ワークスタイル04
株式会社コラボスタイル

「まずは40点を目指そう」中小企業の社長が語る、リモートワークの管理と評価のコツ

働き方改革の文脈でよく取り上げられるリモートワークですが、いざ自社に導入するとなると、躊躇してしまう人も少なくないはず。「離れた場所にいるメンバーをどう管理するのか」「評価制度はどのように運用していくべきなのか」……。

Webワークフローシステム「コラボフロー」を展開するコラボスタイルでは、15名のメンバーが東京、名古屋、大阪、京都の4拠点に分かれ、リモートワークを軸にしながら商品開発を進めています。

リモートワークを導入する際の心構えとは? 評価はどのようにしているのか? コラボスタイル代表取締役社長の松本洋介さんにお話を伺いました。

いきなりホワイト企業になるのは無理。まずは40点でもいいから始めてしまおう。

コラボスタイル代表取締役社長 松本洋介さん。

——ワークスタイル百科の読者の中には、リモートワーク導入を検討しつつも、「どう管理すればいいのか?」「評価はどうするのか?」というところで躓いている人が多いんです。そんな中、コラボスタイルでは各地の拠点に分かれて仕事を進めているとうかがいました。

松本:東京に5人、名古屋に6人、大阪に2人、そして京都府の舞鶴市に2人という形で、分散して「コラボフロー」の開発を行っています。

本社所在地は東京なのですが、小さな会社なので、わざわざ出張費をかけて大阪へ打ち合わせに行くのは大変です。なので、創業当初からSkypeなどを使って社内ミーティングをしていました。

——リモートワークを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

松本:能力と経験があって「一緒に働きたい」と思った人が、たまたま東京ではなく大阪と舞鶴にいたことがきっかけですね。

最初は「東京に来ない?」と誘って、実際に3カ月ほど本社で仕事をしてもらっていた時期もあったのですが、そのうち、「子どもが中学校に上がるので一緒にいられる時間を増やしたい」「親の介護が必要になった」といった声があがるようになって。「それならリモートワークしよう」ということになりました。

——松本さんが意図して体制を作ったというよりも、社員のみなさんの希望を叶えていくうちに自然発生的にリモートワークが広がっていった感じなんですね。

松本:そうですね。ただ、ベンチャーということもあって、以前は長時間労働が発生してしまうこともありました。

サイボウズさんの制度なども参考にしてみたのですが、弊社のような中小企業で実現するには経営的な余裕がなく、ハードルが高いと感じました。

いきなり100点のホワイト企業を目指しても経営が傾いてしまいます。そこでまずは、「健全なグレー」を目指して、「健全な経営が続けられる範囲で、メンバーが働きやすい環境を用意しよう」と思いました。

「40点でもいいから、できることから始めてみよう」という考えで、今のような制度にしています。

——なるほど。リモートワークの効果は感じていますか?

松本:はい。リモートワークはメンバーにモチベーションを高く保ってもらうメリットがあるのはもちろん、「オフィスにかける固定費を減らせる」というメリットもあると考えています。

例えば弊社の大阪事業所の場合、昨年までは6人くらいのメンバーが余裕を持って働ける賃貸物件に入居していましたが、全員が常にオフィスを使うわけではないので、今は退去してコワーキングスペースに移行しました。

——出張費やオフィスの費用を減らせるという視点もあるのですね。「各人が自由に働ける」というのは魅力的ですが、会社としてのデメリットはないのでしょうか?

松本:ゼロではありません。例えば「自分は朝が弱いので夕方から深夜に働きたい」と言われた場合、多様性を考える上ではそれに応えていくべきでしょうが、会社としては深夜割増賃金を払わなければいけないという現実的な問題もあります。

でも、そうした法的な制約とも向き合いながら、経営者は手探りでもいいから多様性を保つためにできることを見つけていかなければいけないと思うんです。経営者の仕事は、メンバーにモチベーションを高く保ってもらい、高いパフォーマンスを出してもらうことですから。

人事評価は「働き方によって差をつけない」ことが基本

——リモートワークをする人が多い組織を運営していくために、どのような工夫をしているのでしょうか? ワークスタイル百科の読者が一番気になるのが、「リモートワークの評価」の部分です。

松本:リモートメインで働く人、ときどきリモートワークをする人、基本的に出社する人。どの働き方であっても「評価は基本的に変わらないよ」というメッセージを出しています。「リモートワークのほうが成果を出せるなら、リモートワークのほうが僕はうれしい」とはっきり社員に伝えています。

——多くの企業では、「社内の同じ空間で働いていないと管理や評価が難しいのでは……」という懸念があると思います。コラボスタイルではこの問題とどう向き合っていますか?

松本:おっしゃる通り、リモートワークは管理が難しい。これは事実だと思います。でもよくよく考えてみると、社内にメンバーがいたとしても同じなんですよね。目の前のデスクに座っている人がPCで何をやっているかなんて、わかりますか?

——たしかに、メンバーが目の前にいても、パソコンでネットサーフィンをしているのか仕事をしているのか、わからないですね……。

松本:そう、「目の前にいるから管理できる」というものでもないんです。仕事が円滑に回っているかどうかは「目の前にいるか・いないか」ではなく、メンバー同士のアウトプットでわかるものだと思います。

——なるほど……。ということはコラボスタイルでは基本、アウトプットベースで評価が行われているということでしょうか?

