ワークスタイル12
株式会社ソフトクリエイト

ゴリゴリの営業会社がホワイトに!?「数字は絶対」「残業は当たり前」の会社が変わり始めた

「残業は当たり前」「風邪をひいても這ってでも出社」など、いわゆる“ブラック企業”の土壌があった株式会社ソフトクリエイト(以下、ソフトクリエイト)。

驚くべきことに、いま彼らの働き方は大きく変わっています。テレワークや在宅勤務を行うスタッフも現れる中、チーム営業をすることで成果を出し、働き方をホワイトに移行させています。ゴリゴリの営業会社で、働き方改革なんて可能なんですか?4名の方にうかがいました。

「結果を出さないと何も言えない」「有給なんて取れると思っていなかった」

本日はよろしくお願いします。最初に、ソフトクリエイトがどのような会社なのかを教えてください。

一言で説明すると「ITでお客様の業務改善のお手伝いする会社」です。業界ではSIerやITベンダーと呼ばれています。

パソコンやタブレットといった販売はもちろん、クラウドやネットワークなどのITインフラや、基幹システム、サイボウズ Officeのような情報システム、セキュリティなど、ITソリューション全般を扱っています。

お客様の「無線環境を作りたい」「テレワークしたい」「情シスが忙しい」「セキュリティ対策手伝って」といったIT関連のお困りごとに対して、製品をアレンジして提案するのが特徴です。

ソフトクリエイトは以前、 “ブラック”な働き方だったと聞いていますが、具体的にどのような働き方だったのでしょうか?

鈴木大智氏。営業本部 事業推進部 マーケティンググループ 部長

成績が芳しくない営業担当がいろんなところでツメられているのを昔よく見ました(苦笑)。それに夜遅くまでの長時間労働は、どの部署でも当たり前でしたね。

会議は定時後からはじまり、有給取得率も限りなくゼロに等しかったと思います。私も当時はよく徹夜で仕事をしてました。

伊藤純子さん。営業本部 事業推進部 マーケティンググループ 主任

私は8年目ですが、有給なんて取れるものだと思いませんでした。「風邪をひいたので休みたい」と言うと「体調管理ができていない!」と怒られるので、這ってでも会社に行ったのが1年目でした。

去年まで営業担当でしたが、9時から18時はお客様対応が絶対で外を歩き回り、その後に会議がありました。メールを返したり見積を作ったり自分のタスクが出来るのはその後なので、21時でも帰りが早いと思っていたくらいです。

川﨑永理子さん。カスタマーリレーション営業部 フィールドセールスグループ 副主任

社内の勉強会もお客様対応が終わった18時以降でしたね。今は16時や17時から始めて、18時には仕事が終わらせられるようになっています。

そんなソフトクリエイトで働き方改革のプロジェクトを進められた背景はどのようなものだったのでしょうか?

「働き方改革プロジェクト」が明示的にあるわけではありません。SIerである私達は「ITでお客様の業務改革をお手伝いする」というのが仕事なので、「そんな自分たちが、先進的な働き方をデキていないとダメだよね」と自然発生的に意識が変わってきました。

多様な働き方の採用やモバイルの積極活用、それに長時間労働や生産性への意識も確実に変わって来ています。

外部要因があったとはいえ、社内からの反発はなかったのですか?

多少はあったとは思いますけど、元から変化への抵抗が無い風土なので障壁はあまり無かったと思います。それよりも「自分たちが変わらなければいけない」という意識がマネジメント層にはありました。

働きやすい環境を整えていかないと、人が定着しないし、外からも人が来てくれないという危機感から、「部下はきちんとワークバランスが取れているか」というのを管理職が確実に気にするように変わって来ていますね。

新しく入ってくる人たちや、若いメンバー達の未来や成長を考えれば、必然的なものだったと思います。

個人に数字を持たせる営業スタイルは限界。チーム営業へ。

ゴリゴリの営業会社で働き方改革をするとは、簡単なことではないと思います。具体的にどのように働き方改革を進めていったのでしょうか?

個人戦から組織戦に変わってきた事が大きいと感じています。ソフトクリエイトがこれまで得意としてきたお客様との One to Oneでの付き合いに加え、「営業がチームでお客様と関係を築く」、「マーケチームが広角的なコミュニケーションを取る」、「技術チームがプロジェクトを支える」、「マネージャーはエグゼクティブな付き合いをする」とそれぞれの立場でお客様と向き合い、組織戦を展開できるようになってきました。

これからの営業は個人よりもチームでやって行ったほうが良いのでしょうか?

