ワークスタイル25
「未来のチーム」の作り方
イベントレポート:中編

【中編】目指すは「マネージャーがいじられる」世界?心理的安全性がチームに与える効果

前編に引き続き、イベント「自主的に動くチームを作るには?サイボウズ式に学ぶ、キントーンを活用したチームビルディング術」で語られた内容をお届けまします。

中編では、自主的に動くチームを作るための3ステップについて、詳しく紹介していきます。

分報やスレッドを活用して、チームのコミュニケーション量を増やす

藤村:前編では、リーダーである僕が「何でも自分でやる」という発想をやめ、メンバーのサポート、ITツールの活用によってチームで成果をあげることに意識を向けたというお話をしました。続いては、どのようなプロセスによって、チームが自主的に動くようになるのか、段階を踏んでお話をしていきたいと思います。

まずはチーム内で何でも話せる環境を作って、会話の量を増やしましょう。

藤村:ステップ1の「チームのコミュニケーション量を増やす」では、サイボウズが提供しているクラウドサービス「キントーン」のスレッド機能を使って分報という取り組みをしています。ところで山田さん、この「分報(ふんほう)」ってなんですか?

山田:はい。こちらはサイボウズ式から持ってきた記事なんですが、分報は社内ツイッターのようなものですね。仕事や仕事以外のことを書き込んでみんなに共有する場所があるんです。失敗談や体調不良、寝坊のことも包み隠さず書いています。

山田:スライドの右側は私の失敗談です。小籠包を食べたときに顔をやけどして病院に行きましたという話があったり、在宅勤務中に自分が何をしているのかをチームメンバーに知らせたり、そんな内容を書き込んでいます。

また、他部署の人をフォローすることによって、「この人はこういう業務をしている人なんだな」というのを見ることができたりもします。業務中にわからないことや、疑問に思ったことを書くと、誰かが発見して助けてくれたりもしますね。

藤村:僕は山田さんとオフィスで直接会うことがあまりないんですが、今はこんな状況なんだいうのがわかります。業務とは直接関係ないこともどんどん発信していくことで、その人の「人となり」が伝わって相互の理解が進む、そんな使い方ですね。

僕は分報を、このように書いていますね。

藤村:このあたりは業務モードですね。『「未来のチーム」の作り方』を書いていたときに最終稿のゲラの確認をしていて、「すみません、こちらを優先させてください」と、いかにも業務めいたことを書いていたり。

一方では、雑談みたいな内容を書き込んだりもしますね。

藤村の分報で、1年目の武田さんと団さんとの「ザツダン」について話す様子

藤村:もうこれ、何なんでしょうね(笑)。編集チームに新しく入ってきた団さんという1年目の方がいて、僕は団さんと「ザツダン」と呼んでいる1on1のミーティングを行ったときの話なんですが……仕事中に何やってんねん!というね。

山田:藤村さんと団さんのザツダンに関係ない同じ1年目の武田さんが巻き込まれてます(笑)

藤村:キントーンのメンション機能を使うことで、二人の会話に他の人が参加することができる。そして、このやりとりを見ているのは僕とこの武田さんだけではないんです。ビジネスマーケティング本部の数十人も見ているんですよ。ですから、このやりとりによって新入社員である武田さんがどんな人なのかが伝わっていくわけなんですね。

山田:藤村さんってコメントだけじゃなくて、他も気さくにお返事いただけますよね。たとえば何か相談してもすぐ「いいですね」って言ってくれる「いいですねおじさん」ですよね。これってやっぱり意識してるんですか?

藤村:めちゃくちゃ意識してやってます!

