくなっていく。様々な改革を行ったものの、社員も会社の体質もなかなか変わらず、赤字は続いた。
「このままではまずいと思いました。ちょうど第一子が生まれた時期で、会社を続けていたら子どもを育てることすら危ういのでは…と考えるくらいの状況でした。それで、先代に『今期も赤字だったら廃業させてください』とお願いしたんです」
だが、先代の答えは「従業員とその家族のことを考えると廃業は忍びないし、親父が作った会社を残したいという思いもある。君の好きなようにやってくれていいから、何とか存続させてくれないか」。
山田氏は悩んだ末、「思ったようにやらせてもらえるなら」と、再建に取り組むことを決意する。
業界の「常識」を打ち破り、背水の陣で取り組んだ新ビジネス
以後、「本当に好きなようにやらせてくれた」先代に見守られつつ、山田氏は思い切った舵取りを続けていった。
「工具のネット販売を始めたのは2002年で、最初は僕が独りでやっていました。ネットでの販売はこれから伸びる分野だろうと見込んでいたのですが、すぐに結果が出た訳ではありません。卸事業の赤字が回収できず、ネット通販を始めた2年後には当時の社員全員を解雇せざるを得なくなりました」
「余力がある今なら全員の退職金が払えるが、これ以上続けたらそれもできなくなる」。当時15名いた社員に現状を理解してもらい、いったん全員を解雇した上で、もう一度チャレンジしてみたいと思う人がいたら一緒に頑張ろうと伝えた。
再雇用した当初はほぼ全員が残ったが、やがて1人2人と辞めていき、新たなスタッフを募集し始めた。
また、かねてから疑問を感じていた悪しき「常識」・手形取引を見直した。ホームセンターに「現金取引にできないなら取引を止める」と申し入れたところ、先方は拒否。その瞬間、取引停止と同時に、当時でおよそ1億円あった売上の消失が確定した。
「もうネットで勝負するしかない」山田氏は覚悟を決めた。
そこからは全力でネットショップ「DIY-TOOL.com」の運営に取り組んだ。しかし、同業者やメーカーからのバッシングや苦情に見舞われた。
「問屋が小売りをする訳ですから同業者には叩かれますし、メーカーさんには『値段が丸見えになってしまうので、うちの商品はネットに掲載しないでくれ』と言われますし。ホームセンターで1,200円で売っているものを、うちで1,100円で売られたら困るでしょうから」
そんな多くの苦労を重ねたが、業界の閉鎖性を打破し「良い商品を低価格で提供したい」という揺るぎない信念は、しっかりとユーザーに届いた。ネットショップは見事に軌道に乗り、2012年12月には15億2000万円の売上高を上げた。
大都は商品を「DIY-TOOL.com」の他にAmazonでも販売しているが、あまり力は入れていないという。その理由を山田氏はこう語る。
「商品や対応するユーザーが、Amazonと僕たちでは一致しないからです。Amazonは例えるなら自動販売機だと思いますが、僕たちは商品に対するユーザーのご質問にしっかり答えていくスタイルなので」
大都では全スタッフがDIYツールに関する豊富な知識を持っている。また、メーカーから講師を招いて「DIYスクール」を開催し、全スタッフが参加するなど、日々勉強も欠かさない。DIYの専門資格「DIYアドバイザー」を取得したスタッフも6名在籍しており、ユーザーからの質問にわかりやすく答える態勢は万全だ。
「ツールだけでなく、注文方法で戸惑う年配のお客様も多いんです。そういう対応も丁寧にやりたいので、やはり自社サイトで販売するのが一番いいですね」
ユーザーの中には、パソコンを横において電話で注文してくる方もいる。スタッフはそういった時も、PCでの購入方法を丁寧に伝える対応を忘れない。時には、1商品の注文に30分以上も対応することもある。そこもフォローしていくことが大都スタイルなのだ。
山田氏はサイト立ち上げ時から現在までを振り返る。
「売る先は金物屋さんからホームセンター、ネットショップを通じて直接ユーザーへと変わりましたが、仕入れ先とは昔から変わらない関係を続けさせていただいています。それは弊社の財産なんです。先代、先々代が築いてくれた信頼関係があったから、ネット販売が実現できた。僕が急にポッと出てきて『ネット販売をやりたい』と言い出しても、とうてい無理だったでしょう」
