イベントレポート:後編
【後編】暗黙知をチームの集合知へと変え、チーム力の向上に繋げていく。メンバーの自立のためにチームがすべきこと
前編、中編に引き続き、イベント「自主的に動くチームを作るには?サイボウズ式に学ぶ、キントーンを活用したチームビルディング術」で語られた内容をお届けします。
後編となる本編では、自主的に動くチームに不可欠なメンバーの「自立」について語られています。
キントーンを使って「仕組み化」する
藤村:中編では、自主的に動くチームを作るための3ステップについて具体的に説明してきました。そして今回は、最後の仕上げですね。「キントーン」を使った仕組み化についてお話をしていきたいと思います。
藤村:僕のようにリーダーの立場にある人におすすめなのは、なるべくみんなとコミュニケーションをとりながらノウハウをITツールに溜め、みんながそれを見れる状態にすることです。そして、それを元にみんなが僕を介さずにメンバー同士でディスカッションし合う流れをつくります。こうすることで、どんどんチーム力が付いてきます。
では、リーダーの頭の中をどうやってITツールに溜め、仕組み化するのか。キントーンを事例として説明していきます。
藤村:キントーンにはスペースという機能があって、ここにチームのメンバーが書きこんだり、いろんなやりとりをします。こちらはサイボウズ式の実際のキントーンのスペースです。
上の方にメディアコンセプトや戦略、体制などを書いています。あとはスレッドですね。サイボウズ式のチーム内でやりとりしているプロジェクトや連絡、コミュニケーションを集めています。
藤村:このスペースでは、こんな感じでサイボウズ式のプロジェクトで何をやっているかや、組織体制などがまとまっているのでわかりやすいですね。1から何か資料を作ったりするよりも見やすいですし、メンバーも繰り返し目に触れるので記憶にも残りやすいです。
さらに下へ進んでいくと、各自の役割分担なんかも書いていますね。
藤村:あとはトピックごとにスレッドに分かれていて、情報がまとまるので確認しやすく、他のトピックと混ざって話がごちゃごちゃにならないというのがポイントです。
藤村:このキントーンって、チームのメンバーだけが入っているわけではないんです。最初にお話したように、サイボウズ式編集部は編集部員が10名ですが、実は編集部のメンバーに加えて、数十人もの社員が閲覧しているんです。
よくチームの仕事って、チームのプロジェクト内で情報共有が限定されてしまいがちなんですが、やっていることをオープンにしていくことで、共感してくれる別部署の人にも情報が届くようになっています。
サイボウズ式編集部を一緒に応援してくれたり、意見をくれる人が社内に数十人もいるんだということが僕自身の誇りになっているんですよね。そんなこともキントーンだとできちゃいます。
藤村:こちらは、『Shikipedia(シキペディア)』と呼ばれるサイボウズ式の運営マニュアルです。サイボウズ式のすべての業務をキントーンアプリを使ってマニュアル化したものですね。
リーダーの頭の中にあった業務プロセスをすべてこのアプリに記載しています。左の部分には、企画実現までにすべきこと、ライターさんやカメラマンさんとのやりとり、テープ起こしをするにはどうすればいいかなど、サイボウズ式の業務をする上で必要なことをカテゴリに分けて、やるべきことを書いています。
僕の頭の中にあったものを、どんどんチームに共有して還元していくイメージです。まずはキントーンに記載して、みんなが見れるようにしていきます。そうすることで、僕だけが持っていた暗黙知をチームの集合知へと変え、チーム力の向上に繋げていくことができます。
山田:今回が私にとって初めてのイベント運営だったんですが、私も過去にイベントを実施した際の内容を確認して、どうやってイベントの準備していけばいいのか、事前に何を用意すべきかなど参考にしました。必要な情報が全部マニュアルに詰まっていたので、思い切ってチャレンジしようと思えたんですよね。
藤村:キントーンってチームのみんなでコミュニケーションすることを目的に設計されているので、単純にデータベース的な機能を持っているだけではなく、アプリの横に必ずコメント欄が設けられていて、コミュニケーションができるようになっているんです。
たとえばこの中で取材依頼書を作成するというレコードを開いて、何か新しい情報を追記した時には、「ここに追記しました」とコメントでメンバーに知らせることができるようになっています。