松本:アウトプットとプロセス、両方見ていますね。評価に関してはまだ試行錯誤を繰り返している段階ですが、働く時間を一切見ないようにしています。

時間を評価基準に入れてしまうと、「効率悪く働いたほうが評価が高くなる」ということが起きてしまいます。僕の場合は逆に、本来10の時間がかかるものを3の時間で完遂したメンバーを評価します。

ただ、完全成果主義というのは言うほど簡単ではなくて、何をもって成果とするのか、経営者としてもぶれる場合があります。なので弊社では、仕事のプロセスも最終的な人事考課を通じて評価しています。目標に対してどうだったか、チャレンジしてどうだったのか、社長と社員の1on1でフィードバックしています。

社員数が15名だからできることなのかもしれませんが、今後どんな規模になったとしても、社員みんなが納得できる制度や働き方を形にしていく姿勢は忘れないでいたいですね。

どんな仕事も8割はそこまで重要ではない

——他にリモートワークで仕事をする上で、工夫していることはありますか?

松本:うちは申請や承認のシステムを作っている会社ですが、リモートワークに関しては申請制にしていません。申請制にすると、敷居が高くなってしまって利用しにくくなってしまいますからね。

——「リモートワークを申請制にしない」というのは他の企業にとっては驚きだと思うのですが、どのような背景があってこのような形にしているのでしょうか?

松本:基本的に僕は「8割の仕事はそこまで重要な仕事ではない」と考えています。「リモートワークをします」という申請と、「大事な案件なので特価を出したいです」という申請だったら、後者の方が明らかに重要ですよね。

そこまで重要ではない8割をなるべく効率化して、本当に大切な2割に労力をかけていきたいと思っています。

——御社では申請や承認を効率化するワークフローのソリューションを提供されていますが、その事業にも「8割を効率化させたい」という思いが背景にあるのでしょうか。

松本:はい。ワークフローは経営にとっても、働く人にとっても根っこにある重要な部分ですが、ここが弱い会社は非常に多いです。

例えば紙の存在。「紙の申請書を出さなければいけないので会社に戻らければいけない」というのは非常にダサいことだと思っています。そういう大事ではない8割の業務を少しでも楽にしたくて、「ワークフロー改革」に取り組む会社を立ち上げました。

——ワークフロー製品「コラボフロー」を活用して業務改善につなげていく方法について教えてください。

業務改善プラットフォームkintoneや、グループウェアと連携するコラボフロー

松本:コラボフローを利用すればいつでもどこでも迅速に申請や承認ができるようになるので、生産性が高まります。また、コラボフローは「工程を大切にできるツール」だと僕は感じています。

僕はいろいろな物事を迅速に判断するようにしていますが、経営者が間違えた判断をしてしまうこともありますよね。

そのときにコラボフローで誰がどんな承認をしたのかを残しておくことによって、「この成果物を生み出すためにどんなプロセスを経たか」「なぜ間違いが起きたのか」という分析ができるようになります。業務の工程を見える化することで、何かあった時にも振り返りやすくなると感じています。

社内にはびこる「お伺いストレス」は、ITで解決できる

松本:2つ目は、「“お伺いストレス”を解消できる」ということでしょうか。

——「お伺いストレス」?

松本:部下が上司に判断を求めるときに、上司は自分でも調べて答えを出す必要がある場合も多く、すぐに回答できないことがあります。上司も人間なので、相談された件についてすっかり忘れてしまうこともある。

そうやって回答が遅れると、部下は「お忙しいところ恐縮なのですが、あの件はいかがでしょうか?」と何度もリマインドしなければいけません。

——すごく分かります……。気を遣うので、ストレスがたまりますね。

松本:これが繰り返されると、部下はそのうち「お伺いを立てること」そのものが嫌になってしまうと思うんです。リマインドされてばかりの上司側も、「お伺いを立てられること」が嫌になってしまうかもしれない。これを僕は「お伺いストレス」と勝手に呼んでいます。

——このお伺いストレスをどうやって解消するのでしょうか?

松本:コラボフローなら、決裁されていないものは自動的に3日後、1週間後と部下の代わりに上司にリマインドをしてくれるので、部下はお伺いを立てる必要がありません。ビクビクしながら上司の返答を待つといった、精神衛生上良くない時間を過ごす必要もありません(笑)。

分かっているのに解消できないお伺いストレスというものが、世の中にはたくさんあると思います。そうした事柄もITで自動化できれば、仕事をどんどん楽にしていける。その取り組みが、結果的には働き方改革と呼ばれるものにつながっていくのかもしれないな、と思っています。

——たしかに、ITツールが自動でリマインドしてくれるだけでもストレスは減りますね。働き方改革が叫ばれていますが、コラボスタイルでは今後どのように世の中の働き方を変えていきたいと思っていますか?

松本:僕はとにかく「会社に変なルールがあるために、時間がかかったりストレスが高まったりする」のが嫌なんです(笑)。だから、そういうストレスをなくす世の中にしたいと思いますし、そういうストレスをなくす製品を作っていきたいと思っています。

——分かっていてもなかなか変えられない無駄やストレスを抱えている中小企業も多いと思いますが、そんな企業の担当者にメッセージをお願いします。

松本:「間違ってもいいから、一歩踏み出してみよう」というマインドでしょうか。経営者が意を決して何かに取り組むのであれば、失敗からの学びも含めて0点という結果にはならないでしょう。

スモールスタートでさっさとやり、走りながら見直す。100点を求めるのではなくて、40点でもいいからやってみようというスタンスが大切だと思います。

これは経営層だけでなく、現場にも言えますね。「どうせ変わらないから」とあきらめるのではなく、現場の思いを経営者に伝える努力をして、一歩踏み出すきっかけを作ってみてはいかがでしょうか。