藤村:実はここに大事なポイントがあるんですよね。まずマネージャーとしては、メンバーがやってくれた仕事に対する感謝の気持ちをしっかり伝える必要があります。

よくやってしまいがちなのが、マネージャーの場合レビューをする側になってしまうので、来たアウトプットに対して、「いや、これはここがダメで…」と返してしまうことです。そうではなく、そのメンバーがやってくれた仕事を尊重して、しっかりと感謝の意を伝えることが大切です。

その上で、じゃあ次のアクションとして、どんな感じのリンクにしましょうかという仕事のサポートですね。僕の方では答えは出さずに、山田さんにしっかりと自分の仕事として考えてもらいました。

藤村:こんなやりとりを通じて、この人と仕事をしていると安心感が生まれると、チームの中でみんなが相手を思いやってあげることが大事なんじゃないかと思うんです。

安心感が生まれれば、自分のやり方でいいんだと自信がつき、その結果仕事が自分ごと化していきます。仕事に対して当事者意識が持てるようになれば、自分から動けるようになると考えています。

そんな思いから、仕事の話と同じくらい何でもないコミュニケーションの中でお互いの意思疎通を図ることを大切にしています。キントーンを使えば、そんなこともやりやすいですね。

ザツダンやアプリによって、チームメンバー1人1人を良く知る

藤村:チーム内のコミュニケーション量が増えて何でも話せるようになった後は、メンバー1人1人を深く知ることが重要になります

サイボウズでは「ザツダン」と呼ばれる対面の1on1を行いながら、キントーンを使って仕組み化しています。

藤村:ザツダンとは、サイボウズでやっている1on1ミーティングの総称ですね。最近では、この1on1のミーティングが流行っていて、たとえば、ヤフーさんなどの企業が導入しています。マネージャー、メンバー間の一対一で、個人の成長や仕事内容に関してコミュニケーションをとる、そんな時間を「1on1ミーティング」と呼んでいます。

サイボウズのザツダンがおもしろいなと思うのは、もちろん、そういった仕事の進捗や個人の成長支援について話し合うこともあれば、本当に“雑談”だけして終わることもあるということなんですよね。いずれにせよ、最終的な目的である「お互いを知る」ことにつながっていきます。

自主的に動くチームを作るためには、各メンバーが何をやっているのか、どんなことを考えているのかを知り、信頼関係や距離感を認識し合うことが大事だと思っています。

そのため、特にマネージャーの人たちは、このザツダンと呼ばれる1on1をよくやっています。最近、僕が所属するコーポレートブランディング部では、マネージャーとメンバー間に限らず、誰とでもザツダンしていいことになっています。

藤村:このザツダンは通常1対1で、会議室などの場所で口頭で行います。もちろん、そのまま終わってもいいんですが、その内容をそれ以降に活かせるように、マネージャーはその日のザツダンの内容をキントーンのアプリ上に記録しています。

藤村:「報告」「連絡」「相談」からとった「ホウレンソウ」という言葉ありますが、最近では「雑談」「相談」からとった「ザッソウ」が流行っています。株式会社ソニックガーデンの倉貫義人さんが、このザッソウを提唱されています。

チームを良くしていくためには、上下関係の強いホウレンソウではなく、お互いの目線を合わせてフラットに雑談をしよう、そんな考え方ですね。こういうところからチームが良くなると言われています。

藤村:こちらの右側に「マネージャーToDo」なるものがあります。ここには1on1のザツダンの中から出てきた、メンバーがマネージャーにやって欲しいことを書くようにしています。

たとえば、僕がメンバーから「Aさんの企画の件について確認をしてほしい」と依頼を受けた場合、その内容をここに記録します。

記録をしておくとアプリ内にToDoが溜まっていきます。チェックボックスがあるので、マネージャーは依頼内容を完了したらチェックを押して保存します。そうすると、メンバーにマネージャーがタスクを完了した旨の通知が自動で届く仕組みになっています。

メンバーとの1on1後、マネージャーは忙しいのでこういった依頼を忘れがちなのですが、キントーンでアプリ化しておくことで漏れずに実行ができ、メンバーにも通知が飛ぶので状況の把握にもつながるわけですね。

