約4割の企業が経営戦略とIT戦略を個別に位置づけ

IT戦略を経営戦略内に位置づける企業は、昨対比111%〜125%でIT予算を増額。「セキュリティ対策」や「生成AI」が重点投資先として挙がる

サイボウズ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:青野慶久)は、従業員数1,000名以上の大企業における情報システム部門を管掌するIT責任者を対象に、経営戦略に対するIT戦略の位置づけに関する調査を実施しました。本調査は、大企業が直面する全社的な経営課題に対し、IT責任者がどのような重点テーマを設定してIT施策や投資を進めているのか、また、その進み方が経営戦略とIT戦略の関係性によってどのように異なるのかを明らかにすることを目的としています。

要約

本調査対象の大企業における主要な経営課題は「収益性の向上」「生産性の向上」「コスト削減」 であり、IT責任者は「AIを活用した業務プロセスの変革」「サイバーセキュリティ対策の強化」「新技術(生成AI等)の探索・導入」に高い関心を示した。また、IT施策に関する自由記述によると、IT戦略が経営戦略内に位置づけられている企業では、全社横断型のIT施策の取り組みがみられ、2026年度のIT予算の増額幅も大きい傾向がうかがえた。 一方で、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業では、IT施策が特定の業務・機能・テーマを対象とした取り組みとして現れる傾向がみられた。

調査サマリ

  • 主要な経営課題は「収益性の向上(82%)」「生産性の向上(79%)」「コスト削減の実現(69%)」が上位を占め、IT部門にも経営課題の解決に直結する役割が求められている。
  • IT戦略が経営戦略内に位置づけられている企業は54%と過半数に達した一方、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業は38%、明示されたIT戦略がない企業も8%あり、経営戦略とIT戦略の関係には企業間で差がみられた。
  • 2026年度ITの予算は全体的に増額傾向にあり、2025年度との比較で「111%〜125%」が 31%で最多だった。特に、IT戦略を経営戦略内に位置づける企業では「111%〜125%」が 43%で最も多く、重点投資先はセキュリティ対策や生成AIなどに広がっていた。
  • 自由記述を比較すると、IT戦略を経営戦略内に位置づける企業では、IT施策が全社横断的に展開される傾向がみられた。 一方で、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業では、IT施策が特定の業務・機能・テーマを対象とした取り組みとなる傾向が確認された。
  • IT責任者は、「AIを活用した業務プロセスの変革(72%)」「サイバーセキュリティ対策の強化 (69%)」 「新技術(生成AI等)の探索・導入(62%)」への関心が高く、人材・組織変革や基盤刷新にも一定の関心がみられた。

1、経営課題として「収益性向上」「生産性向上」「コスト削減」への関心が高い

IT責任者に自社が抱える経営課題について尋ねたところ、「収益性の向上」(82%)、「生産性の向上」 (79%)、「コスト削減の実現」(69%)が上位を占めた。本調査の回答企業においては、利益拡大と業務効率化を両立させることが重要な経営テーマとなっていることが分かる。また、「人材採用と人材育成」 (59%)や「グローバル対応」(54%)も過半数に達しており、大企業が多層的な課題に直面している実態も明らかになった。このような状況下では、IT部門の取り組みも運用・保守にとどまらず、経営課題の解決に直接資する役割が求められる。特に、収益性・生産性・コスト改善は、後続で示すAI活用や業務プロセスの変革、全社的なIT施策とも密接に関わるテーマであり、経営課題の解決に向けたIT戦略の重要性がますます高まっていると考えられる。

棒グラフ「企業が抱えている全社の経営課題は何か」(n=39)。収益性の向上82%、生産性の向上79%、コスト削減の実現69%、人材採用と人材育成59%、グローバル対応54%、販売力の向上44%、技術力・製品開発力の強化41%、ブランド力の向上31%、その他10%。

