ワークスタイル06
株式会社USEN

「ゴールが見えなくてもまずは始める勇気を」働き方改革は、全社で始めなくてもいい

2018年1月から始まる通常国会で「働き方関連法案」の成立が見込まれるなど、すべての企業において働き方改革への取り組みが急務となってきました。しかし、いまだに「どのように進めればよいのかわからない」と悩んでいる企業も少なくありません。

そうした中、USENでは、企業それぞれに最適な働き方改革を実現するためのツールやノウハウを提供しています。働き方改革で企業がつまずきやすいポイントはどこか?ネットワークインフラやクラウドサービスなどを活用したソリューションビジネスを展開する ICT事業部 アプリケーションセールス部の大下さんに話を聞きました。

みんな「何から始めればよいかがわからない」という課題を抱えている

大下 幸一郎さん。株式会社USEN ICT事業部 アプリケーションセールス部 部長。「家族の応援がある働き方は、仕事の活力につながる」と、企業の働き方改革を積極的に支援する。

有線放送事業でトップシェアを誇るUSENですが、改めて会社のご紹介と大下さんが統括するICT事業部 アプリケーションセールス部の事業内容についてお聞かせください。

USENは全国に約150拠点、従業員数約3,000名の企業です。創業50年を超える音楽配信事業だけでなく、業務用システム事業や法人向けICT事業も行なっております。

その中で私が所属しているICT事業部は全国の法人のお客様へ、ネットワークインフラからクラウドサービスまでまとめてご相談にのれるマルチサービスベンダーとして展開しています。

いま働き方改革が話題になっていますが、USENのお客様はどのように取り組んでいらっしゃいますか。

私たちのお客様は社員数300名未満の中小企業が約7割を占めており、メインは企業のITマネージャーです。

彼らは経営層から働き方改革に取り組むことを求められていますが、「何から始めればよいかがわからない」「他社がどう取り組んでいるのかを知りたい」という悩みを抱えています。

そうした企業が働き方改革を進めるにはどうすればよいのでしょうか?

働き方改革には、企業の価値観としての「風土」、在宅勤務や評価などの「制度」、生産性を高める「ツール」、という3つの要件があるとサイボウズは説明していますが、私たちはこの考え方に共感しています。

風土の上に制度とツールが乗っており、風土を変えるには経営層のパワーが必要です。制度を変えるのは人事・総務などの管理部門、そしてツールを導入するのがITマネージャーの役割です。

私たちが接触するITマネージャーに対しては、働き方改革に取り組むには制度や風土など自社の「文化」を理解し、「文化をITツールに合わせる」か、「ITツールを文化に合わせる」か、それを見極めることが第一歩だと説明しています。

「文化をITツールに合わせる」「ITツールを文化に合わせる」とは具体的にどういうことでしょうか?

経営層が新たな施策に積極的に取り組むような企業の場合は、導入するITツールに合わせて、柔軟に業務を変えていくことが働き方改革の近道です。

これまで紙で行っていた申請を、従来のやり方にこだわらず電子化していくなどがその一例です。

一方、従来の業務や風土を優先する企業の場合は、文化に合わせたツールを選ばなくてはいけません。例えば、メール文化が強いのであればメール文化を残しながら効率化するツールを選んだ方が、働き方改革はスムーズに進みます。

ゴールが見えなくてもまずは始める勇気を

働き方改革を進めるうえでITツールの導入は大きな役割を果たしていますが、いざ働き方改革に取り組もうという段階になって、つまずいてしまう企業も多く見られます。つまずきやすいポイントなどはあるのでしょうか?

つまずく企業には特徴が2つあります。1つは、取り組みのゴールが二転三転したり、そもそもゴールの設定が最後まで不明確だったりする企業。

2つ目は、改革をする中で従来よりも不便になる点の許容が難しい企業です。

働き方改革は変化をするということなので、従来通りではいかないことが出てくる可能性がありますよね。

はい。働き方改革に取り組むと、業務プロセスは必ず変わります。従来よりも優れている部分が多大にあったとしても、最初は劣る部分も出てきます。その部分を許容することができなかったり、文化を変えることに抵抗が強いような企業はつまずくことが多い印象です。

変化に柔軟な企業の方が進みやすいということですね。

そうですね。また、知らず知らずのうちにITマネージャー自身が働き方改革をつまずかせてしまっていることも稀にあります。

ITマネージャーは仕事が多忙で、一これ以上の業務負荷は避けたいと思っています。「長い目で見ると業務効率化ができるのはわかるが、いまの仕事を増やされるのは困る」というスタンスのままだと、改革はなかなか難しいのが実情です。

なるほど。「働き方改革のゴールが定まっていない企業」も多くいらっしゃると思うのですが、そういう企業に対して何かアドバイスをいただけますでしょうか。

ゴールが定まっていない場合は、いま見えている困っていることの中から小さなゴールを設定し、まずはそこから取り組んでみてはいかがでしょうか。

例えば「スケジュールが共有できていない」「多拠点のコミュニケーションが繁雑化している」といった、コミュニケーションをシンプルにするという課題を解決するだけでも、結果的に働き方改革につながることもあります。

