人を知る

デザイナーを"チーム"に欠かせない存在に。新たなスキルを手に再挑戦

写真:樋田 勇也

プロダクトデザイナー

樋田 勇也

(2016年・2023年 キャリア入社)

筑波大学芸術専門学群でビジュアルデザインを学んだ後、新卒入社の会社でWebデザイナーとしてのキャリアをスタート。『チームのことだけ、考えた。』(青野慶久著)に共感しサイボウズに転職。kintoneチームの専任デザイナーとしてスクラム開発の中でデザイナーが活躍できる体制を構築。スモールチームでの挑戦を求めて退職するも2023年、サイボウズに再入社。外部で得たスキルを手に2024年からは、kintoneのプロダクトデザインチームのマネージャーとして勤務。

2024年9月に公開

目指した“チームワーク”がここにある

サイボウズに出合う前の仕事を教えてください。

新卒で就職したのは編集プロダクションでした。大学では雑誌などの誌面をデザインするエディトリアルデザインを学んでいたので紙のデザインをやるつもりでしたが、学生時代のアルバイトでWebデザインをかじっていたことからWeb制作の部署に配属されました。

当時は古いインターネットエクスプローラーが現役の時代。Webデザインは制約が多く、文字の組み方やレイアウトにこだわることができません。しかし、制約が大きい中で挑戦するのが楽しく、どんどん技術が進歩していくのもWebの面白さだと感じていました。

サイボウズのことをどうやって知りましたか。

きっかけは、サイボウズ代表の青野さんの著書『チームのことだけ、考えた。』でした。この本では、青野さんが社員の離職などの問題に向き合う過程と“チームワーク”にたどり着いてからの変化が書かれています。

当時の私も、業界で当然視されている働き方に疑問を持っていました。その上、良いものをつくりたいと徹夜してすごく頑張っても、関係者の思いや足並みがそろわないと十分なクオリティーには至らず、ローンチ後の成果や評判も良くない。「もっとみんなが同じ方向を向いていれば結果は違ったのかな」と“チームワーク”を意識することが何度もありました。

本に共感してサイボウズに転職されたのですね。

その頃、会社で受託事業だけでなく独自開発のサービスを持つべきだと社内起業のような形で新サービスを検討していました。テーマとして上っていたのが“働き方”や“チームワーク”でした。

個人的にも、“モチベーション・働き方・チームワーク”をテーマに自分がデザインしたサービスで働き方を変えられないかと考えていたので、社員のモチベーションを可視化するようなサービスをつくって事業化したらどうかと会社に提案したのですが、実現しませんでした。

この経験から、働き方やチームワークについてもっと深く考えたいと参考にしたのが『チームのことだけ、考えた。』です。だからなおさら共感して、「自分たちが目指したチームワークってこういうことなのかもしれない。サイボウズでなら“チームワーク”をテーマに新たな挑戦ができるかもしれない」と思い、転職を考えました。

写真:樋田 勇也

スクラム開発でデザイナーの役割を変える

サイボウズに入社後の業務内容を教えてください。

半年間のオンボーディング期間を経てkintoneチーム初の専任デザイナーになりました。プロダクトマネージャー(PM)と共に動き、主に新しい機能を作るためのプロトタイピングを行っていました。当時のkintoneチームはスクラム開発を導入し始めた頃で、そこにデザイナーがどう適応できるかを探求し続けていました。

樋田さんがチームにおけるデザイナーの役割を変えたのですね。

そうですね。以前のウォーターフォール型の開発プロセスにおけるデザイナーの役割は、PMの指示を受けてデザインを制作し、それをエンジニアに渡して終わりでした。しかしスクラム開発では、企画と実装を繰り返すサイクルの中に、デザイナーもプロトタイピングを通じて加わります。デザイナーもPMと一緒に企画を検討したり、エンジニアの実装を助けたりするようになりました。そうした体制を確立できたことで、その後のkintoneモバイル版リニューアルも上手くいき、チームにデザイナーがいないと成り立たないと言われるようになったのは良かったと思います。

写真:樋田 勇也

飛び出してみたから気づけたこと

2020年に一度退職されていますが、順調に進んでいる中でなぜサイボウズを去られたのでしょうか?

特に不満や問題はありませんでした。ただ私はWebデザイナーから転職したこともあって、kintone以外のプロダクトを触ったことがなかったので、たとえば特定分野の課題を解決するようなSaaSも経験してみたいと思ったんです。また入社から5年の間にサイボウズは急速に大きくなり、私一人だったkintoneチームのデザイナーも増え、自分がいなくてもやっていけると感じるようになりました。スモールチームでデザイン組織をつくってみたいとも考えるようになり、サイボウズを飛び出したのです。

退職後はどのような仕事をされていましたか?