こんなことをやっていると、みんなのことが徐々にわかっていく実感がありました。

藤村:1on1やザツダンって、マネージャーがメンバーに対してやると思いがちなんですが、実は僕がみんなを頼って「今、実はここがちょっと辛いです」とか、悩みを聞いてもらうこともあるんですね。悩みを聞いてもらえるとすごく助かるんですよ。特に解決策を求めているわけでないんですが、それでも自分が不安に思っている気持ちをうなずきながら、時には笑いながら聞いてもらえることで、こんなに救われるんだと思えることがあるんですよね。

こういったザツダンを通じてお互いを知り合うことが重要ですし、心を開きあっている関係ができていると、何かあったときに双方が助けられるようになります。これが自主的に動くチームづくりに繋がっていくんじゃないかと思っています。

心理的安全性の究極形。目指すは「マネージャーがいじられる」世界?

藤村:この自主的に動くチームを作るための2ステップ目の意味とは何でしょうか。この言葉、みなさんも聞いたことがあるんじゃないかと思います。チーム内に「心理的安全性」を作り出すためなんですよね。

藤村:Googleが発表したチームの生産性、アウトプットを高める一番の手段は何か。これは心理的な安全性をチーム内に作りだすことだと、様々な調査を通じて結論が出されています。では心理的な安全性とは何かというと、こちらの2つです。

「社員1人1人が会社で本来の自分をさらけ出せること」、そして「それを受け入れられるチームがあること」。この状態が担保されているときに心理的安全性が作り出されるとGoogleは定義をしています。ですが会社で自分のパーソナルな部分をさらけ出すって、けっこう難しいじゃないですか。

山田:難しいですよね。どこまで言おうかなとか、受け入れられなかったらどうしようと考えてしまいます。

藤村:それでもいいんですよ。自分たちは会社で本来の自分をしっかり出せるようにして、それをチームで受け止める。この関係が担保されていることが心理的な安全性を作りだすのだと思います。この心理的な安全性をもう少し分解するとこうなります。

藤村:他者つまり自分以外の誰かのことをしっかりと思ってあげること、心づかいですね。他人は自分とは違って当然です。ですが、それをしっかりと共感することが大事です。そしてその人を理解しようと努めること。この3つですね。この3つがそろっていくと、心理的安全性が築かれます。

心理的安全性が担保された環境が作られていると、失敗やミスがどんどん共有できるんですよね。あとはチームのみんなに新しいチャレンジをしたいということもどんどん言えるようになります。このことが自分の能力を最大限に高め、結果としてチームとしての成果を高めることに繋がるんです。

失敗って、なかなか共有しづらいですが、その前段階からどんどん共有しあえていると、自分で考えて動けるようにもなるんですね。さらに、山田さんがこんなスライドを用意してくれました。

山田:はい。目指すは「マネージャーがいじられる」世界ですね。『「未来のチーム」の作り方』から引っ張ってきました。

山田:サイボウズでは、部長もいじられますもんね。部長が「1日中ブース対応したけど、また仕事します」とつぶやくと「優等生ブランディングですか?」と社員から反応がきたり。まさに心理的安全性が担保されているのがわかりますよね。普通は部長相手にこんないじりかたしませんよね。

藤村:いやあ、いいですね。みなさん、いじりが素晴らしいですよね。

山田:けっこう厳しめですけどね(笑)で、そこから「優等生ブランディングとは?」というディスカッションに発展していくんですね。その後もディスカッションが続くんですが、これをオープンな場でやるのがすごいですよね。心理的安全性がないと、めちゃめちゃ怒られそうですもんね。

藤村:そうそう。「部長はいじってもいい」という心理的安全性が担保されている。マネージャーの方から心を開いて、そこにみんながしっかりとコミュニケーションをとっていく流れを作っていくと。

そうするとチーム内のコミュニケーション量が増えて、1人1人を良く知ることに繋がります。それが対面ではなく、キントーンというオンラインツールでみんなが見える場所で展開されることで、他の人も同じ事象について考えることができるわけですね。

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