公共営業
瀬戸口 紳悟
(2019年 キャリア入社)
前職の大手SIerでは、自治体向けの基幹システムの提案・構築に約5年間携わる。その後kintoneと出会い、自治体の業務改善をスピーディーに実現できる可能性に惹かれてサイボウズへキャリア入社。以来一貫して公共営業(営業本部 リージョナル共創推進部 公共チーム)に従事し、コロナ禍における自治体業務への対応や自治体コミュニティの運営、中央省庁への展開など幅広く活動している。
2026年7月に公開
自治体の現場を変える可能性を感じたkintone
前職ではどんなお仕事をされていましたか。
大手SIerで、自治体向けの基幹システムのような、自治体の中でも特にコアな情報システムの提案などを担当していました。とはいえ、すでに導入されているシステムを保守・更新していくような役割が中心で、正直なところ「自分が介在している」という実感はあまり持てずにいました。仕事の規模や社会的意義は大きく、関係者も多いのですが、その分、社内調整のような仕事も多く、お客様に直接貢献している感覚を得づらいのが悩みでした。
転職を考えたきっかけを教えてください。
自治体の現場を回る中で「今こんなことに困っている」という声を聞く機会は多くありました。ただ、既存のシステムでできることには限界があるのと、それを改善する新規システムを提案しようとしても、自治体の予算制度上次年度の予算取得から入札、業者選定、構築、導入までを経て、2〜3年というスパンがかかるのが当たり前でした。
自治体には人事ローテーションの慣習があるので、今目の前で話している担当者は、2〜3年後には異動されているケースも少なくありません。そういった環境も、モチベーションを維持しにくい要素でした。
そんな中で出会ったのがkintoneでした。一度導入すれば、現場の人たち自身の手でスピーディーに業務改善を回していける。この特性が、今感じている課題感を打破できるブレイクスルーになるのではないかと感じました。当時はちょうどkintoneが自治体に導入され始めた時期で、「これは面白い」とサイボウズを志望しました。
数あるIT企業の中でサイボウズを選んだ決め手は何でしたか。
製品の魅力はもちろんですが、最終的には「サイボウズという会社そのもの」に惹かれて入社を決めました。そのため、他のメーカーやSIerと比較するような転職活動はしていません。
実は、最初に惹かれたのはkintoneよりもGaroonでした。面接でも「まずはGaroonをやりたいです」と伝えたくらいです(笑)。Garoonは実際に自治体に導入されている様子を見て、コミュニケーション機能などを含め、すごく先進的だと感じていました。
加えて、オウンドメディアであるサイボウズ式を通じて、サイボウズの企業文化そのものにも以前から興味を持っていました。「理念とやっていることが一致している」点にすごく納得感があり、社員一人ひとりがその理念に向かって動いている様子がリアルにイメージできたんです。
ちなみに、前職で培った知見も無駄にはなりませんでした。パートナービジネスの現場で、フロントに立つベンダー(パートナー企業)がどんな考えで動き、何を重視しているかを肌感覚で理解できていることは、サイボウズに入ってからも大きな強みになっています。
入社してみて、想像とのギャップはありましたか。
「自由でフラット」という言葉は聞こえはいいのですが、実態としては責任とトレードオフの関係にあると感じています。自分がどうしたいかという主観を持って自律して動かないと、成長にも成果にもつながりません。自律というのは決して楽なことではなく、むしろ厳しい環境だと入社当初から感じていますし、今もその感覚は変わっていません。
会社の規模が大きくなり、リモートワークも中心になる中で、横のチームが何をしているか見えづらくなる場面も増えました。サイボウズらしい「公明正大」な文化を次の世代にどう継承していくかは、いままさに直面している難しいフェーズだと捉えています。
「同じ目線で、日本の課題を解決する」。公共営業の面白さと難しさ
公共営業をまったく知らない人に説明するとしたら、どんな仕事ですか。