人材領域を中心にサービスを展開している会社の新規事業でデザインリーダーを務めていました。

事業が分社化したての小さな組織だったので、経営層と関わる機会が多く、人や物事を動かすリーダーシップやマネージャーの在り方を目の当たりにできたのはいい経験でした。

また、デザインリーダーとして“人を育てる”ことにしっかり向き合ったことで、サイボウズ時代「仕事のやり方を教えれば人材育成は十分」と思っていた自分の視点の低さに気づきました。自身の成長に停滞感を感じているメンバーと話し、成長の“踊り場”から脱出するきっかけがつくれたことなどを通じて、人を育てることの奥深さと大切さを実感しました。

ほかにサイボウズを離れて気づいたことはありましたか?

ありました。たとえば、情報の透明性。転職先の会社でも情報の透明性を目指していたのですが、実際にやってみるとすごく難しいことだと改めて気づきました。
いくら情報をオープンにしても、ビジョンへの共感や組織として一貫した考え方がないと受け取り方がバラバラになってしまう。転職先では、それによって逆にチームワークが低下したり、公開した情報への周囲からの反発に対応するため透明性が下がってしまうこともありましたました。
そう考えると、あれだけ多くの情報の透明性を実現できているサイボウズって、いい意味で変な会社だなと思いますね(笑)。

写真:樋田 勇也

サイボウズでやり切れていないことがある

なぜサイボウズに戻られたのですか?

事業の成長性に課題があり、プロダクトに関する組織が縮小される方針になったためです。デザイン組織をつくりたいという自分の目的から遠のいてしまったので、新たな場を探していました。そんな時にサイボウズの同僚や上司と話す機会がありました。

話すうちに、サイボウズを出るときに「何とかなるだろう」と思っていた課題が解決されていなかったり、やり切れていないことがあったんじゃないかと感じました。以前の同僚の顔も頭に浮かんで「また一緒に働きたいな」という気持ちが湧いてきたのも大きかったですね。

他社からオファーをもらっていたのですが、新しい会社で得たマネージャーとしてのスキルを活かせば、退職する前とは違った貢献ができるんじゃないかという期待を込めてサイボウズに戻ることを決めました。

再び入社してみて、サイボウズは変わっていましたか?

変化はもちろんありますが、根は変わらないという印象です。特に、サイボウズ内で使うkintoneには相変わらずみんなの情報発信があふれていました。いろいろな場所に、それぞれの思うこと・考えることが書かれている。さまざまな会議も可視化され、オープンさは変わっていませんでした。

ただ、マネージャーとしてサイボウズに関わることで、これまで見えていなかった問題が見えるようになりました。
組織が大きくなっていく中でも、最初に入社した頃の自分が「すごくいいな」と思っていたチームワークや働き方が、失われないようにするのが私の役割だと思っています。

サイボウズの中で起こること、ルールや制度、すべてがビジョンの共感の上に成り立っていること、意図や背景も含めてどう捉え、どう考えてほしいのかを、マネージャーとして伝えていきたいです。

これからのサイボウズを担う人たちへメッセージはありますか?

自分が担当しているkintoneに焦点を当てると、プロダクトの価値を考え抜ける人と一緒に働きたいと思っています。kintoneは、特定の課題を解決するツールではなく、ユーザー次第で無限の使い方があります。だからこそ、単に新しい機能を追加するのではなく、その機能によってどれだけ新しい可能性が広がるのかを考えなければなりません。それがkintoneの開発の難しさであり、面白さです。

また、kintoneのユーザー数は順調に伸びていますが、目指している桁違いの数にはまだまだ届いていません。サイボウズのプロダクト自体もkintoneやGaroon、サイボウズ Office以外に広がっていくと思います。

大きな会社に見えるけれども、チームワークあふれる社会を創るという壮大なビジョンの実現につながる成果を得るには、まだまだチャレンジの手を抜けません。一方で企業として社会的な信頼もブランドもあり、安心して働ける環境です。デザイナーの活躍の場ももっと増えると感じていますから、「チームワーク」という言葉に少しでも共感したら、ぜひサイボウズの扉を叩いてほしいと思います。

私のオフタイム

もっぱら週末は2歳の子どもとの“遊びの日”です。公園の滑り台で遊ぶのを見守ったり、大好きな電車を見に出かけたり。奥さんもフルタイムで働いているので協力しながら子育てしています。

写真:樋田勇也
  • インタビュー内容は取材時点のものです。ご了承ください。

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