「今になって思えば、資金が潤沢になくてよかった」と語る山田氏。逆境だったからこそ、旧い殻を破って新しいことにチャレンジできた。さらに、ホームセンターとの取引停止からくる「後がない!」という危機感と覚悟。それらの要素が現在の大都を作り上げたと言っても過言ではない。

会社の成長をサポートする「サイボウズ Office」導入による効果
長い歴史で培った仕入れ先とのネットワーク、そして親切・丁寧な対応を強みに、ネットショップは成長を続けた。スタッフも増え、ネット販売を始める以前に比べ、処理する業務量がこの数年で3〜5倍に跳ね上がった。それに伴い、社内で情報共有に関する問題が出てきた。従来は紙ベースの回覧板を回して情報共有していたが、最後まで行き届かないことが多くなり、社員間の情報共有に差ができてしまったのだ。この状況を見た山田氏は、グループウェアの必要性を痛感した。ちょうどその頃、知人がサイボウズのグループウェアを活用していると知り、いろいろと話を聞いた。
「アウトドアやスポーツ用品の通販サイトを運営しておられる会社の方からお話を聞いたのですが、その会社ではスケジュール調整や施設管理、掲示板など、グループウェアを使いこなしておられました。これは便利だとうちでも導入を決めたんです」
導入したのはクラウド版の「サイボウズ Office」。導入後は「朝礼の報告から一日の終わりに書く日報まで、それこそ一日中サイボウズを使っている。サイボウズの中に会社があるようなもの」(山田氏)という。
●効果その1 全スタッフによる情報共有で、業務がスムーズに
何より良かったのは、スタッフ全員で情報共有ができることだという山田氏。業務のやり取りも全て「サイボウズ Office」を使い、口頭で伝えないよう社内でルール化している。口頭では言った言わないの問題につながりがちだからだ。
「僕は国内外問わず出張することが多いのですが、「サイボウズ Office」を使えば海外からでも社内のやり取りを確認できる点も助かっています。「サイボウズ Office」の掲示板でのやりとりを見ていて、話がちょっと違う方向に進んでいるなと思ったら出張先からでもすぐに軌道修正できますから。そういうところも非常にいいですね」
●効果その2 タスク管理の改善
さらにタスク管理でも大きな改善がみられた。
導入以前はバイヤー、CS、web、法人、経理などのチーム間で質問・依頼などをする場合に、メーリングリストや掲示板を使っていた。
しかしメーリングリストや掲示板は、新しいメールや投稿が次々と入ってくるため、投げかけられた問いが流れていき、つい見落としがちになってしまうという欠点があった。そうすると、「いつまでたっても質問の回答がこない」「お願いしたことがやってもらえない」などのトラブルが起こる。
それを解決したのが「サイボウズ Office」のカスタムアプリ。共有タスク管理ツールとして活用すると、チームのメンバーがどのくらいタスクを抱えているのか、進捗状況がどうなっているかがデータベース化され、業務の現状を可視化できるため非常に役立っているという。
「アプリを使うと達成しなければいけないタスクが一目でわかるので、もう逃げられなくなるんですよ(笑)。タスクの漏れもなくなり、時間の短縮にもつながっています」
●効果その3 コスト削減を実現
「サイボウズ Office」導入後、紙ベースで対応していた各種の申請や清算も電子化された。さらに伝票チェックなどもなくなり、ほぼ100%ペーパーレスを実現。コスト削減につながっている。
「まだ紙ベースで対応しているものといえば、メーカーさんから送られてくるお知らせとか、何かの案内くらいです。でもそれもスキャンして「サイボウズ Office」に上げておき、全員が見られるようにしています。そうすれば遡って調べることもできますし、紙を保管しておく必要もなくなります。何より途中で回覧が止まらないので、それが一番ですね。紙ベースだと、必ず手元に留めてしまう人がいますから。」
