サイボウズ大阪10周年大感謝祭のとりを飾った「トーク&パーティー」には、抽選で選ばれた300人近いお客さまが参加。サイボウズバーでのドリンク&フードと、吉本新喜劇座長の川畑泰史さんと期待の若手メンバー諸見里大介さんによる爆笑トークを楽しんでいただきました。
「座長の秘訣、教えてください」と題して行われた今回のトークセッションでは、グループウェアのサイボウズらしく〝リーダーとチームワーク〟など合計9つのトークテーマを設定。司会者がボックスの中からランダムにトークテーマを選び、そのお題についてお2人にテンポよくトークを繰り広げていただきました。果たしてどんな話で会場が盛り上がったのか、その様子をご紹介します!
大阪は懐の深い街
みなさん、こんばんは!
みなしゃん、よろしくお願いします。
ずるいぞお前、最初のあいさつは笑わすのなしや、ゆうたやないか~!
しょうがないでしゅよ、これでも普通にしゃべってるんですから。
これで1時間もトークがもつんかいな、心配やわ。
最初のトークテーマは大阪とは?です。
いきなり大きなテーマですな。僕は京都出身ですが、親父が大阪出身なんで、大阪はなんというか〝友だち〟っていう感じですね。諸見里くんは沖縄出身やけど、そのへんはどう?
NSCという吉本の養成所に入るとき、東京と大阪を選ぶことができたんですが、東京は冷たいという勝手なイメージがあったので、大阪にきました。バイトでもみんな気さくに話しかけてくれて、それが沖縄に似てて、とても住みやすいと感じました。
住みやすかったわけや。
はい。もうひとつすごいと思ったのは、〝いじる〟という文化が関西、とくに大阪にはありますね。
沖縄には〝いじる文化〟はないの?
ないですね。いじめに見えちゃいますから(笑)。僕は沖縄にいるときは「アゴ」とか「しゃくれ」とか呼ばれてましたが、大阪では「あれ、フランスパンくわえてんの?」とか言われるんです。するとこっちも「いやいや、これはアゴでしゅよ」と返せるので、そこに笑いが生まれるわけですね。
ひねりがあるわけや。確かに同じ関西でも京都には〝いじる文化〟がないな。高校生の頃、僕はある友だちをいじって人気者にしてあげて、教室中も爆笑させようと思てんのに、ものすごいいじめっ子やと思われとったからね。
飲み屋に見るからに怖そうな〝頭の薄い人〟がいて、僕たちが写真を撮ろうとしたらこっちにやってきたんです。怒られるのかなと思ったら、「暗いからワシのをライトに使え」って頭を差し出してくれました(笑)。
あっはっは。お笑い芸人やなくても、一般の人が自分をネタにするというのも大阪独特の文化やな。人を喜ばすためのサービス精神が旺盛というか、いろんな意味で懐の深い街ですね、大阪は。
新喜劇の座長は美人やお金持ちと同じ!?
うまくまとめていただきました。ではふたつ目のテーマは……
座長とは一体?です。川畑さんは実際に座長をやっていらっしゃるわけですが。
私も今年、新喜劇の座長になってちょうど10周年なんです。(拍手)ありがとうございます。
シャイボウズ(サイボウズ)大阪さんと同じなんですか?
サイボウズやろ。シャイボウズって、なんか気の弱いお坊さんみたいやな。
そもそも、シャイボウズさんの、しかもトークイベントに僕を呼ぶことが間違ってますね。
呼んでいただくのは非常にありがたいんですが、確かに君には「さしすせそ」の少ない会社のほうがよかったかもしれないな。話を戻すと、実は座長になったとき僕は社長になったくらいの雰囲気かと思ってたんです。でも、なってみたら吉本新喜劇の座長は、どうも一般の会社でいうところの係長くらいの感じなんです。自分が経営しているわけではないので、ものすごい下のほうの中間管理職というか。もちろん、誰をメンバーに選ぶかというキャスティング権は座長にあるんですけど。
えっ!? そうなんですか?
だから座長に好かれたら、舞台には出れるみたいな。
知らなかった~。突然ですが川畑さんって、めっちゃカッコいいですね!
現金なやっちゃな。たぶん普通の会社なら、社長が自分の好き嫌いで人事とか決めていたら会社はやっていけへんでしょ。でも、僕らは中間管理職なんでそこまで責任はないし、ある程度ファンもいるので少々ヘタ打っても大丈夫という傘の下にいるわけです。だからついつい好きなヤツばかり集めがちになる人もいてると思います。でも、僕はどっちのヤツにしようかなと悩んだら、あえて嫌いなヤツを出そうと思ってるんです。だからお前けっこう出てるやろ(笑)。
そんな、ひどい!
