不登校の子どもを持つ親として、そして漫画家として
----川口真目さんがリアルな声をお届けします。
今回、そでらぼが開催したイベント「働く親の声に学ぶ、不登校支援といま企業にできること」に、不登校の子を持つ親当事者でもある漫画家・川口真目さんが参加。
当日は、働きながら子育てや不登校と向き合う保護者たちの切実な声、そして企業に求められる支援のあり方について語り合いました。
川口さんならではの視点で、イベントの様子をレポートしていただきます。
「働く親の声に学ぶ、不登校支援といま企業にできること」レポート
ある日、サイボウズさんから連絡がありました。
即答しました。
だって、不登校って本当に大変ですから...!
子どもが不登校になったときは、ビックリたまげたことが山ほどありました。
- 学校は不登校の情報をほぼ知らない
- 不登校支援は自力で探さないといけない
- フリースクールの出費痛い
- お昼ごはんどうする問題
- お金必要なのに働けない
などなど。これはほんの一部ですけど。
不登校の課題は、個人ではどうにもならない。
企業や行政単位で、取り組まないとできない。
だから今回、サイボウズみたいな有名な企業が 「企業向けの不登校イベント」 を開催してくれるっていうのは、本当にありがたいことです!
子どもが不登校だったのもあり、東京に来たのは3年ぶりです...!
いざ東京・サイボウズ本社へ。
会場には、不登校に関心をもつ企業や行政、メディアの方々、そして不登校支援団体やフリースクールの方々など、たくさんの人たちが集まっていました。
サイボウズ「そでらぼ」中村さんから、今回のイベントについてご挨拶。
サイボウズが運営している『サイボウズの楽校』楽長の前田小百合さん。不登校親、当事者の方でもあります。
サイボウズでは『あらゆる社会課題において、さまざまな当事者を支えるには、いろんな立場の人が情報を共有して協力することが大切』という考えを大事にしているそうです。
まさに今回のイベントは、違うセクターの人たちが集まって、不登校の課題について一緒にセッションしていく場でもあります。
さて次は、『そでらぼ』による不登校に関する調査結果の報告です。
サイボウズには、『そでらぼ』という部署があります。
自分たちのチームワークとツール(IT)のノウハウを活かして、社会の課題ごとに実験チームをつくり、課題解決にチャレンジするというもの。
その活動の中で、力を入れているものの一つが、不登校や行き渋りの課題への取り組み。
なんと、子どもをもつ親1,000名へのアンケート調査、さらに6名へのヒアリング調査まで実施されたんです!
え、サイボウズってどこかの省とかじゃないですよね?IT企業ですよね?
これだけでも本気で取り組んでることがわかります。
そして今回の調査の中で、不登校には3つのフェーズがあること、また、親の葛藤には3つのタイプがあるという仮説を立てられました。
この『フェーズ1』とよばれる葛藤の期間が、いちばん不登校の親子が孤独になりやすい時期。
だからこそ、『フェーズ1』をどう抜け出していくかがとても大事になります。
そのためには、『不登校は子どものことだけじゃなく、親へのケアも必要』とお話されていました。
私自身も、不登校親を経験がありますが、これはほんとに......
納得すぎて、心の中でヘッドバンキング...!
不登校って、ただ『子どもが学校に行けない』という問題だけじゃないんです。
親の離職、メンタルケア、夫婦関係、学校とのやりとり、子どもの居場所探し...。
親の負担がすごく大きいです。
『そでらぼ』の不登校調査の詳細は、こちらのページで読めます。
https://cybozu.co.jp/sodelab/news/2025/03/12-95.html
私も、カウンセリングや不登校支援を探すのがすごく大変でした。
ようやく通いはじめても、費用がかさむ...。
そのうえ、昼食作りや送迎にかかる時間はどんどん増えて、仕事はセーブせざるを得ない。
収入は 1/5 にまで下がりました。
それでも、まだフリーランスだから動きやすいぶん、マシなほうだと思います。
他の不登校親さんたちは、どうでしょうか...
ほら、聞こえませんか...
不登校親さんたちのリアルな声が...
SNSの通知から......!
※実際のX投稿
https://x.com/kawaguchi_game/status/1925018217896169922
イベント2日前にSNSで"不登校の悩み"を聞いた投稿がバズって、コメントが約150件も集まりました。
それだけ、不登校の悩みは深刻なんです。
そして、このコメントひとつひとつに、悩んでる不登校親の想いが詰まっています。
どうにか、この想いを届けることはできないだろうか...。
でも、目の前には、企業、行政、メディアの人たちもたくさんいる...。
こんな機会は、なかなかない...!
聞くだけ聞いてみよう!聞くのはタダ!
イベント進行中でしたが、運営の方に相談してみると......
さらっとOK。
サイボウズさんって、フットワーク軽い。
それならば遠慮なく...!