チームワークを加速し、スタッフの意識を変えていく「サイボウズ Office」
山田氏は「サイボウズ Office」の導入メリットについて、業務上だけでなくスタッフ間の連帯感を強める点も重視している。
「例えば、ある社員が何かにチャレンジして成果を出したとします。その情報を「サイボウズ Office」にあげたら、他の皆から『よかったね』『すごかったね』というメッセージがきたり、『いいね』ボタンが押されたりする訳です。全員で誰かの頑張りや成果を共有できる、そして想いをやり取りできるのは、成果を朝礼で発表して終わりというのとは、また違いますよね」

その他にも、「サイボウズ Office」で様々な掲示板を立ち上げている。その中の1つが「このサイトいいね!」掲示板だ。ネーミングを聞くだけでワクワクしてくるこの掲示板は、その名の通り面白いサイトを見つけた人がURLを貼り付けて紹介し、個人で得た情報を全員で共有できるようになっている。
「普通は仕事中に面白いサイトを見つけても、一人で『面白いな』と思うだけか、せいぜい隣の席の人に『これ、面白いよ』と伝える程度で終わってしまうでしょう。でもこの掲示板があれば、面白いと思った情報を会社全体に発信できるので重宝しています」
一緒に働く仲間の頑張りを見て、「あの人はこんなことをやっているんだ」「こんな成果を出したんだ」と感動したり、共に喜んだり、励まされたりすること。
興味深い情報を見つけたら他のスタッフへ向けて発信し、共有していくこと。
それらの体験は、社内により良いコミュニケーションを生み出す。それはやがてスタッフ同士の連帯感、ひいては会社全体のチームワーク強化につながるはずだ。大都はチームワークを加速するツールとして「サイボウズ Office」を最大限に活用している。
日本の「ものづくり」にかける想い
優良なDIYツールを支えているのは、日本のメーカーが誇る優れた技術だ。ものづくりにおいて技術の高さで知られる日本だが、現在、日本のものづくりは危機に直面している。
メーカーが優れた製品を作り出しても、販売側がその技術を中国など人件費の安い国へ持っていき、生産させるからだ。
山田氏にそんな現状と、日本の「ものづくり」について考えを聞いてみた。
「工具類をはじめ、日本のメーカーはたくさんの優れた製品を作っていますが、大手のホームセンターは店舗に卸した商品が人気がでると、類似品を中国で大量生産して自社ブランドとして安価に売り出してしまいます。そうなると日本のメーカーは売り場を失ってしまうので‥売れる商品ほど提案できなくなっています。こんな変な話はないだろうと思うんですが、日本は今、そういうおかしなことになっているんです」
閉鎖的な業界で、販売側が大きな力を持ってメーカーや問屋を叩くことに、山田氏は長く疑問と憤りを抱いてきた。業界でいち早くネット販売を始めたのは、そんな状況を打破したいという想いもあったからだ。
「そんなおかしなことになっているのなら、僕たちが売り場を提供しようと思ったんです。ネット上には制限がないので、取引しているメーカーさんの商品を全て掲載できることも大きなメリット。今は、例えばペンチだけでも900種類が揃っています」
そして大都は今年、また新たなビジネスにチャレンジする。アメリカ法人を作り、工具を販売するのだ。このチャレンジの背景にも、日本のものづくりを支えたいという志がある。
「内需が落ちているので、今後、メーカーはますます海外にマーケットを求めていくことになるでしょう。しかし職人さんは作るプロであっても、売るプロではない。だから代わりに僕たちが、メイド・イン・ジャパンの優れた製品をDIY大国アメリカに売りに行くんです」
日本の製品は世界で通用する素晴らしいもの。それを世界に広め、販売することは自分たちの使命だと山田氏は言い切る。その言葉にDIYツールへの、そして日本のものづくりへの熱い想いを見た。
逆境を切り抜け、恐れずに新たな挑戦を続ける大都。「サイボウズ Office」は、その挑戦を支えていく存在として、今後ますます力を発揮していくはずだ。