ワークスタイル01
株式会社フロンティアコンサルティング

働き方改革、どこから始めている?社員数200名、オフィスコンサル企業の取り組みに密着

「働き方改革の始め方や、進め方がわからない…」企業で働き方改革をミッションとされている方で、このような悩みを抱えている方も多いと思います。

「未来を拓ける、オフィスがいい」をブランドスローガンに、多数のベンチャー企業から上場企業までのオフィスをプロデュースする株式会社フロンティアコンサルティング。 2017年2月、同社は働き方改革プロジェクト「Fit」(フィット)を立ち上げました。

社員数200名のフロンティアコンサルティングはどのようにして働き方改革を進め、どのように社内を巻き込んでいるのでしょうか? 働き方改革プロジェクトを牽引する同社シニアマネジャーの小野哲さんにお話をうかがいました。

経営課題としておりてきた「労働時間の削減」。仕事が好きな人もいる中で、どう対応すればいい?

小野 哲(おの さとし)さん。株式会社フロンティアコンサルティング シニアマネジャー。働き方改革プロジェクト「Fit」の第2期リーダーを務める。

働き方改革プロジェクト「Fit」が始まったきっかけを教えてください。

会社の成長に伴って、経営課題として上がってきたのが「労働時間の削減」や「社員の健康増進」でした。

「この先も私は働き続けられるのだろうか」と悩む女性社員がいたり、長時間労働がきつくて辞めてしまう男性社員が出てきたりしたんです。離職を防ぐことも現実的な課題でした。

かなりハードな働き方をしていたんですね。

立ち上げの頃は「どベンチャー」という感じです(笑)。創業当初からの数年間はみんな、めちゃくちゃ働いていたんじゃないでしょうか。

さすがにこのままでは良くないということで、「22時には帰ろう」「21時には」「20時には」という感じで徐々に残業時間を削減していきました。

とは言え、そんなにきつく縛っているわけでもないんです。そもそも「労働時間が長いからダメ」とは単純に考えていなくて。

もちろん最低限守るべき部分はありますが、その人に合った労働時間や働き方を探していくことが大切だと思っています。

画一的な働き方改革をする企業が多い中、「人それぞれに適した労働時間は違う」という考えにたどり着いている企業は少ない気がします。なぜそう考えるようになったのか、背景を教えていただけますでしょうか。

もともと仕事が好きな人が多いんです。頑張って成果を出している人に対して、厳しく残業を規制してしまうと、その人たちのやる気を削いでしまう可能性があります。また、「残業するな」と言っておいて会社そのものが潰れてしまっては、本末転倒ですよね。

仕事が好きな人は厳しく縛らないようにする一方で、自分の時間を大切にしたい人も多くいますし、子育てや家族の介護などで働く時間が制限される人もいます。そうした個別の事情に対応していく必要があると考えていました。

プロジェクトの目的は「社員全員が気持ちよく働けるようにすること」。周囲を巻き込める社員をメンバーに選定

(右)中本 はるか(なかもと はるか)さん。株式会社フロンティアコンサルティング の広報を担当しながら、Fitプロジェクトのメンバーも務める。

働き方改革プロジェクトFitの取り組みはどのようにしてスタートしたのですか?

立ち上げの半年前、2016年8月から準備を始めました。各部署の代表を集めて10名弱のプロジェクトチームを作り、Fitの目的を「社員全員が気持ちよく働けるようにすること」と定めました。

プロジェクトメンバーはどのような基準で選ばれているのでしょう?

役職や職種にかかわらず、発言力・影響力があり、人を巻き込んでいけるメンバーを中心に選んでいます。

現場の意見が反映されるよう、営業として数字を持っているメンバーも入れていますし、すべての層の意見を汲みたいという意図で、メンバーも中堅社員だけに偏らないようにしています。

プロジェクトの議論を全社に波及させていくためのポイントかもしれませんね。

なるほど。どれくらいの時間をFitに割いているんですか?