一人でカバーできる範囲、作れる売上はどんなに生産性を上げても限界がありますので、組織、チームで成果を上げる仕組みが求められると思います。

当社においても、一人一人個性的で立派な家を建てられる「職人の集団」から、ビルやマンションも建てられる「プロフェッショナルな組織」に成長するための過渡期にあると考えています。

また、働き方改革という観点ですと、人材不足を身近に感じますので、多様な人材が活躍できる事業や組織作りが求められています。

組織やチームという枠組みで成果や生産性をみていくことで、時短勤務で育児をしながら成果を出す人、在宅で地方にいて活躍する人、といった人の活躍の場が生まれてくると思います。同じ働き方、同じスキルセットの人間を金太郎飴のように作っていく時代ではないですよね。

営業のチーム制とは具体的にどのような構成でしょうか?

私が所属している部署は、内勤と外勤の部隊に分かれます。外勤部隊は、とにかくお客様先に訪問して関係性を作り、案件を発掘することをミッションとしています。

内勤部隊はというと、外勤営業が必要な見積書の作成などを行っています。外勤の営業は訪問数を増やせるよう、資料作成などの内勤業務を減らし、直行直帰なども柔軟にしているわけです。そしてお客様を開拓したら、他の営業担当に商談を引き継ぎます。

外勤の方は、ほとんど会社に出社しないのですか?

外勤の部隊は、徹底的にお客様を訪問するというのが主体ですので、ほとんどリモートワークです。

ほとんど顔を合わせない中で、工夫していることがあったら教えていただけますか。

モバイルワークやテレワークをするためのITソリューションを提案する立場なので、当然私達自身、リモートワークで当たり前に仕事はできます。ただ、水曜日の午前中は必ず会社にいるようルール化しています。やはり直接のコミュニケーションは大切なので。

私達から別の営業担当に商談を引き継ぐ事があるのですが、必要に応じて対面でやります。メール一本でお願いするのではなく、「こういうお客様がいて…」「こういう商談で…」「私はこういう思いで…」と、熱量を伝えるコミュニケーションが大切なんです。

お客様の温度感まで含めて共有しないと、営業担当が提案をする優先順位が下がってしまうこともありますし、お客様の熱はメールやチャットなどのツールを通してだと伝わらないことがあるので、水曜日の午前中は会社で顔を合わせるように変えました。

チーム戦になったからできた、新しい働き方

チーム戦になったことで、女性のお二人はどんな働き方が実現したのでしょうか。

私は資格取得のために勉強をしたいと考えていました。でも、残業が多い部署だとなかなか時間が取れません。

どうしようと会社に相談したところ、ちょうど会社側も、モバイルワークなどを活用して直行直帰などの柔軟な働き方を出来るようにしていこうという動きがあったこともあり、今の外勤営業の部署に配属されました。

今は基本的には定時で帰れるので、資格の勉強ができます。制度や風土が細かくちゃんとあるわけではないですが、相談すると柔軟にまず現場からやろうとする会社の基盤がある。それが私にとってプラスです。

ソフトクリエイトの社是は「Speed & Change」なんですが、そうやって変わっていくスピードはすごいと感じます。

私は去年の上期まで直販営業でしたが、夫より先に帰ったことは一回もなかったくらい、帰りが遅い毎日でした。ガンガン数字をやりきった7年間だったので、違うキャリアに転身したいなあと思っていたのですが、それがすぐ実現してマーケティンググループに所属しています。

今はイベントやセミナーの運営や、継続したマーケティング・コミュニケーションでのお客様開拓といった、これまでと違った形で営業活動に関われています。このように業務やキャリアの選択肢がもっともっと広がるといいなと思います。

営業のリモートワーク以外に、場所を選ばないテレワークもされている方もいらっしゃいますか?

いますね。子どもの世話をしてから出社している社員もいますし、ライフスタイルの事情で遠くから通いたい、在宅勤務をしたい、という希望が出てきたり…。ちょっとずつそんな希望が増えてきています。そういった多様な働き方でも成果があげられる組織にしていきたいですね。

在宅勤務は「主語と述語を具体的に書く」のがコツ

後藤学 氏。営業本部 事業推進部 マーケティンググループ

今ビデオ会議でつないでいる後藤は100%在宅勤務のメンバーです。

後藤さんはフルの在宅勤務とのことですが、どのようなお仕事をされているのですか?

昨年からソフトクリエイトで働き始めました。歩行が困難な障害を持っているため、10~17時の時短で完全在宅勤務をしています。マーケティング部門でのWebデザインや制作系の業務を行っています。

在宅勤務の難しさなどはないのでしょうか?