2、IT戦略を経営戦略内に位置づける企業が過半数、一方で約4割は個別に位置づけ

IT戦略が経営戦略の中にどのように位置づけられているかを尋ねたところ、IT戦略が経営戦略内に位置づけられている企業は全体の過半数にあたる54%に達した。 一方で、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業は38%、IT戦略そのものが明示されていない企業も8%存在している。この結果から、経営戦略に対するIT戦略の位置づけには、企業ごとの差があることが分かった。

円グラフ「全社の経営戦略に対して、IT戦略をどのように位置づけているか」(n=39)。IT戦略が経営戦略内に位置づけられている54%、IT戦略は経営戦略と個別に位置づけられている38%、経営戦略はあるが明示された形でのIT戦略はない8%。

3、IT戦略の位置づけによって、IT予算の増額見込みと重点投資領域に違いがみられる

2026年度のIT予算の見通しは、2025年度との比較で「111%〜125%」が31%で最も多く、次いで「106%〜110%」が26%となった。大幅な増額に集中しているわけではないものの、全体としては増額を見込む企業が中心である。

円グラフ「2026年度のIT予算規模の変動推定として最も近いもの」(n=39)。111%〜125%が31%、106%〜110%が26%、100%が18%、99%以下が13%、101%〜105%が8%、126%以上が5%。

企業属性別にみると、IT戦略を経営戦略内に位置づけている企業は、 「111%〜125%」が43%で最も多かった。一方、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業および、経営戦略はあるが明示された形でのIT戦略がない企業では、「106%〜110%」が最多であり、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業においては「100%(昨年同額)」も27%を占めた。この結果から、IT戦略を経営戦略内に位置づけている企業の方が、2026年度のIT予算を積極的に増額する傾向がみられた。

横棒グラフ「2026年度のIT予算規模の変動推定」をIT戦略の位置づけ別(経営戦略内に位置付け/経営戦略と個別に位置づけ/明示された形でのIT戦略はない)に比較したもの(n=39)。経営戦略内に位置づけている企業は「111%〜125%」が43%で最多。個別に位置づけている企業および明示されたIT戦略がない企業は「106%〜110%」が最多(33%・67%)で、個別に位置づけている企業は「100%」も27%を占める。

また、2026年度にIT予算の増額を見込む企業において、増強が予想される項目をみると、「セキュリティ関連」と「生成AI」がともに67%で最も高く、次いで「クラウド基盤・クラウドサービス」が56%となった。2026年度のIT投資は、セキュリティなどの守りの領域に加え、活用拡大が進む生成AIを中心に組み立てられていることが分かる。

横棒グラフ「IT予算規模の変動のなかで、特に来期増強されると予想される項目」(n=27)。セキュリティ関連(製品・サービス)67%、生成AI67%、クラウド基盤・クラウドサービス56%、業務アプリケーション・基幹システム44%、データ分析・データ基盤44%、デバイス・現場端末22%、コラボレーション/コミュニケーション基盤19%、外部委託・アウトソーシング19%、インフラ基盤(オンプレミス)4%、その他4%。

※有効回答39名のうち、IT予算の変動が101%を上回ると回答した企業のみを対象に実施。

IT戦略の位置づけ別にみると、重点投資領域には違いがみられる。例えば、「セキュリティ関連」は、IT戦略を経営戦略内に位置づけている企業では69%であるのに対し、経営戦略と個別に位置づけている企業では50%で、19ポイントの差がみられた。一方、「クラウド基盤・クラウドサービス」の場合、IT戦略を経営戦略内に位置付けている企業が44%にとどまったのに対し、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業は75%に達している。 「セキュリティ関連」とは対照的に、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業の方が31ポイント上回る結果となった。
以上から、IT戦略をどのように位置づけているかによって、予算を配分する領域に違いがみられた。

上記「来期増強が予想される項目」をIT戦略の位置づけ別(経営戦略内に位置付け/経営戦略と個別に位置づけ)に比較した横棒グラフ(n=24)。セキュリティ関連は69%対50%、生成AIは69%対75%、クラウド基盤・クラウドサービスは44%対75%、業務アプリケーション・基幹システムは50%対50%、データ分析・データ基盤は44%対50%、デバイス・現場端末は25%対25%、コラボレーション基盤は19%対13%、外部委託・アウトソーシングは25%対13%、インフラ基盤(オンプレミス)は6%対0%、その他は0%対13%。