定例ミーティング以外の部分も含めて、業務時間の10から20パーセントくらいはFitのために割いていますね。

ありがたいことに副社長もプロジェクトオーナーとして参加してくれているので、各部署へは「プロジェクトメンバーに割かれる時間を大目に見てね」という通達を出してもらっています。

全社員からアンケートを取り、12の分野にマッピング。優先順位をつけて取り組む

プロジェクトの目的を定め、メンバーを決定した後はどんなことに取り組まれたのでしょうか。

まず取り組んだのは全社員へのアンケートです。ポジティブな言葉が出るよう「フロンティアコンサルティングで気持ちよく働くために必要なことは?」という質問を社員に投げかけました。

各拠点の人通りが多く目につきやすいところに模造紙を置き、「フロンティアコンサルティングで気持ちよく働くには?」への回答を1週間かけて付箋で回答を貼ってもらいました。

付箋は社員が回答しやすいように無記名にしつつ、部署の課題がわかるように部署ごとに付箋を色分けするといった工夫を行いました。

社員から集まった声

全社でブレストするような感じですね。結果はどうだったのでしょうか。

「残業を減らしたい」「社内資料を分かりやすく共有してほしい」「もっと給料がほしい」など、予想を上回る数の付箋が集まりました。普段は聞けないような意見が出てきて、経営層も驚いていましたね。

これをもとに、2~3カ月かけて「なんでこの言葉が出てきたんだろう?」という形で深堀りし、議論を進めていきました。

集まった社員からの声をマッピングした結果生まれたのが、気持ちよく働くために必要なことを洗い出した「Fit Frame 12」です。

フロンティアコンサルティングさま コーポレートサイトより

この中で優先順位を付け、現在は「高い効率性」「良好な社内雰囲気」「全体最適」「働き方の自由」に絞って取り組みを始めています。

なぜ最初にその4項目に絞った取り組みをしているのでしょうか?

12の分野の関連性を整理した結果、この4項目を整えることが他の8項目の実現につながると判断したためです。

「Fit Frame12の関係性と経営課題の解決」より抜粋。下の4項目から段階的に進めていく。

例えば、「高い効率性」が担保されれば、生産的な働き方ができるようになり、自ずと「健康の実現」「プライベートの充実」などにもつながっていきますよね。

また、「良好な社内雰囲気」の土台ができていれば、「心理的フォロー」もしやすくなりますし、「貢献実感」も湧きやすくなります。

いきなりすべての取り組みから始めるのではなく、段階的に取り組むことで相乗効果が生まれるはずです。上に挙げたテーマが進めば、最終的な理想像である「モチベーション」「いい将来」「組織への満足感」へもつながっていくと思っています。

業務フローの見直しと、ITツールの活用をセットで進める

ロジカルに進めていらっしゃるんですね。「高い効率性」「良好な社内雰囲気」「全体最適」「働き方の自由」の分野で、具体的に取り組んでいることはどんなことでしょうか?

「高い効率性」を実現するために、業務のあり方を抜本的に考え直すことに着手しました。

業務が減っていないのに残業だけ規制しても、根本的な解決にはなりません。そこで、1日8時間×20日、月160時間の中で、定時退社しても100パーセント完結できる業務フローや目標設計を考えました。

業務改善に真剣に取り組むと、日々の仕事の中に「実はこれ、無駄だったんじゃないか」とか、「この業務は必要なんじゃないか」という発見があります。

まだ目に見える成果は出ていませんが、引き続き業務のあり方を根本から見直すことは続けたいですね。

ルールで縛るのではなく、まずは根本から見直す。大切なことだと思います。

そうですね。業務フローの見直しに加え、「高い効率性」を実現するためのツールとして業務改善ツールのkintoneも導入しました。

弊社では働き方改革にはツールも重要だと考えています。業務の進め方が日々変わる状況にある中で、変化に柔軟に対応でき、必要なツールを自分たちで取捨選択していけるkintoneに可能性を感じました。

社員へのアンケートでは「提案資料を共有したい」という声がかなり多かったので、まずはファイル管理としてkintoneを活用することを目指して取り組みを進めています。

