【中編】サイボウズの情シスがヘルプデスク業務で意識している「見える化」とは? 社内のやりとりを見える化するメリット
前回の記事では、サイボウズのクラウド事業の成長を支えた「チームワークインフラ」についてご紹介しました。
引き続き本記事では「サイボウズの情シス直伝!キントーンをフル活用したヘルプデスク業務勉強会」で語られた、社内のやりとりを“見える化”して得られたメリット、そしてそれによって現れた「隠れ情シス」の存在について取り上げます。
情シスのもとに寄せられる問い合わせは、年間で5000件!?
サイボウズ情報システム部の鶴村です。100人100通りの働き方をするサイボウズでは、社員からの要望の数も多くなりがちです。情シスに寄せられる問い合わせの数、年間で何件だと思いますか?
実は年間で5,000件もあります(笑)。
「そんなに要望があって情シスのみなさんは大変じゃないですか?」とよく聞かれるのですが、たしかに大変といえば大変です。その中でも効率よく管理できる方法を必死に考えながらやっているのが実情ですね。
ということで、ここからはサイボウズの情シスが普段どのように仕事を進めているかをご紹介していきたいと思います。
対応状況が見えず、仕事が属人化していた過去の情シス
2005年頃の話になりますが、当時の社内では「これが欲しい」とか「パソコンが壊れた」とか、そういった相談は私が直接連絡をもらって対応することが多くありました。
そうなるとドンドン属人化していって、私以外の人が対応できなくなってしまったり、上司は部下の負担がわからなくなってしまったりしてしまいます。
僕は当時、日常的にすごく遅い時間まで残って仕事をしておりまして、朝になると会議室から「おはようございます」と出てくるような状況でした。ただ、上司の目にはそんな姿が見えていなかったんです。
対応が遅れても情シスの対応履歴が共有されていなかったため、上司からは「鶴ちゃん、一体どんな対応したの?」と言われてしまうなど、徐々に問題が大きくなってしまいました。…なんか当時の私の懺悔みたいな感じになってしまいましたね(笑)。
そこで私たちが大切にしているのが、「見える化」です。
見える化にも3つのポイントがあるのですが、私たちは見える化のために「キントーン」というクラウドサービスを利用しています。
キントーンは、プログラミングなしでも業務システムを簡単に作れるサービスで、データを蓄積したり集計したりすることが可能です。
サイボウズの情シスでは、キントーンを使ってヘルプデスクへの依頼を受け付けています。
一番便利なのは、「コミュニケーションまで完結できる」点です。
依頼内容の隣にチャット欄があるので、「キーボードを納品しました」「パスワードを確認いただけますか」といった依頼者とのやりとりもオンラインで完結できます。
今回は、そんなキントーンを使いながら、見える化のために必要な3つのポイントをご紹介できればと思います。
①チームにとってのメリット:属人化を防ぐことができる
1つ目は、チームにとっての見える化のメリットです。
通常、社員からはキントーンで依頼内容を登録してもらうのですが、その内容はすべて全社公開になっています。そのため、第三者つまり他の社員からも登録された内容を見ることができます。
一般的に、依頼する人は他の人が書いた依頼の内容は見ることができないのが通常のヘルプデスクだと思います。
ところが、私たちの運用ではそのようにはせず、全員が見えるようにしています。こうすることで状況が見える化され、対応する側もメンバー間で業務を分担しながら対応することができます。これによって属人化を防げます。
社内では、この連絡先を「IT窓口」と名づけて運用しています。担当者とステータス、問い合わせ内容を一覧で見ることができます。誰がどんな依頼を受けていて、今どんなステータスになっているかが一目瞭然です。
また、社員が問い合わせを入力すると、ヘルプデスクのメンバー全員に通知が飛ぶようにもなっています。
依頼を見える化することによって、場合によっては「Bさんが忙しそうなので僕がやります」とか、「初めてですが、過去の対応を参考に進めます」といったように、他のメンバーでも対応ができるようになります。
社内で流行中の「横からすみません」
その中でちょっと面白いのが、「横からすみません」というフレーズが流行っていることです。