※有効回答39名のうち、IT予算の変動が101%を上回り、かつIT戦略を経営戦略内に位置づけまたは個別に位置づけている企業のみを対象に実施。

4、IT戦略を経営戦略内に位置づけている企業では、IT施策が全社横断的に展開される傾向がみられる

IT戦略の実現に向けた取り組みに関する自由記述回答をもとに、IT戦略の位置づけごとにIT施策がどの範囲を対象としているのかを整理し、比較した。その結果、IT戦略が経営戦略内に位置づけられている企業では、複数部門・複数業務をまたぐ標準化・共通化・全社展開を伴う取り組みに関する記述がみられた。また、IT施策を全社活動として捉える記述も確認された。一方、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業、または明示されたIT戦略がない企業では、特定の業務・機能・テーマを対象とした取り組みに関する記述がみられた。これらの自由記述回答の比較から、IT戦略を経営戦略内に位置づけている企業ではIT施策が全社横断型として現れやすい一方、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業では、IT施策が特定の業務・機能・テーマを対象とした取り組みとして現れやすい傾向がみられた。

表「IT戦略の位置づけ別の主な取り組み事例」。IT戦略が経営戦略内に位置づけられている企業の例(顧客IDの共通化による複数サービス・業務をまたぐ共通言語づくり、DX教育や基幹刷新を全社活動として推進、現場部門を早期に巻き込んだ既存業務の可視化・標準化、全社モバイル導入や業務基盤ツールの全社普及、全社DX構想のもとでのデータ定義統一と共通基盤上での可視化)と、IT戦略が経営戦略と個別に位置づけられている企業の例(営業活動の生産性向上とバックオフィス高度化・キャリアパス再設計、SaaS活用による顧客接点情報の集約とテレワーク環境整備、名刺・顧客接点情報管理サービスの導入、生成AI導入による問い合わせ・インシデント対応の自動化、新クラウドサービス上市による商品力強化・収益源拡張)を対比。

5、IT責任者は業務プロセスの変革・セキュリティ対策・新技術(生成AI等)に高い関心を示す

IT責任者の関心テーマをみると、デジタル技術・AIを活用した業務プロセスの変革(72%)、サイバーセキュリティ対策の強化(69%)、新技術(生成AI等)の探索・導入(62%)、経営戦略と整合したIT戦略の策定・推進(54%)が上位に挙がった。加えて、IT人材・組織変革や基盤刷新に関するテーマにも一定の関心がみられ、人材・組織やシステム基盤の見直しにも関心が広がっていることがうかがえる。

横棒グラフ「以下のテーマのなかで、特に関心のあるものをすべて選択してください」(n=39)。デジタル技術・AIを活用した業務プロセスの変革72%、サイバーセキュリティ対策の強化69%、新技術(生成AI等)の探索・導入62%、経営戦略と整合したIT戦略の策定・推進54%、IT人材戦略とリソースマネジメント51%、IT部門の組織変革51%、全体最適に向けたアーキテクチャの再構築41%、レガシーシステムの刷新41%、グローバルIT基盤・体制の最適化41%、ITコスト構造の可視化と適正化38%、ITガバナンス(内部統制)の強化33%、ソーシング戦略の最適化23%、その他3%。

調査概要

調査主体
サイボウズ株式会社
調査実施機関
株式会社ビザスク
調査方法
インターネット調査(ビザスク社に登録しているエキスパートパネルに対するサーベイ)
調査期間
2026年1月16日~1月22日
対象者条件
従業員数1,000名以上の企業で、情報システム部門を管掌する取締役・執行役員/情報システム業務に関与する部長職のいずれかに該当する方
回収者数
43名(うち有効回答数:39名)

※本調査はn=39を対象とした定性的示唆の抽出を目的としており、統計的代表性を保証するものではありません