「不登校はお金がかかる。
学校以外の居場所も昼食も。
でも子どもに寄り添う時間が増えて働けない...。
離職する親もいます。
不登校親は、本当は働きたいんです。
だからこそ、企業に不登校への理解があることは
大きな力になります。
他にもたくさん声が届いてるので、SNSのコメント読んでほしいです!」
そのようにお話しました。
予定になかったスピーチにも関わらず、みなさん本当にあたたかく聞いてくださいました。
貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。
『そでらぼ』の不登校調査報告のあとは、いざ、グループセッション!
ここからは、プロのファシリテーター「フューチャーセッションズ」の富田由依さんと有福秀幸さんが進行。
はじめに『ひとりひとりの想いを大切にする』というルールをみんなで共有。
そのおかげで、安心できる場ができて、自然と盛り上がっていきました。
グループセッション1
不登校に対して私たちができることを考える
「不登校に対して、どのようなアクションが必要だろうか?」
「自社のリソースを使ってできるアクションは?」
この2つのテーマについて、チームに分かれて対話します。
- 不登校になる前に不登校の情報を知ってほしい
- 不登校親子がつながれる場がほしい
- 制度や支援の情報を届けたい
穏やかな雰囲気のなか、さまざまな意見が飛び交い、とても活発な議論となりました。
グループセッション2は、「自分ごとで実現したい不登校支援アイデア」を考える
A4の紙に『不登校支援アイデア』を書き出して、『この人と一緒に何かしたいな』『このアイデア面白いな』と思った人同士でチームを作ります。
みんな、それぞれの想う『不登校支援アイデア』を書いていきます。
カワグチが書いた『不登校支援アイデア』は......コレ!
「不登校親子のリアルな声を集めて企業・学校・行政に届ける」!!
SNS廃人を活かしたスキル。
さぁ、私を求める人はどこですか?
ねぇ、どこにいますか?
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
基本、家でひきこもって絵描いてゲームしてる人間。
そんなカワグチでも、みなさんのサポートのおかげで、なんとか仲間を見つけることができました...!
そして最後は、チームになったメンバーと一緒に『アイデアが実現した未来新聞』を作ります!
カワグチが参加したチームでは、"不登校になる前に、不登校の情報を知っておくことが大事"という話になり、『不登校のしおりを学校で配布』という未来新聞を作ることに。
手作り新聞なんて、小学生以来!
正直に申し上げますと...
このあたりから、私はライターとして参加していたことをすっかり忘れて、 新聞作りに夢中になってしまいました。
周りで何が起こっていたのか、あまり把握できておりません。
でも、きっとみんなも同じ。 夢中で楽しく、新聞を作っていたに違いありません。
だって、こんなにたくさんの 『子どもが輝く未来』 の新聞が完成したんですから!
それぞれのチームの完成した「未来新聞」を見ながら意見交換。
グループワークで盛り上がったからか、にぎやかムード。
イベントがはじまったころの緊張感はどこへやら。
そう、心から思えました。
「不登校でも楽しんでいい」
この気持ちになれることが、不登校の親子に、本当に必要なことだと思っています。
これは私が息子に教えてもらったことです。
今、中学生になった息子は、ときどき小学4年生のとき、不登校だったころのことを話してくれることがあります。
その中で、印象的だった言葉があります。
「学校に行かないと家族にきらわれると思った。
でもお母さんが一緒に楽しんでたのがわかったから、他の子と違っても大丈夫なんだって思えた。」
不登校の子だけでなく、親も、不登校であることの罪悪感を持たずに「休んで楽しむ」ことが、回復し、自立する力に繋がっていくのだと思います。
だからといって、「親は笑顔でいてね」なんて簡単に言えません。
不登校、しんどいですから!
だからこそ、企業にサポートしていただきたいのです。
学びの場の選択肢を広げたり、不登校親が働き続けられる環境を作ったり。
「不登校でも大丈夫」と自然に思えるように。
最後に『そでらぼ』の所長・中村龍太さんが帰り際にこんなふうに話してくれました。
ぜひ、不登校親子のリアルな声を届けられる、そして、不登校に理解のある企業や人たちと話すことで安心できる場所をつくってほしいです。
「"業界や立場の枠を越え、いろいろな立場の人と一緒に社会課題を解決する"は、そでらぼの役割なんです」と。
引き続きサイボウズさんと一緒に、不登校や、親の支援について考えていきたいと思いました。
執筆担当

エッセイ漫画家:川口真目(かわぐちまさみ)さん
息子が小4のとき完全不登校になり、専門家に頼りながら親子で回復。「不登校」、「親の働き方」をテーマに執筆。X(旧Twitter)で900名以上が参加する子育てフリーランスコミュニティを運営。
著書:Gakken「マンガでカンタン! デザインの基本は7日間でわかります。」左右社「子育てしながらフリーランス」など
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