ワークスタイル18
株式会社レアジョブ

柔軟な働き方のために情シスが意識すべきは 現場のニーズにあわせるための方法を探ること

『日本人1,000万人を英語が話せるようにする。』というサービスミッションに向け、英会話教育を全方位的に展開している株式会社レアジョブでは、副業を容認するなど、柔軟な働き方を積極的に取り入れています。

社員1人1人が自身に合った働き方を進めている同社では、ITをどのように活かして「働きやすさ」を支えているのでしょうか?

PR担当の田形梓さんと、情報セキュリティとITインフラ部門を兼任する澤雅英さんにうかがいました。

特別な制度はない。個人最適を考えて働き方を容認。

本日はよろしくお願いします。まず、レアジョブはどのような会社なのかを教えてください。

2007年に日本で起業し、Skypeを活用した個人向け、法人向けのオンライン英会話学習「レアジョブ英会話」をはじめ、文教事業、留学サービスなどを幅広く手掛けています。2017年11月にはトレーナーがマンツーマンで短期間に集中して英語学習のトレーニングする「レアジョブ本気塾」ハンズオン・コースもスタートするなど、“英語学習のゆりかごから墓場まで”を全方位的にカバーしています。

現在、どのくらいの社員がいらっしゃるのですか?

日本だけで約90名、フィリピンも含めると約500名という規模感です。

レアジョブで働いてみて、ズバリ、働きやすい会社だと思いますか?

思いますね!そもそも20時以降はほとんど社員がいません。休暇も取りやすい企業だと思います。

休暇が取りやすいというのは、創業当時からです。私はかなり早い時期からレアジョブで働いていますが、当時からいる社員は、前職では、早朝から終電まで半強制的に働いていた人も多く、その反面教師で、「休みやすい」という風土になっているのだと思います。

「レアジョブの働きやすさ」がわかるような具体例はありますか?

働きやすさや、自分に合った働き方というのは1人1人違いますが、その1人1人に個人最適できる柔軟性があります。私と同じ部署のパートタイムの女性は、マレーシアに子供が留学するので半年間同行することになり、今は遠隔で勤務していただいています。

マレーシアでの遠隔の業務が実現できるような制度があるのでしょうか。

ハッキリと制度化しているわけでなく、個人がどうするのが一番働きやすいのかを協議し、個人最適を進めるというやり方です。現在、日本の拠点は90名程度ですので、柔軟に対応するには適している規模だと思います。これが1000人、2000人となっていくと制度化しないと難しいかもしれませんね。

年代的にも30代、40代で子育てをしている層が多いので、育休や産休、子育てに対する感覚が、他人事ではなく身近になっていて、それぞれの働き方に対する理解につながっていると思います。

暗黙の了解ではなく、可能な限り明示化する姿勢

各人に合わせて多様な働き方を行うとなると、セキュリティ面での不安なども課題となる企業が多いと思いますが、どのように対応や運用をされているのでしょうか?

私の担当する業務がまさに相反する2つの部分になります。まず情報セキュリティ推進については、日本とフィリピンという、国境や拠点を超えてセキュリティ意識やセキュリティに対する文化の違いの底上げが求められます。上場企業およびそのグループ会社としてふさわしい、セキュリティ意識の底上げの推進がミッションとなります。

その一方で、セキュリティ側の方針をもとにITソリューションやツールにより、コミュニケーションの利便性を推進する役目も兼任しています。

社員が効率よく業務に取り組めるように、常にセキュリティと利便性とのバランスを見ています。

セキュリティと利便性のバランスをどう取るかは、多くの企業にとって課題だと思いますが、うまくバランスを取るコツはどのような点に注意すべきでしょうか?

暗黙の了解ではなく、可能な限り、ルール化、ポリシー設定をし、明示化してすすめることです。

ルール化ですか?

