ワークスタイル22
サイボウズ株式会社

初公開!サイボウズの自由すぎる働き方はこんなやり方で管理されていた

2018年4月、サイボウズでは「新・働き方宣言制度」という新たな人事制度が動き始めました。これまでも9種類の柔軟な働き方を認めてきたサイボウズですが、新たな制度はもはやフリースタイル。聞くところでは、社員それぞれがが「働きたい時間と場所を自由に」文章で宣言できるのだそうです。

6月20日にサイボウズ式で公開した記事「自由すぎる……! サイボウズが最近はじめた新しい”働き方制度”について聞いてみた」では、「人事の運用力がすごい」という反響がありました。

自由に働けるのは素晴らしいこと。しかし一方では、「人事はめちゃくちゃ苦労しているんじゃないか?」「労務管理はどうしてるの?」と勘ぐりたくもなります。社員全員、働き方がバラバラという環境にあって、バックオフィスはさぞかしカオスな状況になってしまっているのではないでしょうか。「みんな自由にやってるけど、人事・労務は毎日深夜残業」とか。

というわけで、新制度の運用を支える「中の人」を直撃します。お話を聞いたのは、幸か不幸か、この革命的な人事制度の変化に立ち会うこととなった恩田志保さん(事業支援本部 人事部 副部長)と野間美賀子さん(総務労務グループ)。知られざるサイボウズの実態に迫ってみました。

100人100通りの働き方ができるなんて、人事・労務は大変なんじゃないですか?

サイボウズで人事労務を担当している、野間美賀子さん(左)と恩田志保さん(右)

先週公開した「働き方制度」の記事、かなり反響がありましたね。サイボウズの新しい制度では、100人100通りの働き方を宣言できると伺ったのですが、実際はどこまで自由になるのでしょうか?

自分が希望する働き方を文章で記述してもらいますので、どんな形でも宣言できます。「月曜から水曜は9時から18時まで出社、木曜は休み、金曜は在宅勤務」といったように、一人ひとりが望む働く時間と場所を宣言できます。「朝はランニングをしたいので10時出社」とか、「複業するためサイボウズは週3日勤務」といった働き方も可能です。

でも、実際にそんな働き方をしている人が.....。

たくさんいますよ。

本当に多様なんですね。

働き方を登録すると、グループウェアのプロフィール欄にその情報が表示され、社内の他のメンバーがひと目でわかるようになります。 私は子育て中なので、9:15〜16:30までの勤務です。

恩田さんの働き方宣言

おお、こんな感じに表示されるのですね! 野間さんの働き方は?

野間さんの働き方宣言

ん? ちょっと待ってください。「カープ観戦の日は8:00〜17:00」……?

私はカープが大好きなんです! 普段は9:00-18:00で勤務しますが、「カープ観戦の日は17:00で帰ります」という意味です。

カープの話になると目が輝き出す野間さん。

そんな理由もOKなのか……。柔軟すぎる。

ちなみに働き方は毎月変えることもできます。

働き方を毎月変えられる……?

仕事をする上での都合って、変化するものだと思うんです。「来月から複業のほうが忙しくなりそう」「来月から子どもが夏休みなので在宅勤務を多めにしたい」といったケースも考えられますよね。だから変更は月単位で可能にしています。

なるほど……。正直なところ、先端を行き過ぎている感じがしてまだ理解が及んでいないのですが、そこまで働き方が多様化していると、人事労務を担当されている恩田さんや野間さんは大変なんじゃないですか?

大変というと?

こういう柔軟な制度って、社員にとってはもちろんうれしいものだと思います。でも、それを管理するバックオフィスには思いきり負担がかかるような気がするんです。特に人事・労務はモロですよね。

私たちのミッションは「多様性を受け入れられる環境づくり」なので、そこまで苦痛だとは思っていません。

そうは言っても、絶対大変だと思うんです。

給与変更の手続きが大変? 柔軟な働き方に対応できるからこその苦悩

大変なこと、なんでしょうね……。

あ、選ぶ働き方によっては給与変更を伴うケースがあるのですが、その調整や手続きは大変といえば大変かもしれません。

給与変更、ですか?