一言でいえば、社会貢献性がとても高い仕事です。やり取りをする自治体や省庁の方々は、営利のためでなく、地域や日本全体をより良くしたいという思いで動いています。そこにkintoneや私たちの取り組みが貢献できることに、純粋な嬉しさがあります。
もう一つの特徴は、公平性・公明正大さがとても重視される業界だということ。入札という厳格なルールがあるからこそ、最終的には提案や製品がフラットに比較され、選ばれます。だからこそ、採択されたときや、「導入して本当に良かった」と言っていただけたときの手応えは大きいです。
一方で、ネットワークの制約など、公共機関ならではのシステム利用条件があるため、提案そのものが難しい場面も多くあります。既存の製品や協業モデルをそのまま当てはめるのではなく、作り変えるくらいの発想が必要になることも少なくありません。
これまでで最も印象に残っているプロジェクトを教えてください。
一番はコロナ禍での対応です。当時はまだ、自治体でクラウドツールを使うという文化が浸透していませんでした。しかし緊急事態に直面し、コロナ患者の管理やワクチン接種の予約管理、給付金の管理など、さまざまな業務がkintoneで急速に立ち上がっていきました。
社内でも公共向けのプロジェクトチームが立ち上がり、ゴールデンウィークを返上してシステムを構築したこともありました。本来なら1〜2年かかるようなプロジェクトを、「来週までに何とかしなければ」というスピード感でやり遂げたことは、大きな仕事ができたという自信にもつながりましたし、一刻を争う危機のなかで、自治体の皆様が発揮される底力と決断のスピードに圧倒されると同時に、自治体の可能性を強く再認識するきっかけになりました。
コロナ感染拡大で自治体もパンク寸前 埼玉県が1週間で作り上げた、kintone×コロナ対策システム
ただ、本当に難しかったのはコロナ禍が落ち着いた次のフェーズ、つまり「kintoneの価値を自治体に根付かせること」でした。当時、kintoneを一年間無料で自治体に提供するキャンペーンを立ち上げて、部門単位の利用から全庁的な利用へと広げるアプローチを試みました。制度的な制約や社内外の反発もありましたが、パートナー企業と密に連携しながら乗り越えたことで、次の導入拡大への大きなきっかけになったと感じています。
公共チームならではの特徴はありますか。
メンバーの半数近くが自治体や省庁からの出向者という、半官半民のような組織であることです。これはサイボウズの中でも特徴的な面白いチームなのかなと思っています。それぞれが自治体側の目線で「この課題にはkintoneのこのアプローチが合うのでは」といったアドバイスをくれますし、出向を終えて自治体に戻ったメンバーが、今度は自らの自治体でkintoneやDXの推進役になるケースも生まれています。立場や目線が異なるメンバー同士が、円滑にコミュニケーションを取りながら同じゴールを目指せる、非常に面白いチームです。
公共営業ならではの難しさは、どう乗り越えていますか。
自治体には前例踏襲の文化が根強く、紙・メール・電話といったやり取りや、独自のセキュアなネットワークなど、厳しいルールも多くあります。その中でアジャイル開発やノーコードといった発想を受け入れてもらうには、大きなエネルギーが必要です。
そこで力を入れているのが、コミュニティづくりです。サイボウズには「ガブキン」という自治体職員向けのコミュニティがあり、今では6,000名以上の自治体職員に参加いただいています。コミュニティ内では、あるkintoneのテンプレートが別の自治体に共有されたり、業務改善の成果を自発的に発信しあったり、時には職員の方が別の自治体に向けてkintoneの魅力を語ってくださることもあります。
自治体同士は、一般的な企業のような競合関係ではありません。組織の構造も業務内容も似ているからこそ、隣の自治体を助けようという雰囲気が自然と生まれます。これはコミュニティや、kintoneが目指す「自分たちで改善する」という思想ととても相性がいいんです。自治体と私たちが対峙するのではなく、同じ目線で日本全国の課題を一緒に解決していく——それが公共営業の面白さだと思っています。
