ハウス食品(中国)投資社
香辛調味食品の製造・販売
ご利用規模:約85ユーザー
http://www.housefoods.com.cn/
営業社員同士が、積極的に成功事例を共有する組織に変わりました。
「カレーライスを人民食に」
事業目標を達成するための強い組織づくり
概要
中国で生産・販売されているカレールウ。バーモントカレーは八角風味を加えソースの色味も黄色みにアレンジ現地消費者のニーズに合わせた製品仕立てに。ジャワカレーはより本格的なカレーを味わいたいという消費者のニーズに対応する。
日本式カレーライスを中国で根付かせるために
ハウス食品(中国)投資社は、「カレーライスを人民食に」という目標のもと、日本式カレーライスの文化を中国で普及させている。日本では国民食とも言えるほど広く普及しているカレーライスだが、ハウス食品が進出する前の中国では、カレーライスを食べる文化がなかった。そのため、カテゴリーとして確立されていないカレーライスの市場を、自らの手で作り出しているのだ。
こうした状況から、中国の事業は、カレーを食べてもらう機会を増やすことが中心で、その手法は多岐に渡る。たとえば、株式会社壱番屋と合弁で“CoCo壱番屋”を展開することで、外食で日本式のカレーライスを味わう機会を作っている。
また、幼いころからカレーライスに親しんでもらうため、学校給食のメニューとしてカレーライスを提案。さらに、買い物客にカレーの味を知ってもらうため、スーパーマーケットの店頭では、試食会を開催している。このような、カレーライスの普及サイクルを回すため、各地の営業社員は、企業・工場・学校食堂やレストラン等の業務用チャネルと、スーパーマーケットなどでの取り扱いを促進する家庭用チャネルを両輪に据え、市場開拓に励んでいる。
中国市場を開拓するための組織マネジメントについて董事長の野村孝志氏に、「ガルーン」の導入効果や活用法について、経営企画部 統括部長の堂上貴幸氏にお聞きした。
導入前の課題
中国市場を開拓するため求められる情報共有の仕組み
ハウス食品では、中国語で「敢想敢做」というキーワードを掲げ、営業社員の成長に力を入れている。「自分でやるべきことを判断し、チャレンジする」という意味だ。この言葉のとおり、同社では中国進出当時から、全員が助け合いながら課題に取り組んできた。
「広大な中国では、地域ごとに好まれる食べ物や文化が異なります。そのため、本部のある上海から各地域をコントロールすることは所詮無理なこと。各地域の状況を一番知っている人間が考えて、行動するべきだと考えています。それがカレーライスを全中国に普及していくプロセスなので、人材育成が非常に重要なテーマです。」(野村氏)
ハウス食品(中国)投資社
董事長(とうじちょう) 野村 孝志氏
ところが、販売エリアを拡大し、遠隔地にも社員を配置するようになった2011年頃から、これまでにはなかった課題に直面するようになった。社員の成長には、他の社員の仕事から学ぶことが欠かせないのだが、物理的な距離が生じたことによって、タイムリーに成功事例を共有することができなくなってしまったのだ。その結果、各地で活動するメンバーが個別に似たような課題に取り組むという状況に陥っていた。
「事業所は上海と北京にありますが、それ以外の約20都市には多くの直行直帰タイプの営業社員がいます。事業所のない地域の社員は、普段他の社員と顔を合わせる機会がありません。そのため、自分の仕事を客観的に判断したり、周りの他の人の仕事から学んだりすることが難しい状況でした。また、一体感が醸成されにくいと考えていました。」(堂上氏)
この局面を打開するため、グループウェアの導入が検討された。
導入効果
積極的にノウハウを共有する組織に変化
「ガルーン」を導入してから、搭載されている様々なアプリケーションを活用して離れた拠点との情報共有を日々行うようになった。
まず、タイムカードを出退勤の記録に使っているため、朝一番で「ガルーン」にアクセスする習慣ができた。また、ファイル管理には商品情報や販売情報など、営業活動に必要な情報が登録されている。スケジュールは、活動計画・活動履歴として重宝している。誰が何時どこでどんな商談をしているのか、ひと目でわかるため、マネジメントの観点からも有用だった。
このように業務に不可欠な情報が「ガルーン」に集約されたが、一番の成果は同じ役割を持つ営業社員同士による情報共有が活発になったことだ。野村氏は、「大切なことは、広い中国においても良い事例が出たときに、リアルタイムでその情報が仲間に伝わっていくこと。」と言う。