例えば新しいITツールを導入したいという申請が現場から上がってきたときに、私からは「どのようなリスクが考えられ、それを低減するにはどのような対処法があるのか」を示し、それに対し現場がどう判断して、だれが責任をもって承認するのか、却下するのかという流れをすべてワークフローで行います。

これにより「現場は何を求めているのか」「セキュリティリスクと利便性はどのような比重なのか」という点と、責任の所在がはっきりします。

クラウドサービス導入には、「法務による規約の確認を行ったか」「リスク指摘事項は何か」「利用環境の確認をしたか」などのチェック項目が並ぶ

最重要の資産と位置付けているお客様の個人情報に対しては、利便性よりもセキュリティの徹底が求められますし、価値が低い情報資産であれば、最低限のCIA(機密性・完全性・可用性)を担保したうえで、リスク受容し、利便性を求めます。

先ほど、マレーシアでの遠隔業務の話がありましたが、遠隔業務に当たってのルールはどのようなものでしょうか。

ITソリューションチームが管理している会社貸与のPCを、ルール通りに運用することを守るのであれば、遠隔でもセキュリティを担保しつつ業務が行えると、情報セキュリティとITインフラの担当者として判断しました。

申請から承認まで、すべてを明文化するとなると、大変なパワーが必要になりませんか?

「なんでこのITを使っているんだ?」「なぜこの運用法なんだ?」ということを後から追う方が、セキュリティ側だけでなく、事業部側にとってもはるかに大変です。ある程度のルール・ポリシーを、最初に設定して動き出す方が、間違いが起きにくく、仮に起きたとして、影響範囲が小さくなると考えています。

なるほど!最初に押さえるべきところは押さえるのが大切ですね。

はい、そう思っています。

ワークフローには「サイボウズ ガルーン 」を利用いただいていますが、評価ポイントはどんなところでしょうか。

日本語と英語のUIがある製品であることが大前提でした。フィリピン側は英語であり、当社で日比間の連携がかかせません。でも、それだけがサイボウズ ガルーンの選定理由ではありません。

上場準備にあたってワークフローの機能を重視し、そこで選んだのがサイボウズ ガルーンです。先ほど、すべてワークフローに乗せる話をしましたが、ここでサイボウズガルーンを活用しているわけです。実は日本以上にフィリピン側でワークフローが活用されています。慣れるまでは大変でしたが、いったん慣れると、申請者にとっても承認者にとってもワークフローを活用する方が効率的なので。

却下するのは簡単!でも、現場が使いたいツールに対する“拒絶”をしない理由

ITソリューションやツールの選定は、基本的に澤さんが行われているのですか?

全社的に必要になる場合などは私が起案もしますが、現場から相談を受けることも多いですね。例えばカスタマーサポートの部門に、他の会社から転職してきた社員が「前の会社ではこんな製品を使っていた」という情報を持ってきたことから、該当部門が申請してくるという具合です。

その段階での澤さんのミッションは、セキュリティリスクの洗い出しですね。

そうです。ただ現場が使いたいというツールを拒絶するということはしません。
もともと営業担当だったので、売上を立てる側の感覚・感情はある程度はわかります。自分が営業だった時にIT部門に対して持っていた感覚を思い出せばいいので。現場としてそのツールを使いたいのであれば、リスクを洗い出して明確化したうえで、使えるような形にするまでを追っていきます。

なるほど、その姿勢は重要ですね。

極端な言い方をすれば、セキュリティをガチガチにし、守りを固めても、売り上げがあがらなければ会社はつぶれます(笑)

どこまで受容できるかというラインを会社で決めながら、その範囲に収まるように考えていきます。副社長が、ISMSや個人情報保護の責任者で、管理部門の担当役員ではあるのですが、常にバランスを見ながら、その中でも攻めの姿勢を崩しません。生産性とセキュリティのリスクのバランスをみながら、「リスクは10上がるけど、生産性が100上がるならやってもいいんじゃない?少々のことは私がリスクを負う」と背中を押してくれています。

それは心強いですね。

はい。やはり上司の理解を得るというのはとても大事だと思います。

今日は、情シスの心構えをお聞きできて参考になりました。
柔軟な働き方を支えていく情報システム部門の方にアドバイスいただけますでしょうか。

IT部門だけが突っ走っていないかを意識することが大切だと思います。

柔軟な働き方を会社として実現していくためには、情報システム部門だけでなく、人事部門や、総務・労務部門と、近い温度感で、歩みを進める必要があります。調整は大変ですが、これを怠り、各部門の暴走となると、結局は従業員側に迷惑が掛かってしまいます。

「ITツール上では一つのボタンを押すだけ」で実現できることであっても、それが従業員が望んでいることなのか、会社として取り組むべきことなのかを各部門内できちんと理解し、対応した上で実施することが、よりよい会社にしていくうえで重要だと思います。

貴重なお話をありがとうございました。