新喜劇の座長いうのは、ある意味ものすごいきれいな女の人や大金持ちみたいなもんやとも思います。
どういうことですか?
きれいな女の人って、みんなが外見だけで判断してるんじゃないか、性格や頭の中身なんて見てないんじゃないかって、疑心暗鬼になっているわけです。お金持ちにしても、コイツ俺のお金が好きなんちゃうかとか。もちろん、内面が好きで寄ってくる人もいてると思うけど、誰がほんまに自分のことを本心で好いていてくれるのかわからへん。あ、これは僕とまったく一緒やと。
誰がやねん! どこがやねん!
10年も座長をやらしてもらっている以上、いつかはこのバトンを次の世代の人に渡さなあかんわけやけど、座長を降りたときが怖いわけよ。だって、これまで美人だから寄ってきてたのが急にちゃうようになるわけやろ、怖うて怖うて(笑)。
座長を降りたときに、どうなるのか不安なんですね。
オレの本質というよりも、周りの人間の本質が見えてしまうというか。だから座長というのは、つねにドキドキしている存在なんやないかなと思います。
釣った魚をもらうのではなく釣り方を覚えたい
座長って思っている以上に深いんですね。続いてのテーマは……出ました、
このリーダーはあかん!です。
こういうテーマですから、ここだけの話ですよと約束して実名出してもねぇ、出したらすぐにSNSで拡散されてしまうんやろから、諸見里くんからどうぞ(笑)。
エーッ!! そうですね、僕のような下の立場から見ると、感謝をしないというか、やってもらって当たり前という感じの人には、ついていきにくいですね。厳しさももちろん必要なんでしょうが、それだけだとリーダーとしてはちょっと。
なるほどね。あかんリーダーねぇ……、僕は新喜劇に入ってずっとやってきて、座長になったらこれはやめようと思ってたことがあるんです。
どんなことですか?
これは座員側にも問題があるんやけど、座長に魚を釣ってもらって食べさしてもらうのが当たり前と考えてる人が、意外に多いと思うんです。つまり、座長にネタを考えてもらっておいしいとこだけをやって、人気が出たぜイェ~みたいな感じでやってるというか。でも、僕はこれはあかんと思った。誰かに魚を釣ってもらうんやなくて、釣り方を覚えようと。そうすれば、次からはその人に釣ってもらわなくても、自分で釣ることができる。人が釣った魚でもお腹いっぱいにはなるけど、だったら自分が釣った魚でお腹いっぱいになったほうがええなぁと。
なんだか深い話ですね。
だから僕はいろんな先輩たちの〝釣り方〟をずっと見てたわけです。でも他のヤツは釣り方見んと、海のほう向いて口をパカッと開けて、釣れた魚を放り込んでもらうだけ。
まるでヒナみたいですね。
そう。でもヒナは一生ヒナのままで、絶対に親鳥にはなられへんし。だから僕がリーダーというか座長になったときに思ったのが、せこい意味じゃなくて、ただ口開けてるだけの後輩には絶対に何も入れんとこと。
優しさですね。
オレの釣り方がすべて正しいとかは思わへんけども、いろんな人の釣り方を見てきてオレなりに改造して、なるべくいちばん釣れる方法を考えたから、お前らそれを見てくれと。新喜劇の座長やお笑いの人の中には、いまでも後輩に魚を与え続けている人がいますが、今のことだけしか考えずに刹那的にやるのは、リーダーとしてはあかんのやないかと思いますね。
川畑さんにはいろいろ成長させていただきましたが、ひとつだけ言わせてほしいのは、同じミスでも可愛い女の子だとそんなに怒らないのに、ボケキャラの子がミスするとものすごく厳しく怒りますよね。これはリーダーとしてあかんと思いましゅ!(爆笑)
(焦りながら)確かに反省すべき点もあるけど、新喜劇の可愛い子ってとっても損な役回りなんですよ。セリフは長いしお芝居もしなあかんのに、世間的な認知度も低いしギャラも上がらへん。だからそういう子に対しては、もうそこに出てくれてるだけでありがとうという感じ。その点、体張って笑いとらなあかんキャラの子はライバルも次から次に入ってくるし、生き残っていくためにはこっちもしっかり教えなくちゃならへんわけや。
愛のムチやったわけですね。
そう、入りは愛のムチなんやけど、顔見てるとだんだん腹が立ってくんねん(笑)。
落ち込んで得したことは1回もない!