一般的によくある例だと、マニュアルの更新状況をExcelファイルなどに記載して、それをファイルサーバーで管理して、そのURLをメールでみんなに送って…という運用で、管理が非常に煩雑になりがちですよね。
ですが、キントーンならすべて一つのアプリ内でできてしまいます。Excelや資料プラスSlackのようなコミュニケーションの機能が備わっているので、とても便利に使うことができますね。
進捗管理は人力ではなく、アプリのリマインダ機能を活用
藤村:実は僕、これまでは「自主的に動くチーム」と言いながらも、細かくメンバーの進捗管理をしていました。が、それももうほとんどやめました。
最近では「リマインド通知」をよく使っています。サイボウズ式の記事管理アプリに企画を登録する際に、キントーンで公開日を指定して、当日や3日前などのタイミングで担当者に自動でリマインドが送られるように設定しています。
藤村:もう公開日の前に「進捗どう?」と聞くことはほとんどしなくなりました。進捗管理やマイクロマネジメントはツールに任せて、本来の自分たちがやるべき仕事に集中しています。
まとめましょう。
藤村:キントーンで情報をオープンにすると、メンバーの人となりがわかるので自分から積極的に声をかけることができます。そのため、業務の相談だけでなく、こんな業務にチャレンジしたい、と自分がやりたいことやできることも伝えることができます。
すると、誰かがその希望を拾ってくれて、一緒にプロジェクトが始まったり、逆に自分からも他のメンバーを助けてあげることもできます。お互いに教え合う環境が生まれるため、リーダーからの説明コストも大幅にカットすることができます。
自主的に動くチームとは?
藤村:ここから、まとめに入っていきます。『「未来のチーム」の作り方』という本の中でも言及した「自主的に動くチーム」とはどういうものなんだろうと、改めて考えてみました。
藤村:まずはメンバーみんなが自立していて、リーダー任せにならないことが重要です。サイボウズでもこの「自立」という考え方が重視されています。
要は、自分の足で立ち、自分はこうしたいとチームに伝え、それをチームのみんなに共感してもらい、チームで動いていく。その最初の起点となるが、個人が自立しているかどうかなんですね。
何もこれはサイボウズに限った話ではありません。「成果を出すチーム」であればあるほど、メンバーのみんなが自立しているはずです。
ただ、みんながみんな、いきなり自立している状態になれるものではありません。年齢が上がれば上がるほど、自立できるようになるかというとそんなこともなく、かといって何かすごい経験を積めば自立できるかというとそうでもありません。人それぞれなんですよね。
そのため、お互いを知ることが重要です。そしてお互いのことを知るためには、コミュニケーション量を増やしていくしかありません。
しっかりと、お互いに向き合って、その人の「人となり」を知る。そういった環境ができることで、結果としてメンバーが自立できるようになります。
チームを変えるために必要なこと
藤村:チームが変わるためには、風土、制度、ツールが組み合わさっている必要があります。サイボウズには「理想への共感」「公明正大」という文化がありますが、どれも一朝一夕でできたものではありません。
まずはグループウェア、キントーンなどのツールを使った情報の蓄積があり、風通しがよく、心理的にも安全性が担保されている環境があります。
なおかつ、時短勤務や在宅勤務ができたり、病院に行くので午前休取りますとか、そういった柔軟な働き方の選択が1年目の社員でも可能です。これら全部がそろっているからこそ、実現できているのだと思っています。
藤村:サイボウズは、よく「ホワイトな会社ですね」「自由に時間と場所を決められて働きやすい会社ですね」と言われます。
ただ、そう言われるようになるまでには10年以上かかっています。かつては離職率が28%、月に4人に1人が辞めるというブラックな会社でした。
しかし、僕たちはグループウェアを作っている会社なので、「チームのためのツール」がありました。何とかそのツールを使いながら、制度や風土を自分たちの頭で考え、10年以上かけて作り上げたその結果が、“今”なんですよね。
風土、制度、ツール。これら3つがそろえば、すぐに会社やチームが変わるわけではありません。
ですが、まずはこれらをチームで整えながら、変えるべきところは変える。自分の頭で考えながら変化し続けていくことが一番重要なのではないかと思っています。