例えば、週5日勤務から週4日勤務に変える人がいたとします。その結果としてアウトプットが減る場合は、給与を減額する可能性があります。個人のアウトプット、コミュニケーションや業務調整を含めたチームに与える影響、両方を確認します。

時間が5分の4になるわけだから、たしかにアウトプットが減るケースもありそうですよね。

そうなんです。なので働き方の変更の申請があったらまず、「この人は給与の変更が発生するかどうか」を上長に判断してもらいます。

マネージャーと人事とのコミュニケーションを経て、「働く時間が変わっても、現時点では給与を変更しない」と判断すれば、そのままの給与で進めることもあります。

もし「給与を減らす」あるいは「増やす」となった場合は、今度は「いくら変動するのか」をマネージャーと議論します。金額が決まったら、新しい金額での給与辞令を交付しなくてはなりません。

あと、社会保険労務士への連絡も必要ですね。言われてみれば大変なのかも……?

顔を見合わせる二人。私たち、結構大変なことをやっているのかも……。

様々な人との調整が必要になって、すごくめんどくさそう。やっぱり人事や労務を担当する人は、相当苦労されているんじゃないですか?

最近は複業理由で勤務日数を減らす人が増えてきてはいますね。でもそこは正直、やり方次第だと思うんです。サイボウズの場合は「キントーン」を使って業務を効率化しているので、意外と大丈夫なんですよ。

キントーン。

弊社の社内システムです。働き方の申請や給与変更の通知、人材管理など社内の業務はすべてキントーンで行なっています。

働き方を変える際の一連の手続きは、すべてキントーン上で完結できるようにしています。社員が働き方を変えたいときはまず「働き方宣言アプリ」に登録します。

それを見たマネージャーが「給与変更のありなし」を判断してワークフローを回す。「給与変更あり」の場合は、給与評価アプリ上でマネージャーと人事が議論するという流れです。

給与変更時のコミュニケーションの例

ちょっと待ってください。「給与を変更するかどうか」の議論も、すべてオンラインで行われるんですか?

そうです。リモートで働いている人も多いし、働く時間帯も違うので。

さらっと言っていますが、そんな重要な決定がオンラインで済むってすごいですよ。

もちろん、場合によっては打ち合わせで確認することもありますが、オンラインで必要な情報が確認できれば、必ずしもリアルで議論する必要はないと思います。給与額を決定したあとは、「給与辞令アプリ」で給与を本人に知らせます。

給与辞令もオンライン!なんかシステマチックですね。

以前は紙で渡していたのですが、働き方が多様化していることを受けて廃止しました。出社の頻度が少ない人もいるので、タイムリーなフィードバックを実現するためにも変更しました。新人の初任給だけは社長の青野から手渡しで給与明細を出していますが、それ以外はもう紙を使っていません。給与通知アプリの中身は本人とそのマネージャー、給与担当者しか見られないようになっています。

なるほど。ちなみに、社員の方が働き方変更を申請してから、お給料の額が決まるまではだいたい何日くらいかかるんですか?

早い人だと、働き方変更の申請をしてから2営業日で上司が承認、その翌日に給与額が決定され、申請後1週間ほどで給与辞令を交付していますね。

スピード感がありますね……!

その後は社労士とのやりとりを進めていくと思うのですが、そういえばお給料が変わる時って、雇用契約書のような書類も改めて作成しなければいけないんでしたっけ?

昨年まではそうしていました。

でも、今年から給与辞令をオンラインで交付することにし、そこに給与額算出の基となる勤務条件も明記するようにしたので、もう追加で書類の作成は必要ありません。給与が変わった場合も、このアプリの内容をそのまま社労士にキントーンで共有するだけです。

無駄がない……!先週公開した記事で、「どうやって制度を回しているのだろう。ITをかなり駆使しているのかな」という声がありましたが、やはりITで効率化されている部分は多いんですね。

そうですね。もし対面での会議があったり、紙のやり取りがあったりしたら、永遠に終わらないかもしれません。

「普通に働きたい」という人もいるのでは? あえて全社員に希望の働き方を宣言してもらう理由 

ふと疑問に思ったのですが、社内の人はこういった制度をどう思っているんでしょうか?自由な働き方を求める人には良さそうですが、「無難に、普通に働きたい」という人だって一定数いるはずだと思うんです。

自分は働き方で困っていないのに、いちいち宣言するのは面倒くさい」という声はありますね。

おお、やっぱり。働き方の宣言は、全社員やるべきことなんでしたっけ?

そうですね。正社員は宣言が必須です。今後は派遣社員の方や業務委託の方にも希望の働き方を宣言してもらいたいと思っています。

これは素朴な疑問なんですが、フルタイムなら、あえて働き方を宣言する必要はないのでは?時短や在宅勤務をしたい人など、特別な場合だけ登録すればいいのではないでしょうか?