大切なのは、ゴールが見えなくてもまずは始める勇気を持つことです。

社内の連絡をスムーズにする、属人化をなくして休暇を取りやすくする、などのレベルでも良いのですね。

もちろんです。 例えば部門をまたがるプロジェクトで仕事をするとき、社内でメーリングリストを作成して情報共有をする企業が多いのですが、結果的に1日100通以上受信するなどメールのやり取りが煩雑になっていることがあります。

その社内向けメーリングリストをグループウェアの掲示板に変えるだけで、過去にどんな活動を行ったのかが記録として蓄積されていきます。

そうすれば入社歴が浅い従業員の方でも検索すれば過去の履歴が出てきますので、自然と同じような質問と回答を何度もやりとりすることなく、効率的に業務を進めることができます。
内線が20回鳴るなら、コミュニケーションツールを導入した方が良いと僕は提案していますね。

確かに、社内からの同じような問い合わせで困っている会社は多そうです。

はい。他にも、外出先からでもメールやスケジュールを確認できるようにする、ビジネス版のチャットを導入して会話のハードルを下げるなど、そういう小さなことから始めていけばいいのではないでしょうか。

業務の属人化で悩んでいる企業であれば、社内の情報や判断基準をどんどん定型化する、オープンにするというだけで、働き方改革につながっていくと思います。

働き方改革に挑戦中のUSEN。すでに効果が得られた取り組みも

USEN自身が取り組んでいる働き方改革についても、ご紹介ください。

USENでは、2014年9月より『USEN Work Style』の推進を掲げて、時短期間の延長や保育補助金の導入をはじめとしてプレミアムフライデーの実施など、多くの制度が誕生しています。また、働き方改革は、部署単位でも取り組んでいます。

会社だけでなく部署で取り組むというのは良いですね。どんな取り組みでしょうか?

出産を控えた社員のために、在宅ワークができる環境を整えました。当時その社員は、通勤ラッシュが負担になることから時差勤務をしていました。

ちょうど既存のお客様へのフォローアップをもっと強化したいと考えていた時期でしたので、関係各所へ相談した上で、フォローコール業務をマニュアル化し、在宅で電話サポートができるようにしたんです。

具体的にはどのようにしてその環境を整えたのでしょうか?

業務効率化ツールのkintoneでフォローコールのフォーマットを作成し、コールの内容を選ぶだけで入力が完了するような仕組みを構築しました。こちらがその画面です。

フォローコールアプリの実際の画面。お客様の利用サービスや状況を選択するだけで入力が完了する仕組みになっている。

確かに、これなら選択肢を選ぶだけで入力が完了しますね。

はい。在宅で働く社員がフォローアップのために電話をした内容を入力すると、オフィスにいる上長がその状況をリアルタイムに確認できるというものです。自動集計もできるので、離れていてもフォローコールの状況がすぐにわかるようになっています。

kintoneの集計画面。日毎にどれくらいコールしたかが一目瞭然になる。

クラウド上で状況がリアルタイムにわかるのは良いですね。

はい。この取り組みは、始めてすぐにフォローアップの成果が数件得られ、結果的に売上アップにも貢献しています。

他にも産休だけでなく、介護によってオフィスに出社できない、あるいは地方の実家に戻らなくてはいけない、といった社員のテレワークも既に始めています。

ほかにも働き方改革への取り組みはありますか?

ICT事業部内の取り組みとしては、20時を過ぎるとオフィスのPCが強制的にシャットダウンされるようになっています。当初は業務への悪影響も懸念され、社内からは反対意見もありましたが、実際に導入してみると、うまく運用できています。

また、社外からオフィスのシステムへセキュアにアクセスできるインターネットVPN環境を用意しているので、オフィスにとらわれない働き方を実践できてきました。

近隣の拠点をサテライトオフィスとして利用できますし、直行直帰も推奨されているので、業務報告のためだけにわざわざオフィスに戻ることがなくなりました。

あとは、プレミアムフライデーも実践していますね。

賛否両論あるプレミアムフライデーですが、実際のところどうなのでしょうか?

金曜の午後から家族サービスができるので僕はとてもありがたいと思っていますね。

プレミアムフライデー当日は僕が保育園に迎えに行き、そのまま家族で外食を楽しむなど、ゆったりとした時間を過ごすことができています。

早く帰宅することで子どもとお風呂入ることができる、この1時間はとても貴重で自分のモチベーションの1つにもなっています。

最後に、企業の働き方改革を支援するUSENの抱負を聞かせてください。

働き方改革を提案する立場ではありますが、私たち自身にもまだまだ課題は残っています。だからこそお客様の目線に立って、働き方改革を一緒に進めていきたいです。

サイボウズ製品をはじめとする便利なツールが数多く存在するにもかかわらず、どのように取り組めばよいかわからないという企業が少なくありません。

それぞれのお客様の文化や現状に応じた提案を、複数のクラウドサービスを組み合わせて提示できることが私たちの強みです。

そうしたさまざまなツールを組み合わせながら、ベンダーニュートラルの立場でお客様に最適な働き方改革を提案していきたいです。

12月1日からは、株式会社USEN ICT Solutionsという事業会社としてスタートを切ります。これまで以上に、『お客さまと共に歩むグッドパートナー』としての成長を続けていきたいと思います。そのためにクラウドサービスを適材適所にコーディネートする「イノベーション・プロバイダー」になることが、私たちの存在意義だと考えています。

新たなスタートですね。本日はお忙しい中、ありがとうございました。