どういうことかというと、依頼者は誰からも見える場所でやりとりをしているため、「ちょっとそれ違うんじゃないですか?」とか「@以降のドメインが正しいか確認してください」とか、他のチームのメンバーが依頼者のトラブルに対してサポートしてあげるという状況が自然に生まれているんです。
また、キントーンには絞り込みの機能もあるので、未着手の依頼を絞り込んで確認できるようになっています。
それでも対応が漏れることのないように、週一ではチームメンバーで未着手の依頼を確認するミーティングを行っています。ここまでがチームにとっての見える化の嬉しいポイントでした。
②依頼する側にとってのメリット:自己解決できる
続いては、依頼する側にとっての見える化のメリットをご紹介していきます。依頼する側の内容を見える化することで、“自動解決”に繋がることがあります。
たとえば、USのメンバーがWeb会議の設定でつまづいてるとしましょう。すぐに何とかしたいが時差の関係もある。こういったときに「よくある質問(FAQ)」をキントーンで用意しておけば、自己解決に繋がるといった効果が得られます。
このようなFAQアプリもキントーンで作っております。問い合わせ頻度の高いものから順に対応していて、対応内容の記入と関連する画像を貼り終えたら、すぐにササッと更新するようにしています。そういうスタンスでマニュアルアプリをどんどん更新しています。
各種アプリの設定方法なども検索すれば手順が出てくるようにもなっています。トラブルシューティングのページも用意してありますので、そちらもキントーンで見られるようにしています。
依頼者がマニュアルを見れるようにしていて、情シスに問い合わせをする前に、まずは見て欲しい情報をまとめています。
先ほどの説明にもあったように、マニュアルのリンクを貼ったり、情シスじゃないデータも登録されていたりするため、たとえば「テレビが映りません」といったITとあまり関係ない問い合わせが来てしまうこともあります。
それについては、人事が「ワクワク窓口」と呼んでいるのですが、そちらへのリンクを案内することもあります。
このようなかたちで、一部、個人情報が含まれているものは非公開にすることもありますが、それを除くと基本的に依頼内容はすべて公開するようにしています。
見える化したおかげで現れた“隠れ情シス”社員とは?
このような環境にしているとですね、困っている人に対して率先してアドバイスをしてくれる社員が現れたりします。僕らは彼らのことを“隠れ情シス”と呼んでいます(笑)。
なんと彼らは情シスのメンバーではないのにもかかわらず、社員が困っているつぶやきを見るやいなや、情シスに代わってあらゆる疑問に回答してくれます。いやぁ、ありがたいですね。
たまにロボットなんじゃないかって思うぐらい、社内SNSを駆け巡って困っている人たちを助けてくれます。これはキントーンを活用して社内のやりとりを徹底的に見える化しているからこそ生まれた現象といっても過言ではないはずです。
ここまでが、依頼者にとっての見える化のメリットのご紹介でした。
③リーダーにとってのメリット:メンバーの負担がわかる
最後にリーダーにとっての見える化のメリットをご紹介します。
リーダーにとっての悩みは、誰かに負担が偏っていないか、情シスのメンバーは適切な対応ができてるだろうか、といった状況を把握したいことなんですね。
キントーンだと担当者の仕事内容が見えますので、誰がどんな仕事をしているのかが簡単に見えるようになります。
ツイッターのようにメンバーの対応の様子が流れてくる機能もあります。これは「通知の絞り込み」という機能で、IT窓口の通知だけを絞り込んだ内容になります。
登録内容だったり、メンバーや依頼者が書き込んだ内容の一覧を斜め読みできるようになっています。こんなかたちで表示されます。何か間違った対応を見つけたら、「横からすみません」を発射することができるわけですね。
メンバーの対応件数も自動集計されるようになっています。
Aさんはこれぐらい対応していて、Bさんはこれぐらい。あれ、ちょっとサボってるんじゃないの?といった内容が見えるようになります。これも集計機能でリアルタイムに更新されます。わざわざExcelを使うことなく、こういった内容を見えるのがキントーンの良いところですね。
まとめ
情報をオープンにすることで、チーム、依頼者、リーダー、みんながそれぞれ助かります。まあ、どちらかというとキントーンの紹介というより、社内のやりとりを公開することで得られる効果についての紹介でした。参考になりましたら幸いです。