提案資料を社内のサーバーに置いているのですが、今は正直なところ担当しか必要な資料を見つけられない状態なので、改善していきたいですね。

また、kintoneでは全社ベースでの発信も行なっています。kintoneを導入したことにより、少しずつではありますが、個人の中に眠っていた情報を引き出したり、社員間の関係性が強化されたりという効果が出てきていると思います。

新しいツールを導入する際には「活用してもらう」までの壁があることも多いと思います。フロンティアコンサルティングではこの壁をどうやって乗り越えているのでしょうか。

確かに、いきなり導入してツールを渡すだけではなかなか活用されないと思います。私たちはkintone導入にあたり、3つのフェーズを設定しました。

「慣れるフェーズ」、「義務的に使うフェーズ」、「基幹システムを含む外部システムと連携するフェーズ」に分け、順序立てて取り組んでいます。

今は「慣れるフェーズ」なので、全社のファイル管理やFitからのお知らせなど、簡単に始められる用途でkintoneが浸透するように進めています。

Fitを進める上で他に活用しているITツールはありますか?

kintoneを導入する前は「Google+」を社内SNSとして使い、各拠点の取り組みを共有していました。コストをかけず、スムーズに動き出すために無料のウェブサービスを活用するのは有効だと思います。

ウェブ会議にも最新デバイスを活用できるよう、さまざまなツールのトライアルを進めています。ウェブ上にホワイトボードを設置できる「RealtimeBoard」は離れた拠点同士のコミュニケーションに重宝していますし、ウェブカメラを自由に動かして視点を移動させてくれる「kubi」などもトライアルを行いました。

働き方改革を進める上で、ツールを上手に活用することは大切ですね。

業務フロー改善やツール活用だけでなく、風土作りにも着手

業務の見直し、ツールの導入以外に取り組まれたことはありますか?

「良好な社内雰囲気」づくりに着手するために、社内イベントの開催を企画し、実行しました。以前は会社としての公式なイベントが少なかったんです。

どんなイベントを開いたのですか?

今年の7月には七夕イベントを開催しました。事前にみんなの夢を書いてもらい、選ばれた2つを叶えるという内容です。

すごい! テレビ番組の企画みたいですね。

盛り上がりましたよ。叶えた夢の1つは広報担当の社員が出した「カメラの技術を高めるために講座に通いたい」というもの。もう1つは営業部門の社員が出した「家族とアメリカ支社に行きたい」というものでした。

社員から寄せられた七夕の願い事

もちろん叶えられる夢にも限界があるとは思いますが、自己成長につながるような願いごとを出してもらえたらうれしいですね。このイベントは、できれば毎年やりたいと考えています。

受け身ではなく、働き方改革を自分ごと化することが重要

業務の見直しから社内イベントまで様々な取り組みをしていますが、社員のみなさんにFitの取り組みが浸透している実感はありますか?

個人的には、まだまだだと感じています。働き方改革は、みんなが自分ごと化して考えていなければ進まないと思うんです。

正直なところ、社員の中には「お膳立てされた制度に乗っかればいい」「用意されたツールを使えばいい」という受け身の姿勢があることは否定できません。

能動的にいろいろと動いてもらえるように「アプリ開発レクチャー会」を週1で開催する取り組みも行っています。

最後に、オフィスのコンサルティング会社として、企業の働き方をどのように変えていきたいか教えていただけますでしょうか。

私たちは「未来を拓けるオフィス」を提案する会社なので、働き方は必然的に連動していくもの。そのためには私たち自身が働き方改革に積極的に挑戦していく必要があります。

一つひとつの施策では失敗があるかもしれませんが、その経験も生かせるはずです。

私たちが位置する建築関連の業界では、働き方改革の波がなかなか広がっていない現状があり、ある種の「あきらめムード」もあると感じています。

でも、日本の大多数を占める中小企業から変わっていかないと、企業の働き方は変わらないと思うんです。

当社のような中小企業から取り組みを動かし、発信していくことで、建築業界の企業としても、中小企業としても、他社に良い影響を与えていきたいと考えています。