ワークスタイル08
株式会社HDE

ビデオ会議が聞こえない、家族の理解を得られない…多様な働き方を試したからわかったこと

「テレビ会議で議論に追いつけない」「フリーアドレスにしたら、社員の場所が把握しづらくなった」ーーセキュリティサービスの開発、販売を手がける株式会社HDE(以下、HDE)では、新しい働き方に挑戦してきたからこそぶつかった課題があると言います。

新しい働き方に挑戦してみてわかった不便な点とは?なぜまどろっこしい部分をそこまでして体験するのか?多国籍な社員が多く在籍することでも有名な、株式会社HDEのお二人にお話を伺いました。

学生からの認知度が低いー採用難がきっかけで開始した外国人採用

宮本和明さん。株式会社HDE代表取締役副社長。

HDEはセキュリティサービスを取り扱う会社でありながら、外国人採用や在宅勤務など、多様な働き方に積極的にチャレンジしていますよね。

ワークスタイル百科の読者の中には、多様な働き方を取り入れたいと思っているけれどなかなか一歩踏み出せないという方も多くて。HDEは外国人エンジニアの採用も多いようですが、まずその経緯からお伺いしてもよろしいでしょうか。

きっかけはエンジニアの採用難でした。我々はBtoBのビジネスをやっているということもあり、学生からの認知度が低いことが課題でした。

ゲームやニュースサイト、SNSは触ったことがあっても、多くの学生はBtoBの製品に触れたことがないため、若くて優秀な学生やエンジニアになかなかリーチできなかったんです。そこで、海外での採用を模索し始めたのが4年くらい前です。

採用は意外にも上手くいき、海外の優秀な人材が来てくれるようになりました。私たちが思っている以上に、東京という街は海外の人材には魅力があるようで、我々はオフィスが渋谷にありますけど、「渋谷?知ってる、知ってる」「アニメにでてた」「109のビルのあるところ」と話が広がります(笑)。

「秋葉原は近いのか」と聞かれることも多く、「近い」と回答すると、海外の優秀な学生は食らいついてくるという幸運もあります。

今は社員の20%ほどが海外から採用した人材で、一番多いのがインドネシア、次にタイ人、ほかにはロシア、台湾、中国、韓国、スイス、コロンビア、イギリス、USなど様々な国の社員が集まっています。

本当に多様な国籍の方がいらっしゃるんですね。ということは、社内の公用語は英語ですか?

もちろんです。3年ほど前から、2年後に公用語を英語にすることを社内で推進してきました。新しく採用で入ってくるメンバーは日本人であっても、英語力を前提にしています。

TOEICの費用は会社で負担しますし、Skypeを活用した英会話レッスン料やセブ島への語学留学のサポートも行っています。

ビデオ会議が聞こえない、家族の理解を得られない…多様な働き方にチャレンジしてぶつかった課題

HDEのフリーアドレスフロア。ガラスの奥には電話禁止の集中スペースがある。

HDEでは、在宅勤務やフリーアドレスなど新たなワークスタイルを次々に試されていると思うのですが、それはなぜなのでしょうか?

我々自身がcybozu.comやOffice365など、クラウドサービスへのアクセスのセキュリティ分野をサービスとして提供しているので、オフィスにとらわれない働き方をする企業が増えることは、ビジネスチャンスになります。

新しいワークスタイルは、試してみないとわからない部分や発見できない部分があるので、まず我々自身が家で働いてみたり、オフィスのないところで働くことで、お客様への提案の幅を広げたいという意図になります。

多様な働き方というと聞こえはいいですが、それまでの働き方よりも不便になってしまう点も出てきてしまうのでは?

汾陽祥太氏さん 株式会社HDE 執行役員 社長室所属。プロジェクトでよく海外に滞在することが多い。

それはありますね。例えばビデオ会議でも、実は思ったほどシームレスなコミュニケーションができないことがわかってきました。

私は最近までずっとタイにいたのでタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアから営業の会議に参加しましたが、1対10くらいのビデオ会議になると、「通信が悪くて聞こえなかったよ」と言っても会議がどんどん進んでいってしまったりします。リモートでレポーティングはできるけども議論はちょっと厳しいなというのが印象です。

なるほど。それは困りますね。

また、「在宅勤務は家族の理解を得られないと難しい」ということもわかってきました。例えば、奥様が育休中の時に在宅勤務をしていると、「お父さん家にいるなら手伝ってよ」と家事を頼まれてしまうケースがあります。

在宅勤務などの制度を実践している企業はまだ少数派なので、配偶者の方に理解されにくいのかもしれませんね。

そうですね。家ではご家族に中断されてしまって集中できないので、結局カフェやオフィスで仕事をしているメンバーもいます。

あとフリーアドレスも試しているのですが、社員がどこにいるかわからなくて不便になっています(笑)。

口頭で相談したいときは、まずチャットで「今どこにいる?」と聞いてからでないとわからないので、以前よりタイムラグがあると感じています。

なかなか具体的なエピソードですね。それでも、新しい働き方に挑戦するのはやはり「試すこと」を大切にされているからでしょうか?

そうですね。今後は色々な働き方が増えていくので、自分たちがまず試してみることで、どういう弊害と効果があるのかという部分が見えてきます。

「リモートの会議は議論しづらくて不安なんだな」とマネージャー自身が経験することが大切です。その上で、自分たちの製品にフィードバックできればと思っています。

まずは不便さも含めて、自分たちが経験してみるということが大切なのですね。逆に、新しい働き方を試したからこそ良くなった点などはございますか?