1,700の自治体、そして中央省庁へ。公共営業のこれから
公共領域を取り巻く環境は変わってきていますか。
クラウドサービスは、これまで自治体では使いにくいものでしたが、今はかなり導入しやすい環境が整ってきました。1,700ある自治体のうち、すでに500ほどがkintoneを利用するフェーズまで来ていて、「kintoneとは何か」を説明するフェーズは超えつつあると感じています。これからは、すでに一つの用途で使われているkintoneを、一つの組織の中でいかに全庁・多用途に広げていくかというフェーズに入っています。
もう一つの大きな動きが、中央省庁への展開です。ここ最近、中央省庁でもkintoneを採用いただけるケースが増えてきました。自治体とのシナジーが見込める一方、中央省庁特有の考え方やセキュリティモデルもあるので、公共チームにとって極めて刺激的な新しいチャレンジが始まっています。
これから公共営業に必要とされる人材とは、どんな人でしょうか。
サイボウズのカルチャーとも重なりますが、自分で考えて動ける人です。省庁のような大きな組織を相手にビジネスをしていく、あるいは自治体のより深層にある課題にアプローチする事業フェーズに入ってきていることを踏まえると、自分の軸(主観)を持って自律して提案できる人、相手の立場に立って本質を考えられる人が、これまで以上に必要とされています。組織の空気に流されるのではなく、本質的な議論を恐れずにできる人と一緒に働きたいですね。
公共営業の理想の未来像を教えてください。
社内にできたエンタープライズ事業部と兼務する中で、大規模な民間企業向けのノウハウを公共に、逆に公共の知見を民間に転用するという発想が生まれてきています。今までは公共の現場知識だけで乗り切れていた部分にも、より多様なスキルや、社内外を問わない幅広い関係性が求められるようになってきました。
理想としては、公共に閉じずに自分たちから情報を発信していくこと。そして将来的には「公共専属」という役割自体がむしろ薄れていくくらい、公共と民間の垣根がなくなっていく方向性が理想だと思っています。
公共一本のキャリアから、事業戦略へ。広がる可能性
ご自身の今後のキャリアについて、どんなイメージを持っていますか。
新卒の頃から一貫して公共領域を担当してきて、サイボウズに入ってからもそのキャリアが長くなってきました。ただ、公共だけに通用する知識だけでは、この先の広がりに限界があるとも感じています。
ありがたいことに、公共チームが大きくなるにつれて関わる範囲や得られる情報、対峙するレイヤーが上がり、様々な視点を持てるようになってきました。今後は、公共という軸足を置きながらも、それにとらわれないキャリアを築いていきたいです。
具体的には、事業全体の成長を描く事業戦略に関わる仕事にチャレンジしてみたいと思っています。もう一つは、地域共創という視点で、一つの自治体のシステム導入にとどまらず、地域全体をDXしていくようなダイナミックな取り組みにも、今後深く関わっていきたいですね。
転職を考えている方へ
公共セクターは専門知識や業界用語が多く、商習慣も独特で、難しいと捉えられがちな業種だと思います。ただ、基本的な営業スキルやお客様に向き合うスキルの根幹は、どの業種でも変わりません。
私たちのチームでは、毎年出向でメンバーが入れ替わる環境だからこそ、手厚いフォロー体制を整えていますし、独自の研修モデルも用意しています。
ですから「公共だから」と臆せずにチャレンジしてほしいですし、キャッチアップするためのノウハウやツールは十分に備わっています。この領域から日本を変えたいという熱い思いがある方は、ぜひ一歩を踏み出して、私たちと一緒にチャレンジしていただけたら嬉しいです。
私のオフタイム
休日は、バイクや車で日本全国を巡るキャンプ旅行を楽しんでいます。大自然の中でリフレッシュしながら、その土地の名所を訪れたり、地元ならではの名産品を味わったりするのが最高の醍醐味です。実際に足を運んで得た各地の知識や文化への理解は、仕事で自治体の方々とお話しする際にも共通の話題として大いに役立っています。
- インタビュー内容は取材時点のものです。ご了承ください。