リーダーって、いろいろと大変なんですね。それでは次のテーマは……
落ち込んだときは?です。
僕の場合、落ち込まんようにしているというのが正解かなと。来年50歳になるんですが、今まで落ち込んで得したことは1回もないですからね。落ち込んで得したことってある?
ないですね。暗くなったら、ヘンなことというか、あかんことだけ考えたりしますもんね。
僕は座長になる前に小薮(千豊)くんと一緒に座長になろうということで、5年くらい2人でいろいろと考えて新喜劇つくったりイベントをやったりしてたんです。ところが、小籔くんだけ先に座長になってしまったんです。もう落ち込むには絶好のチャンスだったんですが、僕は落ち込まんかったんです。
それはなんでですか?
落ち込んだって損するから。落ち込んで腹立てたりいじけることは簡単やけど、そこで頑張ろうというパワーを持たなあかんと思うわけです。ひとつコツを教えると、もし落ち込みそうになったら、いろんな人の顔を思い浮かべると落ち込まんようになるんですよ。
へ~、そのときは誰の顔を思い浮かべたんですか?
嫁と子どもの顔と、小薮の顔やったんですよ。というのも、もし逆に僕だけが座長になって横で小薮が落ち込んどったら、僕は喜ばれへんわけですよ。つまり、僕が落ち込んどったら小薮は喜べへんわけやし、隔たりが残るだけ。だったら落ち込んでる場合やなくて、自分も座長になればいいんやと。
支えられている人たちを前向きなエネルギーで包みたい、そんな感じですか?
そのとおり!
チームワークとはひとりひとりの個性を考えていくこと
では最後にサイボウズ社長の青野から質問をさせていただきたいと思います。
吉本新喜劇には個性的な先輩もいれば、若くて未熟な若者もいると思いますが、それをまとめて毎回形にしていかなければならないわけですよね。どうやってまとめていくのか、チームワークのつくり方みたいなものがあったら教えていただきたいのですが。
さすが社長、いい質問ですね。
なに媚びてるんですか!
いやいや、なにがさすがかというと、まさにそこが僕も悩みどころというか、苦しみどころなんです。現在、吉本新喜劇には108人座員がいて、なんばグランド花月に出られるのが20人から多くて25人くらいで、祇園花月が13人と決まってます。たまたま地方公演があったりすれば別ですが、せいぜい40人くらいの座員しか舞台には出られないんです。新喜劇は毎週放送があって数字とかもシビアに出るので、僕はほんまにシンプルに「どういう新喜劇をつくればいちばんお客さまがおもしろいのか」ということだけを考えていますね。だから好きなヤツを使うとか使わないとかは、度外視するしかないんです。
たとえ嫌いな人でも、その人がキーパーソンになると思ったら使うと。
そう、だからものすごく楽しくない1週間もあるわけです。和気あいあいとしたメンバーだけでやったほうが楽しいのはわかってるけど、すごくしんどかった1週間のほうが数字がよかったりすることも多いんです。諸見里くんは次の座長候補の筆頭に挙がってるわけやけど、いまの質問に対してはどう?
仲がいいというのと〝なれ合い〟は違うと僕は思うんです。仲がいいからこそ指摘もできるというのが、本当のチームワークかなと思います。
なるほど。「お前はいつも仲がいいヤツとだけやってるやんけ」といわれても大丈夫なわけや。
そうですね。仲はいいけど、あかんことがあったらそれはそれでちゃんと指摘できる関係ということです。
いや、めっちゃ共感しました。僕はこのあいだ元サッカー日本代表監督の岡田武史さんと対談させていただいたんですが、当時キングといわれていたトップ選手をメンバーから外した理由を尋ねたら、「単純に勝つことしか考えていなかったから」と、まさに川畑さんがおっしゃったことと同じことを話していました。やっぱりシンプルじゃないといけないと思いました。
いやいや、たまたま一緒のエピソードを掘り出してくれはったんちゃいますか? ありがとうございます。
ありがとうございます!
サッカーでは勝利のゴールを決めた選手が新聞の一面を飾りますが、新喜劇でもいちばんぼけたヤツがいちばん目立つんです。でも、実は得点を決めるためにはディフェンダーやミッドフィルダーがいてるし、新喜劇でもぼけるためには突っ込みがいるわけです。チームワークというのはこうしたひとりひとりの個性をみんなで考えていくことなんやなと、自分自身にあらためて言い聞かせたいと思います。
座長からこんな立派なお言葉をいただいたあとに、滑舌の悪い下っ端が言うのもなんですが、シャイボウズとちゃんと言えない僕を呼んでくださって、本当にありがとうございました!
本日は長時間、どうもありがとうございました。