リモートで働いてみてはじめて「時間と場所を共有する」ことの重要さを再認識しました。その分、リアルな会議やWeb会議でも時間を貴重に使うようになりましたね。

リモートで働く前は、会議でもざっくり1時間…と設定していたので、だらだらと長引きがちでした。

今はオーナーが「15分ですむ」とオンラインでのミーティングを設定すると、オンラインでどうやったら効率よく回るかを考え、事前にアジェンダと主旨を徹底的に浸透させます。

なぜ集めたのか、何を結論として見出したいのか、何が課題なのかが事前にわかってミーティングに参加するので、短い時間で濃い内容を議論できるようになりました。

制度にぶら下がる社員がいたら、率直に話す

それはいい変化ですね。現在は様々な働き方を試している段階だけに、すべてを制度化しているわけではないとことですが、今後もあえて制度化せずに、柔軟な姿勢をずっと続けていくことが前提になっているのでしょうか?

まだ当面、試行錯誤を続けていくと思いますね。ダイバーシティの会合に出て、他の企業の取り組みを聞くこともありますが、「これが正解だ」というのには至ってない気がします。

企業の規模によっても正解は異なると思いますし、私自身、正解がまだ出ていないという感触があるので、まだ試していく時期なのかなと思っています。

制度化せずに、いろいろな働き方を試す場合、人事評価はどのようにされているのですか?制度化されていないと、なかなか評価が難しいように思えますが。

そこはまさに難しいところです。制度化の有無に限らず、オフィスにいる時間だけでは評価できないので、今のところはオーソドックスに目標を立てて、目標の達成度を測るMBO(目標管理) という形を採っています。

例えば、「在宅勤務が認められているから全く出社してこない」というように、制度にぶらさがってしまうような方はいないのでしょうか?

確かに「彼は全く出社してこない」というような話がチーム内で出ることもありますね(笑)。

そのときは、チーム内の上下で率直に話をして解決しています。「出社してこないと具体的に何が困るんですか?」「こういう面で●●さんが困るんだよ」と。「それは成果が上がるやり方なの?」というコミュニケーションをコツコツとやっていくしかないと思います。

権利を行使をするかしないということはなくて、どうすれば個人として、チームとして、会社として成果を上げるかというところの対話をしっかりすればよいと思っています。

多国籍な社員と仕事を円滑にするためには

御社には様々な国からの社員がいらっしゃいますが、多様なメンバーと働く中で、価値観の違いを感じることはありますでしょうか。

それはもう毎日ありますよ(笑)。飲み会でも、イスラム教の人は豚肉が食べられないので配慮が必要ですし。

ちなみに、お寿司だとイスラム教の方でもOKなことが多いので、社内でのケータリングはお寿司の頻度が高くなりました。

みんなと違う人が一人いると浮いてしまいますが、弊社の場合はみんな違うのが当たり前なので、驚くことはあるもの、私たち自身が「違い」をだんだん意識しなくなっている気がします。

グローバル化を今後進めたいと思っている読者もいると思うのですが、社内のグローバル化を進めるためのアドバイスをいただけますでしょうか?

日本語を前提にしない方がいいですね。「日本語を話せなくて良い」という条件にするだけで、応募してくれる人はたくさんいます。

本当にグローバル化したいのであれば、日本語のバリアを自分から外しにいく覚悟が必要です。

なるほど。グローバル化を進めながら一体感を保つために、コミュニケーションで工夫されていることはありますか?

私個人で言えば、海外にいるときは日本のマネージャーとのリモートミーティングの頻度を増やしました。日本にいるときにはマネージャーと対面で話をしていたので、改めてのコミュニケーションの場は用意しませんでしたが、海外に出てみて、必要性を強く感じるようになりました。

オンライン以外でも、海外在住のスタッフとコミュニケーションをとるケースもあるのですか?

オフラインの工夫でいうと、定期的に海外のスタッフを日本の本社に集めて、チームビルティング研修を行なっています。全社員で百数十名なので、まだ実際に集まることが可能な規模です。

普段リモートのメンバーを本社に集めるときは、なるべく「会っているからこそできること」をするようにしていますね。

働き方改革は痛みが伴うもの。だからこそ、クラウド活用がカギ

ワークスタイル百科の読者の中には新しい働き方を始めるのに躊躇している人も多いのですが、そんな読者へ何かアドバイスをいただけますでしょうか。

1番手取り早いのは、クラウドの活用です。会社に行かないとメールを見れない、スケジュールも確認できないという状態から脱していくことが必要だと思います。

働き方改革は痛みが伴うものです。我々も便利になった点ばかりではありません。反対勢力もいるでしょう。だからこそ、ITツールから寄りそうことが重要だと感じています。

まずは周囲にクラウドの便利さを知ってもらうこと。クラウドを使うだけでも変われるんだということを気づいてもらうことが大切です。みんなが「便利だ」と気づけば徐々に変わっていきます。まずは色々なサービスを試してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

新しい働き方に自らチャレンジし、日本の企業の働き方を変えていくサービスを扱っているHDEとしては、今後、どのような展望をお持ちですか?

今から労働人口はどんどん減っていくので、工夫をしないとこれから日本企業が生き残っていくことは難しいと思っています。

多様な働き方を許容することで労働人口を仮想的に増やしたり、日本語が話せなくても優秀な人材を採用したりと、弊社はなんとか労働人口減少の時代を迎える準備をしている段階です。

もしその準備をHDEと一緒にやりたいというお客様がいれば、全力でサポートさせていただきたいと思っています。

これからも新しい取り組みへのチャレンジで、わかったことがありましたら、ぜひまた取材させてください。本日はありがとうございました。