ソフトクリエイトに入社する前、2年間在宅勤務の講習を受けていました。その時に学んだのは「時間管理・体調管理」という自立と、基本的にはメールやチャットなどの文字中心でのやりとりになるので、「主語と述語を具体的に書く」というコミュニケーション面での工夫でした。これらを心がけているので、特に在宅勤務の難しさを感じることはないですね。

オフィス側で、在宅勤務の方と一緒に仕事をしていく難しさはありましたか?

依頼する仕事をはっきりイメージするまでは時間がかかりました。最初だけ会社に来てもらってランチを一緒にし、コミュニケーションをとったことで、人柄がわかったのは良かったですね。

後藤さんがチームに加わったことで、業務を見直すきっかけにもなりました。今まで私個人が行っていた業務を、後藤さんにお願いするためにマニュアルを作って完全に受け渡しました。この経験から、仕事を属人化せずに業務を共有できると学べましたし、チームで仕事をすることで、生産性への意識も生まれました。

3ヶ月に1回、後藤さんの自宅まで行って面談してるんですよ。当然評価する立場なので仕事の話がメインですが、普通に楽しくお茶しながら話して帰れたら「ああ、元気でよかったな」って。その時間がすごく大事なんじゃないかなと思います。

川﨑さん、伊藤さんと同じく、顔を合わせてのコミュニケーションを大切にされているんですね。

はい、そうですね。彼にパフォーマンスを出してもらうためには、ツールや仕組みなどで業務をただ便利にするだけじゃなくて、コミュニケーションをミックスさせることが重要だと考えています。在宅で働く後藤さんが「不安なく仕事に熱中してくれてるか」が一番大切なことだと思ってます。

今こうして遠隔でのWeb会議で後藤さんとやり取りしていても、自然にコミュニケーションが取れますね。

はい。「会社に来るのが難しい」というだけで才能を発揮できないというのは勿体無い話ですよね。今は、後藤さんとは、こうやってリモートで話したり、チャットでやり取りしたりで、仕事を進めていく分には障害は感じてません。

“営業以外のキャリア”も王道になってほしい

女性のお二人にお聞きしたいのですが、“女性活躍”など、ありがた迷惑な働き方改革だなと思ったことはありませんか?

それはないです、良かったことが多いです。川﨑さんは営業でしたが、ワークライフバランスを考えたくて、手を挙げて外勤の部署に異動しましたし、私も営業からマーケティングに異動しました。女性だからというわけではないですが、この変化はよいキッカケだと思います。

ただ、声を上げることができるようになったのはいいと思う反面、直接数字を稼ぐ営業から外れたことで、 “左遷”という風に捉えられたくないなと思います。

今はまだ「営業が王道だ」という雰囲気があると。

営業が多い会社なので、そういう雰囲気は多少あると思います。もっとキャリアの選択肢が増えたらいいなと思います。選択肢が増えて、なおかつ希望を言えたり、社内でキャリアアップできる仕組みがあればいいかなあ。

他のキャリアの選択肢が増えて、人によって王道が違ってもいいかなと思いますね。

働き方はホワイトに、仕事は今まで以上に熱く

今後、どのような働き方改革をすすめて行きたいなどあれば、教えていただけますか。

自己成長出来る風土にしていきたいなと思います。

私はソフトクリエイトからグループ会社に移り、今年の4月に10年ぶりに戻ってきました。その時に「ああ、ソフクリ変わったなあ」と感じました。実は今日この場は「昔はこんな働き方する人はいなかった!」っていうメンバーを集めたんです。

このメンバーの他にも、自己成長したい人はたくさんいるはずです。社員の自己成長は会社にとっては何よりも喜ばしい事ですから、出来る限りそれが出来る環境を作っていきたいですね。

営業会社での働き方改革はなかなか難しいと思いますが、同じようなゴリゴリの営業会社はどのようにして働き方改革を進めて行けばいいでしょうか?

営業という職種はお客様と一番近くで対面して、手から手へ直接商品を渡して、お金をもらう仕事をしているわけですし、成果に対して厳しいのは当然だと思います。そんな厳しい環境だからこそ、成果を出すための環境や働き方については、柔軟でホワイトにして行くべきかと思っています。

働きやすさが勝って、熱くないメンバーが集まっても仕方ありません。ソフトクリエイトは熱くて元気で本気なメンバーが集まっているというのが強みであり、いいところ。だからこそ、その熱を冷まさない、もっと熱くするための働き方改革というのを大切にしていきたいです。

ゴリゴリの営業会社がチーム営業とコミュニケーションの工夫によって働き方を改善できたことはとても衝撃的なお話でした。本日はありがとうございました。