経営企画部 統括部長
堂上 貴幸氏
「『ガルーン』が今果たしている役割は、“バーチャルなオフィス”です。社員にはモバイル端末を配布しています。それを使って、掲示板を見ると、誰かが新しい情報を出していて、議論の場に自分も参加する中で、徐々に仲間意識やチームワークが醸成されるのだと実感しています。」(堂上氏)
スーパーマーケットの売場取りでは、インパクトのある提案と、その効果を共有することで、中国全土の営業社員が、同様の提案を各地で行うことができるようになった。
また、力を入れている業務用チャネルの営業現場では、カレーライスだけではなく、カレー麺やカレー春巻き、ハヤシ丼など、採用の決め手になった新たなメニューについての情報が営業社員にとって価値がある。販売促進を担当する楊氏は、「自分に足りないところは先輩たちの事例から勉強することで、もっと良いプロモーションができそうだと感じています。」と笑顔を見せる。
健康食品課兼家庭用制品企画部
課長 楊 長慶氏
「空いていた売場コーナーをもらいました」「消費者の目を引くこんな陳列をしました」「このくらい売れました」といった報告をすると、称賛のコメントがずらりと並ぶ。「エクセレント!」「すごいね」「見に行きたい」「頑張れ」「俺たち東北チームも負けてられない」「継続して頑張って」「見習いたい」。
このような経営層や他の営業社員からの反応がモチベーションとなって、今ではまた、営業社員同士が店頭での魅力的な陳列の技術を相互に競い合い、他のメンバーの成功体験を、積極的に自分の営業活動に生かしている。
「『ガルーン』は、自発的にほかの社員と関わろうとすることを、働き掛けるツールです。これだけ情報共有が進んだ背景には、ツールの力があると思います。かつてメールでやっていたときはこうはならなかった。CCで宛先がたくさん入ったメールだと返信はしづらいですよね。送られてきたとしても確認用で、感謝の言葉が送られることはありませんでした。」(堂上氏)
さらに、同社は組織としての力をより強固なものにするため、「サイボウズ大賞」という取り組みを毎年行っている。これは、「ガルーン」の書き込みの仕方や、その内容を評価する取り組みだ。評価の基準は、その新規性や難易度、提案効果、水平展開度に加えて、タイムリーな報告かどうか、他者の模範になるか、といった基準を元に総合的に判断される。この基準は、同社が求める営業社員のスキルとも一致しているため、表彰を目指して一年間活動することで、自然と理想的な仕事のスキルが身につく。社員の成長や、組織としての強さが、グループウェアの活用によって実現している。
「分かりやすい報告を勉強し、人に自分の仕事を知ってもらうという努力は成長につながるので、『ガルーン』を活用した成功事例の共有は良いと思っています。勉強会や研修会をとおして、自立した人材のベースとなる教育をしながら、グループウェアの活用を取り入れることが重要です。」(野村氏)
今後の展望
社員と組織の成長を支えたい
人口規模を擁し、中間所得層が継続的に創出されている中国は、ハウス食品にとって魅力の大きいマーケット。その中で、同社が普及を進める日本式カレーライスは、中国人の熱愛者(リピートユーザー)が徐々に増えており、売上は前年比130%前後で成長を続けている。それでも野村氏は「まだ国民食と呼べるようなレベルではない。」と語る。
「目指すべきところは、子供さんがお母さんに『今日もカレーを作って』というシーンがもっと出ること。それが実現すれば、国民食になったと言えると思っています。
上海市嘉定区にあるカレールウの生産工場。1日およそ11万食ものカレールウを出荷している。
同じ成長率を目指すにも、売上が小さいときと比べ、今のようにある程度規模が大きくなってからの成長にはかなりの努力が必要とされます。今後も前年比130%の成長を続けられるかどうか。ちょうど勝負どころに差し掛かっています。」(野村氏)
今後の中国における取り組みの成否を左右するキーファクターはやはり人財だ。
「中国固有の就業意識や日本との商習慣の差があっても、社員が自身の成長を感じられる職場環境をつくり、人が成長する器でありたいと思います。自分の役割を果たしながら、お互いに助け合えるような組織こそが、私たちの競争力になると思っています。『ガルーン』は、そのためのツールとして今後も活用したいです。」(堂上氏)
日本式のカレーライスを人民食にするための挑戦が続く。
掲載日 2014年7月18日