そうですね。フルタイムの働き方をしている人から同じような疑問の声が上がりました。

でも、「自分はフルタイムだから普通」といっても、それが本当に「普通」なのかはわかりません。フルタイムで働きたい人にも色々いると思うんです。フルタイムだけど朝7:00に出社したい人、残業はいいけど出張は難しい人、バリバリ働きたい人……。

「フルタイム」と一括りにするのではなく、そういった細かい希望まで宣言してもらうことで、チームメンバーもその人と一緒に仕事をしやすくなる効果があると思っています。

たしかに……。フルタイムでも一人一人違う、ということですね。

はい。この制度のもとでは同じフルタイムでも、何時に出社したいのか、どれくらい残業したいのかというところまで、あえて考えて宣言する必要があるんです。「会社の言われた通りにしていればいいや」という人からすると、面倒だし大変なことかもしれませんね。

全社員を巻き込んで作る !? サイボウズの人事制度はアップデート主義

こうしたユニークな人事制度は、他社では思いついてもなかなか導入できないものだと思うんです。サイボウズではいつも、どのようにして準備を進めているんですか?

全社員を巻き込み、フィードバックをもらいながら進めます。

全社員……?

はい。今回の制度でいうと、まず全社員を対象にアンケートをとって、それまでの9分類の働き方で起こっていた問題点を吸い上げました。

アンケートはキントーンでとっているので、集計が簡単にできます。

さっきからちょくちょくでてくるキントーン、なんでもできますね。

そのあと、リアルでも意見交換の場を設けて議論をしました。

それも、全社員参加できるのでしょうか?

もちろんです。興味がある人が参加するので全員参加ではありませんが、社員の関心が高く予想以上に人数が集まったため、合計で5回開催しました。

意見交換の様子

それでも、事情があってリアルな議論の場に参加できない人もいます。そういった方々でも雰囲気がわかるように、オンライン上では全社員向けに「実況スレ」が立ち上がることもあります。また、どんな質問や議論があったかをまとめて見返せるように、議事録も全社員に共有されます。

「そもそもどういう制度にしたらいいか」という、まだ企画ができていない状態から、全社に意見を求めるんですね。

はい。ここでみんなの声を集め、その意見をもとに制度案を見直し、経営会議で起案しました。

ちなみにサイボウズでは、経営会議の議事録もその日中に全社に共有されます。

経営陣の反応もすぐわかるんですね。

はい。経営会議でもらったフィードバックをもとに案を練り直し、今回の運用に至りました。

大企業では「制度が始まってから当日に通達される」といったケースもままあると思うのですが、まだ形になっていない時点から、全社員でブラッシュアップしていくのはすごいですね。

このあたりはサイボウズっぽさと言えるのかもしれませんね。起案時に違和感があればフィードバックをもらえるので、制度の運用を開始してから紛糾することは少ないと思います。

情報共有と議論を徹底しているから、制度運用後のギャップは少ないと。

はい。社員のための制度ですから、人事だけで制度を考えて突然運用するのではなく、制度を作り始めるところから全社員に見せ、過程を公開しながら完成させていくことが大切だと思っています。

今回の取材で、人事労務の皆様の大変さを垣間見たような気がしました。サイボウズでの実体験を通して、何か発信できることはありますか?

私は基本的に、サイボウズをより良いチームにするために、自分がやるべきことをコツコツと進めていくことを面倒だとは思っていません。

ただ、普段のちょっとした業務に忙殺されているばかりでは、社員の声を制度や運用に反映していくことはなかなかできないと思います。チームワークよく働くための要望や相談に積極的に応えていくには、キントーンなどのツールを駆使して日常業務を効率化することが欠かせないですね。

たしかに今日聞いていて、大変な部分もあるけれど意外とシステマチックにやられているんだなという印象を持ちました。恩田さんはいかがでしょうか?

サイボウズの場合は、「チームワーク溢れる社会を創る」「チームワーク溢れる会社を創る」を両立させるというビジョンがあります。サイボウズの人事制度は日々進化していますが、すべては「チームワーク溢れる会社」を創るため。

大変なこともありますが、「今の理想を実現するには、こうしたほうが良いのでは」と社員と一緒に議論しながら、柔軟に変化できる体制を作っていけばいいんじゃないでしょうか。

ありがとうございました!